医薬品のネット販売解禁で消費者の健康被害は拡大するか?

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医薬品のネット販売解禁で消費者の健康被害は拡大するか?

今年1月の最高裁で一般用医薬品のネット販売規制を無効とする判決が下された。 これにより大衆薬ともよばれている店頭販売の一般用医薬品をネットで購入することが可能になった。6月14日に閣議決定された成長戦略では最終的に1類医薬品の25品目(ロキソニンやアレグラ、リアップX5など)を販売解禁の例外として除外したが、一般用医薬品は12,000品目以上流通しているのでほぼ全ての一般用医薬品を手軽にネットで購入することが可能になったのである。今までは医薬品をネットで販売することに対して「安全性の確保」という点から規制が敷かれてきた(それ以外に大人の事情も多々あると思うが)。しかしながら、ネット販売が解禁されることになった現在、消費者の安全は守られるのであろうか? ここでは一般用医薬品の安全性と、ネット販売と対面販売のメリット・デメリットについて紹介していきたい。

 

4年間で24人の死亡例と404例の副作用報告は一般用医薬品の危険性を証明しているか?

「消費者の安全を守るため」ということで今までネット販売は規制されていた。それでは実際にはどの程度の健康被害が出ていたのだろうか? 厚生労働省の発表によると、一般用医薬品の副作用によって死亡したケースは2007年から2011年の4年間で24名いたという。内訳は総合感冒薬(いわゆるカゼ薬)が12件と半分を占め、その後に解熱鎮痛剤の4件が続いている。副作用も同様に総合感冒薬と解熱鎮痛剤が1,2位を占めている。死亡例や副作用の報告が出ている以上一般用医薬品は100%安全とは言い切れないが、日本中でカゼ薬を使用している人の数を考えれば消費者が適切に使用する限りにおいてはネット販売を躊躇するほどの危険性はないと思う。さらに一般用医薬品の副作用で死亡につながる重篤なケースにはスティーブンスジョンソン症候群とライエル症候群という皮膚障害が大部分を占めているが、この皮膚障害は病院で処方される薬でも発症する危険性がある上に対面販売でも発生を予防することが難しい(人口100万人あたり1~6人程度が発症するといわれている)レアな病気なので、やはり「対面販売=絶対に安全」ともいえないだろう。それでは、消費者は対面販売ではなくネットを中心に薬を買うべきなのか?

 

ネット販売のメリット・デメリット

上記で述べたとおり、個人的にはネットでの販売をすることによって極端に健康被害が増加するとは考えていない。とはいえ、ネット販売にはメリットだけではなく、デメリットもある。まずメリットとしては①育毛剤や痔の薬といったナイーブな医薬品を誰にも知られることなく購入できる。②忙しい時に店に行かなくて薬が買える③僻地や近所にお店がない人にとっては便利。というメリットが挙げられるだろう。デメリットとしては①いくら便利でも急に熱が出た時にはすぐには届かない②自分の症状にあっていない薬を選んでしまう可能性がある。③価格競争に巻き込まれて粗悪品が出回る可能性がある。といったところだろうか。

 

店舗販売のメリット・デメリット

店舗販売のメリットとデメリットはネット販売のメリット・デメリットをひっくり返したものといえるだろう。一点だけ店舗販売の最大のメリットを挙げるなら、お店には薬剤師や登録販売者といった有資格者がいるので自分にあった薬を間違いなく選べる可能性も高まる上に、その他の薬や健康に関する疑問にも応えてもらえる点だろう。ネット上では薬に関して誤った情報が載っている可能性もあるので、自分の症状に合った薬を選んだり、健康相談をするのであればお店を利用するのも良いかもしれない。

 

閣議決定により、ネット販売の解禁は既定路線である(というか、ケンコーコムなどの一部の会社はすでに販売している)。消費者の皆様にはネットとお店を有効活用して、健康な生活を送っていただきたい。

 

http://www.igosso.net/id/2988044872.html

photo by K14

※この記事はガジェ通ウェブライターの「浅川 クラゲ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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