日本の法人税は本当に高いのか?
数字のからくり、よく中身をみてみないと分からないものです。今回は花園祐さんのブログ『陽月秘話』からご寄稿いただきました。
日本の法人税は本当に高いのか?
いきなりですが、日本はよく法人税の高い国だといわれています。特にこれを強く主張しているのは経団連、それも経団連会長でもあるキャノンの御手洗富士夫氏ですが、彼は日本の法人税が高いままだと、有力な企業はどんどん税負担の少ない国へと本社を移転してしまい、将来的には税収が減ってしまうからという理由で、よく政府に対して法人税の引き下げを迫っています。
しかし、私は前からこの御手洗氏の主張にどこか奇妙さを感じていました。というのも、先進国中世界で一番国民の税負担率が少ないアメリカを除くと、社会福祉が充実しているヨーロッパ諸国などでは国民の税負担率は日本の倍近く、北欧に至ると実際に倍以上ある国ばかりです。国民税負担率には法人税はもとより消費税や所得税といった個人の税金も含まれるため、一概に言い切れることはないかもしれませんけど、普通に考えたら税負担率の少ない日本の方がヨーロッパ諸国より法人税は低いのではないかと考えていました。
そうしたら、昔に知り合いがくれた資料、『しんぶん赤旗』2007年10月8日(月)の「日本企業負担 仏独の7~8割」という見出しの記事にて、日本の企業が負担する法人税、社会保険料の合計は、フランスやドイツに比べてはるかに軽いということが説明されていました。
参考:『しんぶん赤旗』2007/10/8 「日本企業負担 仏独の7~8割」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-10-08/2007100801_01_0.html
具体的に数字を出すと、記事は業種別に企業負担率を比べており、自動車製造業では、以下の結果でした。
日本 :30.4%
ドイツ :36.9%
フランス:41.6%
続いてエレクトロニクス産業では、以下の結果でした。
日本 :33.3%
ドイツ :38.1%
フランス:49.2%
ともに日本は他の二ヵ国と比べて低いということが説明されています。
記事にははっきりと書いておりませんが、確かに法人税単体で見るならば日本は先進国の中で高い方ですが、同じく企業が負担する社会保険料と合算すると、他の先進国より企業の負担は低いということを暗に示しており、御手洗氏の主張の、現行の法人税実行率40%から30%への引き下げの議論は間違っていると主張されていました。
さらに同じ記事で「御手洗氏の主張のように法人税の高い日本から企業は本当に海外へ逃げるのか」という点について、経済産業省の行った『公的負担と企業行動に関するアンケート調査』にて生産拠点の海外移転を計画している企業に複数回答でその移転理由を尋ねたところ、以下の結果が出たようです。
1位 労働コスト :84.7%
2位 海外市場の将来性 :65.1%
3位 取引先の海外移転 :47.6%
4位 その他のコスト :42.8%
5位 税・社会保険料負担:40.2%
海外移転理由の第1位はやはり労働コストで、御手洗氏の主張である「税・社会保険料負担」を理由に挙げているのは複数回答にもかかわらず半分にも満たないため、こちらでもまた間違っていると指摘されています。さらに同じ調査で「法人実効税が30%程度まで引き下げられた場合に国内回帰を行うか」という質問に対して、「検討する」と答えたのは17.8%で、「検討しない」が69.5%となり、こちらもやはり御手洗氏がおかしなことを言っているという結果になりました。
このように、別にありもしない不安を煽(あお)って自分の取り分を増やそうとする御手洗氏の主張にはほとほと頭にきます。そもそも御手洗氏のいる会社は、株式保有比率で見たら過半数を外国人投資家、企業が持っており、事実上外資系企業と言ってもいいほどです。そのような会社のトップが日本の経団連の会長をやっているだけでもおかしいというのに、日本政府に対してこんな妙な要求をするというのもおかしなことです。
さらに付け加えると、「税金が高いから」という理由だけで海外移転を行うような企業は、いざ日本が危機に陥った際には平気で裏切るような企業のように思えます。そんな獅子身中の虫(しししんちゅうのむし)を飼っておくくらいなら、この際どんどんと出て行っていただいたほうが日本のためになるでしょう。
執筆: この記事は花園祐さんのブログ『陽月秘話』より寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信
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