歌ったりCD出しちゃったりする声優って…の巻(たかみゆきひさ)

歌ったりCD出しちゃったりする声優って…の巻(たかみゆきひさ)

今回はたかみゆきひささんのブログ『shadowcube』からご寄稿いただきました。

歌ったりCD出しちゃったりする声優って…の巻(たかみゆきひさ)

歌ったりCD出しちゃったりする声優ってどうなの!?
ってことで声優が歌ったりCDをリリースしたり、コンサートしたり、TVに顔出ししたりすることについて考えてみよう。

声優のタレント化に関しては常にネット上でもいろいろと議論が展開されている。

これってお客さん側から見た場合と送り手や演者から見た場合、そして、それぞれの立場で見解がかなり変わる。

世代でもだいぶ違うだろう。

ちなみに1960年代生まれの僕が初めて声優という存在を意識したのは黒柳徹子さん(マジです)。
そもそも黒柳さんを最初に認識したのは幼少のころにTVタレントとしてなのだが、母親に「この人、“ブーフーウー”や“ひょっこりひょうたん島”で声やってるのよ」と何度も言われて、“キャラクターの声をやる人”と刷り込まれた記憶がある。
(“ブーフーウー”は僕よりもちょっと上の世代の番組なのだが)

TVに出てるこういう人が声をやってるんだー、って思った。

今風に言うと、
顔出しタレントが声優やってるんだー
かな

だが、当時はさすがに声優に興味があったわけではないから、その後しばらく声優という存在を意識することはなかった。
もちろん「声優」という言葉すら知らない。

その後に強烈に声優を意識したのは「宇宙戦艦ヤマト」
僕ら1960年代生まれのおっさんは「宇宙戦艦ヤマト」に少なからず影響を受けている、いわゆる「ヤマト世代」。
この影響で富山敬さんや麻上洋子さんの存在を認識することになり、その後「銀河鉄道999」や「機動戦士ガンダム」で声優という存在がかなり強いものになった。

そして、そんな声優と呼ばれる人たちがいて、声優が歌を歌ったりコンサートをやったりということも当時スラップスティック(野島昭生さん、曽我部和行さ ん、古川登志夫さん、古谷徹さん、神谷明さん、三ツ矢雄二さん、鈴置洋孝さんによるバンド)というユニットが人気だったので、特に違和感がなかった。
「伝説巨神イデオン」のエンディングで戸田恵子さんが「コスモスに君と」を歌った時はアニメのエンディングでこんな歌やるんだーって友人たちと結構話題になったりもした。
日高のり子さんや荻野目洋子さんがアニメに声をやってたりもしたし。

ただ、某SF映画「スター○ォーズ」が初めてTV放送され、その吹き替えを観た時に「なんだこりゃ!」って気持ちにはなったから、人気だからということでタレントが声をあてるのはダメなんじゃないかという認識はあったな(苦笑)。

そんなことで着実にアニオタ人生を歩んでいた僕は高校の頃は友人の影響で冨永みーなさんのアルバムを聴くようになり、その辺のアイドルよりも声も出てる し、上手いしどっちかというとこっちの方が歌としてはいいんじゃないかという意識を持ち、「声」を仕事にしている声優さんの方がむしろ歌手に向いてるん じゃないかとも思うようになる。

そんな経緯があるので、僕の若い頃の意識としては声優が歌ったりタレント化してても特に違和感はない。

そして、「声優」という職業が認識され、声優が声優として専業化されてしまったために、その後「声優はこうでなくてはいけない」みたいな風潮が強まり、結果として声優の活躍の場や演技の幅を狭めてしまっている側面もあると思う。

演技はとても大事だ。
だが、演技の幅というのは単に技術的なものだけではない。
さまざまな知識や経験によって培われるセンスが大きく影響するものなのに、その引き出しが少なくなっている気がする。

うちの原田がその昔、故鈴置洋孝さんの舞台の演出助手をやっていた関係で、麻生美代子さんや故内海賢二さんが出演する鈴置洋孝プロデュースの舞台を観に行った事がある。
その時の印象だが、彼らは舞台役者として活躍している役者よりも表現力が高く、とても感銘を受けた。

はたして今の若い声優たちにこんな舞台ができるのだろうか…
と思った。
今の声優には何かが足りない…

さて、話を戻そう。
近年、アニメのOPやEDを出演声優が歌うケースが非常に多くなってきた。
その影響もあってかいわゆるアニソン歌手の活躍の場が減っているという話もある。
アニメのOPは歌が専門のアニソン歌手にまかせておけよ!とゆー意見もあるかとは思うが、出演している声優がその作品の楽曲を歌うことの説得力たるや、強烈なものがある。
だって、その作品の主人公が歌ってたりするんだもん!

そんなことで、業界的にも必然的に「声優も歌を歌う」という方向に流れる。
とても自然な流れで、誰にも止められない。

作品のプロモーションもあるので、ステージイベントやラジオ出演、雑誌の取材などメディアへの露出も当然増えてくる。
そういったことで、出演作品をアピールするためにどうしてもタレント的な活動になってくる。
これも自然な流れで誰にも止められない。
そう、
声優のタレント化は時代のニーズであって誰にも止められないのです。

近年のアニメではメインの役はオーディションの時にイベント出演や歌唱などが条件になっていることが殆ど。
ということはつまり…

歌を歌うことはもはや声優の仕事のひとつである

いまや「私は声優だから歌はちょっと…」という時代ではない。

ということなのです。
イベント出演やいわゆる顔出しもそう。

とは言え、タレント的に活動することにとらわれて声優としての本分である演技をおろそかにしてはいけない。

アニメーションという作品があって初めて成立する仕事なのだから、演技することも大事、そして、そのアニメーションの価値を更に高めるための歌やイベントに協力することも大事、これらは両方とも大事なことであると考えます。

これから声優を目指す人たちは今の「タレント化した声優」を見てきているから、若い世代の声優には「歌はちょっと…」という人はどんどん減ってきているとは思う。

でもね、しっかり認識して欲しいのは要するにやらなければならないことが増えてるっていうことです。

そこを忘れずに!

ていうか、
どこの養成所でも昔から歌やダンスの授業ってあるよね。

そういう意味ではカリキュラムとしては決して増えてない気がするけど…
歌やダンスの授業があるってことは必要だからやるんですよ。
昔からあるのになぜ「声優だから歌は…」「声優だからダンスは…」ってコトになるんだろう。
それが不思議でならない。
まさか養成所で歌やダンスの授業をやっていながら「声優は歌やダンスはいらないのよ」なんて教えてないでしょ?きっと。

執筆:この記事はたかみゆきひささんのブログ『shadowcube』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年06月18日時点のものです。

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