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ろくでなし子さんの逮捕に思う(補論)(弁護士 伊東良徳)

ろくでなし子さんの逮捕に思う(補論)(弁護士 伊東良徳)

今回は伊東良徳さんのサイト『庶民の弁護士 伊東良徳のサイト』からご寄稿いただきました。

ろくでなし子さんの逮捕に思う(補論)(弁護士 伊東良徳)

ここがポイント
当事者が「わいせつな」ものとしてでなくデータを受け渡している外形的・類型的状況の下では、受け渡されたデータは「わいせつな」電磁的記録ではないと評価すべき
当事者の純然たる主観(内心)はむしろ問題ではない

私が書いたろくでなし子さんの逮捕に思う*1についてのネット上の反応を見ていると、大半の方からは同感だ、納得できるなどの好意的な評価を受けていますが、なかには当事者の主観でわいせつ評価が変わるものではないという意見もありますので、その点について少し論じておきます。

*1:「ろくでなし子さんの逮捕に思う」 『庶民の弁護士 伊東良徳のサイト』
http://www.shomin-law.com/essayRokudenashikotaiho.html

率直に言ってややマニアックな議論に入ります。ろくでなし子さんの逮捕に思う*1で素直に納得できる人は、以下の議論におつきあいいただく必要はないと思います。

最初に断っておきますが、ろくでなし子さんの逮捕に思う*1でも、私は、当事者の純然たる主観(内心に秘められた意図)を問題にしているわけではありません。当事者がデータをわいせつなものとしてではなく扱っていると見られる外形的・類型的状況を問題にしているのです。

刑法第175条で頒布が禁止され処罰される対象は、「わいせつな」文書、「わいせつな」図画、「わいせつな」物、「わいせつな」記録ですが、「わいせつな」というのは評価概念で、しかもかなりあいまいなものです。

例えば、アダルトビデオ(裏ビデオ、薄消しビデオ)でそのわいせつ性が議論されるときには、女性器が無修正で映っていれば、まず確実にわいせつと判断されます(裁判で争ったことがありますので、ここは経験として言えます)。しかし、マタニティ教室の教材ビデオに女性器が映っていた場合、出産シーンであればもちろん、妊娠・出産による女性の体の変化の説明の中で映っていた場合も、わいせつと判断されることはないと思います(こちらは事件になったことがないので、常識としての判断ですが)。アダルトビデオは、性的な興奮を誘うことを目的として作成され、見る側もそのために見るものですから、そこに無修正の女性器が映っていれば、わいせつと評価されます。それに対してマタニティ教室の教材ビデオは、妊娠・出産による女性の体の変化やそれに対する対応を学ばせるために作成され、見る側もそれを学習するために見るものですから、そこに女性器が映っていても、そういう目的に沿うような映り方である限り、わいせつとは評価されません。このように、女性器の映像でも、見せる状況によって、わいせつかどうかの判断は変わってくるものです。この点に異論を唱える人は、少なくとも法律家の業界では、おそらくいないだろうと、私は思います。

さて、文書やビデオの中で登場する場合は、このように作品全体の中で判断するとして、女性器の画像やスキャンデータを独立して提供する場合はどうでしょうか。私は、この場合も、どのような当事者間でどのような状況で提供したかによって「わいせつな」ものかどうかの評価は変わってくると考えます。

例えば、整形外科医のグループが、女性器の整形について、どの部分をどのようにすれば美しい仕上がりになるかの経験交流のために、自らの術後患者の女性器を(もちろん、患者の同意を得ることが必要と私は考えますが)撮影し、あるいは3Dスキャンして、その写真・動画・スキャンデータをインターネットやメーリングリストで交換した場合、これは「わいせつな」画像、「わいせつな」電磁的記録と評価されるでしょうか。法律家業界の人は、この場合は、そこじゃなくて正当業務行為ということで処罰されないと主張すべきだという人が多数派かも知れません。しかし、それ以前に私は、この場合、そもそも提供・交換された画像・データを「わいせつな」画像や「わいせつな」電磁的記録と評価すべきでないと思うのです。

例えば、ろくでなし子さんが女性器アートを始めるきっかけとなったような、女性器の形なり女性器そのものにコンプレックスを持つ女性のためにさまざまな女性の女性器を見せ自分の女性器と比べることでそのコンプレックスを解消する活動をする女性グループがあったとします。実際、かつてウーマン・リブの中でこのような活動があったことが知られていますし、現在もそういう活動は行われていると思います。このような活動は部屋で面談しながら行われるのが通常だと思いますが、ITが発達した現在においては、直接顔を合わせるのは恥ずかしいという女性申込者の便宜を図って、ネットを介して女性器の画像やスキャンデータを受け渡しし、電話やスカイプでコミュニケーションを取りながらカウンセリングを行うということも考えられます。このような活動をする場合、ネットを介して受け渡された女性器の画像やスキャンデータは「わいせつな」ものでしょうか。これを「わいせつな」画像や電磁的記録としてその頒布を処罰したら、誰でもおかしいと思うでしょう。この場合、医師等が入っていないボランティアグループだと、「正当業務行為」という議論はなかなか難しいと思います。私は、この場合も、こういった状況の下で受け渡される女性器画像やデータは「わいせつな」ものと評価されないと考えるべきだと思うのです。

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