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【新刊レビュー】村上春樹著『女のいない男たち』 女性の謎めく“神秘”を感じる6つの短編

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新刊レビュー『女のいない男たち』

書誌情報

どんな本?
村上春樹9年ぶりの短編集

「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」。表題作は書き下ろし。

読みどころ

まず村上春樹さんに珍しく、“まえがき”があることに注目。
それぞれ作品のテイストが違うので、好みも作品ごとに分かれると思う。個人的には「シェエラザード」「女のいない男たち」以外は、村上さんにしてはわかりやすく、読みやすい作品だった。
どれも村上さんらしい幻想的な世界観は、ふんだんに表現されている。言われてみれば、ありふれているような感情が、ありふれていない表現で表されているのが、いつもながらすごい。
全体を通して、男たちを囚えて離さない女たちの姿に、女性の謎めく“神秘”を感じた。

レビュー

オススメ度:★★★★☆
読了時間:3時間

筆者は村上春樹さんの作品は『ノルウェイの森』『海辺のカフカ』くらいしか読んだことがない。ファンタジーな世界観には心惹かれるが、正直いつも何を言いたいのかが理解しづらく、少々苦手である。
しかし、この短篇集は総合すると、大変読みやすかった。ハルキストには少々物足りないかもしれない。苦手な方にはオススメな作品。

出てくる男たちは、皆愛した女に去られ、一見大変哀れに見える。去っていった女たちを恨むことなく、ただただ現実を受け止めている感じ。しかし、よくよく深く潜っていくと、一概には哀れとはいえないのではないかと思えるようにまとまっている。

「ドライブ・マイ・カー」は淡々としたテンポで読める。終始、あまり明るい空気ではないのだが、暗く落ち込むこともなく、とてもしみじみとする。女性は主人公の奥さんが何を考えていたのかが、なんとなくわかるんじゃないかと思う。

「イエスタデイ」は男女双方に感じる部分がある。こちらも女性の立場から読むと、理解してほしい気持ちだなとしみじみする。男性側の気持ちもなんとなくわかるような気がする。単行本化にあたり、ほぼカットとなったビートルズの『イエスタデイ』の替え歌の全文が気になる。

とても極端なお話になっていたのは「独立器官」。極端ゆえにわかりやすい恋の話である。恋の熱情がこれでもかと語られる。女はひどく、ずるいけれど、総括すれば、幸せだった男の話。

はっきり言って、筆者が苦手なタイプだっだのは「シェエラザード」だ。理解しづらい。しかし表現が斬新。そして、変態的。ヤツメウナギが頭にこびりつく。謎が多く残されて、とても心が引っ張られる。

少々ホラーなテイストになっている「木野」は、淡々と悲しくなってくる。最終的につらい。傷つかないように傷つけないように……中途半端な気持ちのつけようが、いつまでもジュクジュクとして治らない傷口を作ってしまい、ある日そこからバイキンが入って、中から蝕み始めたような話。

表題作で、書きおろしの「女のいない男たち」で、「女のいない男たちとは」を説明しているのがまた村上さんにしては珍しいと思う。言葉が繰り返されているうちに、何の変哲もなかった言葉たちが徐々に意味を持ち始めていくようなところが印象的。

詳細情報

書籍名:女のいない男たち
著者:村上春樹
価格:1574円(税別)
出版社:文藝春秋

※表紙画像、書誌情報は文藝春秋BOOKSより
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163900742

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記者:

若いうちはなんでもやっとけー! とがむしゃらに生きている20代女です。 趣味は旅行と読書、創作活動、そして酒。夢中になると大変なことになるので、いつも控えめに過ごしております。

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