昭和の頃より現在の方が労働時間が多い?(疑似科学ニュース)
今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。
昭和の頃より現在の方が労働時間が多い?(疑似科学ニュース)
TwitterでやたらこのグラフがRTされている。
日本人って何考えてるんだろう。一日に10時間以上働く男性が、30年で倍以上になって、今や半数に届く勢い。
http://twitter.com/INOUE_MASAHITO/status/386337203682426880
グラフを見ると、1日10時間以上働く人の割合が描かれていて、1976年は17.1%なのが2006年には42.7%に上昇している。フルタイムで働く男性のデータだという。出典は早稲田大学、黒田祥子准教授とある。
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上記のデータそのものではないけど、下記がほぼ同内容のものだろう。
「日本人の働き方と労働時間に関する現状 黒田祥子 (早稲田大学) 内閣府規制改革会議 雇用ワーキンググループ資料~2013年10月31日~(PDFデータ)」 『内閣府』
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg2/koyo/131031/item2.pdf
p.9に「労働時間の推移(フルタイム雇用者)」の表があり、「(3)フルタイム男性雇用者の労働時間数別割合」が載っている。
0時間 0~8時間 8~10時間 10時間以上
1976年 5.2 28.7 49.0 17.1
1981年 3.6 28.9 47.6 19.9
1986年 4.7 22.2 42.1 31.0
1991年 5.8 20.0 41.6 32.6
1996年 6.5 17.7 40.4 35.4
2001年 7.2 17.6 38.0 37.2
2006年 6.3 13.9 37.1 42.7
2011年 6.8 13.4 36.1 43.7
数値も同じなので、冒頭のグラフはこのデータであろう。
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確かに上記のデータだけ見れば、1976年は8~10時間働く労働者が一番多かったのが、2006年では10時間以上働く労働者が一番多くなっている。だがちょっとまってほしい。同じページに「(1)週当たり労働時間」が載っている。男性の部分を抜粋する。
時間
1976年 48.23
1981年 51.13
1986年 52.40
1991年 51.54
1996年 51.33
2001年 50.99
2006年 52.78
2011年 53.13
週当たりの労働時間には、それほどはっきりした増加傾向はみられない。また「(2)平日1日当たり労働時間」は、若干の増加傾向が見られる。
時間
1976年 8.01
1981年 8.33
1986年 8.69
1991年 8.70
1996年 8.79
2001年 8.79
2006年 9.12
2011年 9.21
週当たりの労働時間は増加していないのに、1日当たりの労働時間が増加しているのは、ようするに週休2日制のためだろう。むかしは土曜日出勤だったのが、休むようになり、代わりに1日の労働時間が増えた。週休2日制が導入され始めたのがちょうど1980年代。
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なんかtwitterでは冒頭のグラフだけ見て、「むかしのサラリーマンよりも現代のサラリーマンの方が働いている」とか言ってる人たちがいるけれど、そういう単純な問題ではないだろう。
休日が21日増えているので年間の労働時間は減っている。p.4に「1970年以降の労働時間の推移」のグラフがあるが、1970年は約2250時間だったのが、2010年には約1750時間になっている。年間で見れば2割労働時間は減っているわけだ。
執筆: この記事はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年04月25日時点のものです。
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