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若者が抜擢された頃(メカAG)

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今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

若者が抜擢された頃(メカAG)

1990年代後半の不況の頃の事は、正直いって俺としても思い出すのも気が重いのだがちょっと書いてみる。会社として危機的状況だった。とにかくなりふり構わず売上をあげないと、と。

その頃はわりとスパンの長い大きなプロジェクトをやってたのだが、そういう仕事が不況で激減してしまったのだよね。で、苦し紛れに「新規事業開拓」ということで、小規模な顧客を開拓することに。まあ、たとえるなら基幹系のプログラムを作ってた人間が、ホームページ作成承ります、みたいな。あくまで喩えね。

いや別に馬鹿にするわけではなくて最初からそういう仕事をずっとやってて安定した顧客がいてノウハウの蓄積もある会社ならいいと思うのだけど、いままで重厚長大なプロジェクトを年単位で時間をかけて開発してた会社が、いきなりそんなことできるわけない。

そんなこと冷静に考えればわかりきってるのだが、やっぱ「もう他に方法がない」と切羽詰まってくると、人間は血迷うもの。

赤字の仕事も受けざるを得ない。赤字の仕事でもやれば少しは金が入ってくるから、時間稼ぎにはなる。やらなければもっと赤字(金が入ってこなくても社員に給料は払うわけだから)。

   *   *   *

で、当時一番割りを食ったのは中間管理職の人たち。ただでさえコストダウンで七転八倒してるところに、不慣れなビジネスをやれと言われる。当然のことながら期待に答えられず、社長とかの失望と怒りを買い「おまえはダメだ」と。ダメだと言われるだけでなく、あからさまな人事。

そうなると「ああ、ここまで社長に嫌われてしまったら、もうこの会社にいても、この先いいことないな」となって、辞めちゃうんだよね。

しかも有能な人間から順に白羽の矢があたってく。そりゃ社長としては有能な人間に期待をかけるだろう。しかし結果は上手く行かず失望、退職。

だんだん上の人達がスカスカになっていく。これには参った(苦笑)。

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そのうち「新しいことは若いやつの方がいいだろう」と言い出して、若い奴の中から見どころがありそうな人間を抜擢しだした。まだ係長にもなってない人間に、実質的に課長クラスの権限と責任を与えて。俺だったらビビっるのだが、さすがに社長に見込まれた人間、チャンスと考えて(なんという前向きさ)、一生懸命こなそうとした。

でもやっぱ無理なんだよね…。あたりまえだけど。いままでの課長クラスだって馬鹿じゃないわけで、彼らがやってできないことを、それより未経験な人間ができるというのは、なかなかありそうにない。アイディアは出すし、どんどん新しいチャレンジもする。そういうところが社長にウケたのだろうけど、ことごとく失敗。

それらの中には時間をかけて準備すれば、もしかしたらうまくいく物もあったかもしれないが、切羽詰まった状況でやっても上手くいかない。だんだん社長と意見衝突することが多くなって、蜜月期は程なく終わった。

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そうなると辛い。やっぱそいつもやめてしまった。「いずれ、独立して会社を起こすんだ」と普段から言ってたやつだし、やめてしまったのは会社としては損失。

んでそいつがダメだとなると、順にまた別な人間に白羽の矢が飛んでくるわけですな。何番目かについに俺に(笑)。いや、無理。それまでの人間がどういう運命をたどったか見てるわけで。

でも人間欲が出るもの。自分でも驚いた。ダメ元で「やってみたい」という気持ちが俺にもあった。まあ自分から進んでやろうとは思わなかったが(そんな消極的な奴にやらせるのもどうかと思うが)、「やれ」と言われる以上は仕方ないかな、と。なんか自分をごまかしてる(苦笑)。

で、恐る恐るできる範囲でやってみた。ドラマなら成功するんだろうけど、現実は…やっぱね。辛かった。一応当時の俺なりに一生懸命考えたんだけどね、いろいろ予防線も張って。浅知恵ですな(苦笑)。まあ、考えようによっちゃその時の経験が後になって少しはプラスになったのかもしれない。というかそう考えるしか。

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ネットではみんな若者をもっと登用しろという。大抜擢→大成功のパターンならそりゃ誰だって反対しない。問題は大抜擢→大失敗の後。じっくり育てていけば有望な人間を、焦って潰してしまうことになる可能性を、もう少し考えた方がいいと思うんだけどね。別な会社で心機一転頑張るかもしれないが、少なくとも辞められた会社にとっては損なわけで。

若者を抜擢して、失敗したら上司が責任を取る!みたいなのは、なかなか現実には難しいと思うのだよね。直接的には責任を問われなくても、事実上降格されたのと同じになるわけで、心理的ダメージが半端じゃない。それに耐えて前向いて考えられる人間ならいいけど。

執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年06月26日時点のものです。

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