4年ぶりの国会図書館公開調査・裁定制度の大幅改正──権利状態不明著作物関連の大きな動きが相次ぐ
国立国会図書館は『近代デジタルライブラリー』で公開している蔵書のうち、著作権法第67条の規定により2009年(平成21年)に文化庁長官の裁定を受けて公開した明治期の出版物の著者を対象に著作者情報公開調査を実施すると発表しました。この調査は2003年(平成15年)から断続的に行われており、今回の調査は2010年(平成22年)6月から8月にかけて実施されて以来4年ぶりとなります。
また、文化庁は著作権者不明等の場合の長官裁定の制度を創設以来最大の規模で見直し、利用の要件を大幅に緩和することを発表しました。このように、8月から9月にかけて国内の権利状態不明著作物をめぐる大きな動きが相次いでいます。
今回の調査は没年判明者を中心に約30名が対象
国立国会図書館が実施した過去の公開調査では初回の2003年実施分が約5万名、2005年実施分が約1500名、2010年実施分が約3万8000名と没年が不明で著作権の保護期間を満了している可能性がある著作者を幅広く調査対象としていました。しかし、今回の調査では対象者が約30名と非常に少なく、かつ大部分が没年の判明している人物である点が従来と大きく異なっています。このうち数名が没年不詳であるのを除けば大半は没後40年ほどを経過しており、中には「1966年(昭和41年)没」と現行法の規定ではあと1年少々で保護期間が満了する人物も含まれています。
これらの人物の著書は没年がわかっていても権利継承者(主に遺族)の連絡先が不明のため、5年前に長官裁定を受けて補償金を供託したうえで公開されました。これまでに積み立てた補償金は権利の所在が判明した時点で権利継承者に支払われることになっているため、連絡先の情報が求められているのです。
対象になっている人物の肩書に注目すると、県庁所在地の元市長や大学教授、上場企業相談役など要職に就いている人物も散見されます。そうした人物であっても、亡くなってから年月が経過すると遺族の所在がわからなくなってしまうということが、現在の著作権制度の難題をまざまざと見せつけていると言えるでしょう。
長官裁定制度の大規模改正
文化庁は長官裁定制度の見直し結果を8月に発表し、5年ぶりかつ制度の創設以来最大規模となる『利用の手引き』の改正を行いました。
今回の改正では、利用者に求められていた権利者を探す「相当な努力」が、従来の告示では「複数の方法をすべて行ったうえで新聞か著作権情報センター(CRIC)のウェブサイトに広告を掲載する」とされていたものが、利用者の能力で可能な任意の方法を選んで実行した後にCRICのサイトへ広告を出せば良いことになりました(新聞への広告掲出も引き続き有効)。
運用面では、従来は一律で「5年」と定められていた裁定利用の期限を5年以上の期間であっても申請者が決められることになり、5年ごとに裁定を申請する必要がなくなることが最大の変更点となっています。合わせて、従来は紙媒体での出版後に電子書籍を発行するなど新規の利用形態を追加するたびに一から申請を行わなければならなかったところを、最初の申請で事前に追加が予想される利用形態を記載しておけば後から供託金を支払って利用することが可能になります。また、CRICのウェブサイトに広告を掲載する期間が従来は最低30日だったところを7日に短縮し(8日目以降も申請者が希望すれば引き続き掲載可)、広告の掲載料金も引き下げられることになりました。
今回の大規模な裁定制度の改正で深刻さを増す権利状態不明著作物の利用が促進されると共に、今後はそうした著作物の発生原因となる法律上の問題に抜本的な対策を日本のみならず世界規模で取り組むことが求められます。
権利者不明等の場合の裁定制度の見直しについて(文化庁)
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/c-l/pdf/minaoshi.pdf [リンク]
画像:著作者情報公開調査(国立国会図書館)
https://openinq.dl.ndl.go.jp/search [リンク]
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https://getnews.jp/archives/584311 [リンク]
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