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未来を予測するということ(メカAG)

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今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

未来を予測するということ(メカAG)

この本がネットの一部で人気だ(苦笑)。

「ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき [単行本]」 レイ・カーツワイル , 井上 健 , 小野木 明恵 , 野中香方子 , 福田 実 (著) 『Amazon』
http://www.amazon.co.jp/dp/4140811676

まあSFだよね。SFとは新しい革袋に入れた古い酒とよくいう言われる。スターウォーズなんかその典型だよね。基本的にローマ帝国を銀河帝国に置き換えているだけ。むろんそうでないSFもある。人間の思考の地平を広げてくれるような。それは思考実験。

もし○○だったら世界はどうなっているか?という物事の本質を見つめなおす機会を与えてくれる。たとえばアーサー・C・クラークの「3001年終局への旅」では核融合によりエネルギー問題を解決した人類が直面する地球の温度上昇というエピソードが出てくる。タダ同然のエネルギーが手に入って調子に乗って使いまくっていたら、地球の放熱が追いつかなくなったという話。エネルギーとはなにか?を考えさせてくれる。

J・P・ホーガンの「未来の2つの顔」では、実験コロニーを舞台にコンピュータと人類の戦いが繰り広げられる。コンピュータが人間に対して敵意を持った時、人間はコンピュータの電源を切れるか?地球で実験するわけにはいかないので、コロニーを使ったわけだ。描かれているのは、そもそも敵意とはなにか、信頼とはなにかということ。

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繰り返しになるが、未来を予測するというのは、こうした人間の思考の世界を広げてくれるものでなければ意味がない。やたら危機感を煽り人々を煽動するだけのものは、安っぽい新興宗教と同じ。「今年富士山が爆発するが、我々の神を信じるものだけは救われる」と。

手っ取り早く耳目を集めて、売名するには効率が良い手段だけどね。ネットで活動している安っぽいジャーナリストもどきは、大衆の人気取りのために安易にそういう手段に逃げる。あ、一応一人の人間についていってるわけではないので、念のため。少なくとも念頭に置いている人たちは複数いる(笑)。

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カーツワイルの本、それ自体はいいと思うんだよね。いささか大風呂敷だけど、そういうものが文明の進歩には必要。アポロ月着陸だって大風呂敷を広げた人がいたから実現した。逆に言えば別に月着陸は歴史の必然でもなんでもなかった。特にやる必要はなかったわけで、それはその後ぱったりと月ブームが廃れてしまったことからもわかる。

でも文明や歴史というのは必然よりも偶然で動くものが多い。昭和の時代には21世紀は宇宙旅行がブームになり、月面基地ができていて、弾丸列車がチューブの中を走っているイメージだった。これらは実現しようと思えば今の技術でもできるだろう。単に実現しなかった、それだけだ。

カーツワイルの本もだいたいそれぐらいの精度のもの。量が質に転化するという考え方はそうだと思う。コンピュータの計算力は当分増加していくだろう。人間の脳細胞をすべてシミュレートできるハードウェアが作られるのも夢じゃない。ここまでは可能だと思う。

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そしてそれだけの計算能力をもったコンピュータが出現した時、コンピュータの役割は違う次元に進化するというのも、割りとありそうなことだ。

そもそもアポロ宇宙船の制御に使ったコンピュータよりもはるかに高性能なコンピュータを使って我々がなにをやってるかというと、twitterとかのくだらないおしゃべりだよね。まさに予想外の進化をしたわけだ。選ばれた人間だけが使うコンピュータから、大衆が使うコンピュータへ、パラダイムシフトが起きた。その起点はおそらくIntelのマイクロプロセッサが登場した時。

それ以前に今日の世界を予測するのは難しかっただろう。むろん一つの可能性としては考えられたかもしれないが、それが実際に起きるかは誰も予測できなかった。人類が月着陸するか予測できなかったように。

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人間の脳を超える計算力を持つコンピュータが開発可能になることまでは予測できても、それがどういう意味を持つかは予測できない。そもそも量から質への転換はパラダイムシフトであり、パラダイムシフトは予測できない。

人間の脳以上の計算力を持つコンピュータをハード的に作れたとしても、それが人間の思考をシミュレートできるかもはなはだ怪しい。たぶんできない。2045年までには。

よく言われることだけれど、飛行機は人間の「鳥のように飛びたい」という願望が生み出したものだが、現実の飛行機は鳥のような姿をしていない。鳥に近いものも考案されたけれど結局はうまくいかなかった。自動車も馬車のような形はしていない。

実用になった機械の多くはそのモデルとなった動物とは違う形をしている。人間のように思考するコンピュータができた時、それは人間の脳とは違う構造をもっている可能性が高い。

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人間以上の高性能なコンピュータを作れば、人間の思考はすべてそのコンピュータに予測されてしまうだろうか。人間がコンピュータに何か調べ物を頼もうとしたら、頼む前にコンピュータが「これです」と答えを出してきた、みたいな事はありえるだろうか。

世界は複雑系であり複雑系というのは本質的に予測できない。僅かな誤差が無限に拡大していくので、無限の精度を持つシミュレータがなければ現実を予測することはできない。ある程度期間を限定すればそこそこの精度で予測できるが。

どんなに高性能なコンピュータができても、それが無限に高性能でない限り、人間の行動や思考を予測するのは難しいだろう。そもそも予測する行為が未来を変えてしまうというジレンマもあるし。

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ということで未来予測というのは「徒労」という宿命から逃れられない。外れるために予測するようなもの。昭和の頃は、人口爆発による食糧危機とか石油枯渇とか言われたものだ。一方で原子力は夢のエネルギーだった。鉄腕アトムも原子力だった。でもいずれも予測と現実は違ってしまった。

外れることが宿命付けられている未来予測。それでも予測する意義があるとすれば、それはやはり人類を活動を鼓舞し前に進めるためだろう。ケネディ大統領が全米を鼓舞しアポロ計画を実現したように。

それゆえ悲観的なものであったり虚無的なものであったら意味がない。それこそ起きもしないことに不安を煽る「杞憂」というものだ。

やたら大衆の不安を煽るというのは、攻撃衝動の裏返しだと思うんだよね。何らかのストレスに対してそのはけ口を求める。それが他の民族に向かったりして戦争とかが起きたりする。現代の日本では戦争や民族差別はけしからんと幼少の頃から刷り込まれているので、幸か不幸かその方向へのはけ口がない。そこで自分の親とか高齢者、さらにはロボットとかに、はけ口を求める。まあ、やってことは民族差別と変わらない。なにも生み出さないし、負の感情は結局は自分自身に返ってくるだけだ。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年05月08日時点のものです。

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