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大企業とベンチャー、成長できるのはどっちか?

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今回は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。
※この記事は2013年11月27日に書かれたものです。

大企業とベンチャー、成長できるのはどっちか?

今週のメルマガの前半部の紹介です。
先日、以下のような質問をいただきました。

はじめまして。毎回メルマガでは勉強させてもらっている20代です。先日、ちきりん氏が「大企業なんて入ったって成長できない」という刺激的タイトルのブログをアップし、多くの賛否両論記事が後に続いています。

自分は一応大手と呼ばれることの多い企業に勤務しているのですが、確かにベンチャーやNPOなどで活躍する同世代と比べると、寒々しいほどのキャリアしか積めておらず、相当に危機意識を煽られる内容でした。ただ、一方で色々な反論エントリを読むと「これはこれで一理あるな」とも思います。

そこで、城さんから見て、どちらの方が分があると思いますか?率直な感想で構わないので教えてください。

大企業における成長とベンチャーその他における成長はまったく別物

筆者はそうそうたる大企業に就職した団塊ジュニアも、外資や新興企業で揉まれてきた団塊ジュニアも、どちらも知り合いに大勢います。単純に第三者からみてどちらが優秀かと言えば、圧倒的に後者ですね。後者とはビジネスの話はもちろん、政治や経済、書籍の話なんかをしても非常に刺激的で満足できます。一言で言えば、アンテナの高い人が多いです。

一方(もちろん人によりますが)前者は数段落ちる人が多いです。たとえば、東大を卒業して大手企業に入ったA氏という人間がいます。彼は優秀な帰国子女でバイリンガル、大学時代の成績も筆者なんかよりよっぽど上だったエリートですが、両親や周囲のススメで某インフラ系企業に就職し、今年でめでたく40歳。係長で年収も900万円位あります。

で、どういう人材になっているかというと、はっきりいってただのオッサンですね。彼は新聞も経済誌も本も読みません。なぜかと言えば「必要が無いから」だそうです。休日は部屋でゲームをして過ごすのが大好きで、スキルアップとかキャリアアップという言葉とはまったく無縁な生活を送っています。だから会って話してもゲームとかアイドルの話しかしないから、まあ面白いやつではあるけど、正直言うと退屈ですね。

ただし、じゃあ大企業の方が成長出来ないかと言えば、そうとも言えません。まずなんといっても、あんな向上心のない人間を年収900万円貰える人材にまで育てたんだから、終身雇用って凄い育成システムだなとあらためて感心しています。

さらに言えば、両者を戦わせた場合、社外の土俵で競わせればそりゃベンチャー叩き上げの方が絶対強いでしょうが、A氏の所属する大企業の中で戦わせたらどうでしょう?A氏は社内の暗黙のルールとか社内政治とか、部署に伝わる代々の仕事の進め方とかハンコのつき方とか関連部署の役職者の卒年次及び学歴とか、そういう自社内の情報を駆使してゲリラ戦を展開し、きっと相手をランボーのごとく討ち取ってしまうことでしょう。

両者の関係は、総合格闘技と柔道のそれぞれの王者の関係に似ているかもしれません。総合格闘技のリングで戦えば総合の選手の方が強いでしょうが、そもそも柔道王者は柔道から打って出る気も必要もないわけで、どっちが強いか的な議論には実はあまり意味が無いように思えます。重要なのは、自身がどっちの舞台で戦いたいかでしょう。

ちなみに、もしA氏に「おまえ、ベンチャーで30歳で会社回してる奴に負けてるぞ」と言ったら、きっと「ふうん、そう。ていうかオレそもそもそいつと競争してないし」で終わると思います。「競争したら負けかなと思っている。今の自分は勝ってると思う」というのがこの手の大組織エリートの偽らざる本音であり、どっちが成長できる議論なんて超越した存在だというのが筆者の見方です。

ついでに言うと、新興企業でそれなりのポストについている人は全体からみればごく一部に過ぎず、その何倍も「思うようにキャリアを積めていない普通の人」がいるわけです。大企業の中途採用には、そういったベンチャー出身の「普通の人」が割とよく応募してくるのですが、よほど目立つスキルでもない限りまず採用されません。

大企業の採用担当というのは、新卒で最初に入った会社名をとても重視します。そこで無名の企業に入り、しかもこれといって役職にもつかぬままこうして自社の中途に応募しているということは、よほどポテンシャルに難のある人材だろうと値踏みするためですね。そういう目立たない普通の人もカウントして平均すれば「ベンチャーの成長幅は凄い」とまでは言えないのではないかというのが筆者の感覚です。

まとめると、自社に特化した人材育成をしている組織と、流動性の高い業種で叩き上げた人材を同じモノサシで比較すること自体に無理があるということ。

その組織に特化した育成を今から受ける価値があるか、それともリスクをとってでも新興企業で早期にキャリアを上積みするチャンスにかけるか、結局は個人で判断するしかないということですね。

「成長させてもらえる」のか「成長できる」のか

ただし「どちらがオススメかは結局は人によるのだ、一概には言えんのだ」的なよくありがちなセリフで無難に締める気は、筆者にはぜんぜんありません。大企業とそれ以外のキャリア形成には、実はより本質的な違いがあります。その点を見誤ってしまうと、どんなに優秀な能力があっても、必ず後ほど後悔するハメになるでしょう。一言で言うと、それは成長させてもらうのか、それとも成長するのか、という主体の違いです。

「成長とは組織にさせてもらうもんだ」と思っている人は、大組織に行くといいでしょう。(あんまり効率は良くないでしょうが)組織側から黙っていても定期的に研修が与えられるし、真面目に勤めてさえいれば年相応の担当業務が降ってきて、だいたい35歳くらいまではそこそこの職歴が身につくことでしょう。

「成長はあくまで自分自身でするものだ」と考えている人は、最初から機会の多い新興組織に行く方がいいでしょう。そういう場所では組織側から研修を与えてくれたり、ほっといても担当業務や賃金が上がっていくということはまずないでしょうが、自分次第でものすごい成長を遂げる可能性があります。

要するに、自分が自身のキャリアのかじ取りをどこまでしたいかで、どちらに進むべきかはおのずと決まってくるはずです。それは人に聞くまでもなく、自身が一番よく分かっているはずですね。

執筆: この記事は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年12月06日時点のものです。

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