教師たちを悩ます“進路指導の現場”

教師たちを悩ます“進路指導の現場”
 ここ数年で、大学受験、就活関連の書籍をよく目にするようになった。一方、大学では、オープンキャンパスに親向けのガイダンスを組み込んでいるという。それだけ子どもの進路決定にあたり、親の影響力が強くなっているということだ。大学入試も時代と共に変化しているのだ。
 指定校推薦、AO入試、一般入試といった大学入試の現実、進路指導教員の仕事内容など、大学進学にまつわる現場は今、どのような状況なのだろうか。
 『バカ学生に誰がした?』(新井立夫、石渡嶺司/著、中央公論新社/刊)では、進路指導教員の目から見た大学進学の舞台裏を紹介する。

 高校生は、高校卒業までの3年間で大学進学、短大・専門学校、就職のいずれかの選択をしなければならない。そのとき、親の「よかれと思って」の助言が暴走しすぎると、子どもも進路指導教員も振り回されることになる。例えば、こんなケースだ。

 「ともかく医学部に行け。それ以外は不幸だ」という医学部ごり押しの親。この手の親は私立中高一貫校などにいる。自身が開業医であったりすると、わが子に後を継がせたいこともあってか、医学部進学を厳命する。生徒がそこそこ優秀であれば、どこかの大学の医学部に入るだろうが、問題はそうでない場合だ。
 生徒Aは理系コースに所属するも、生物や数学の成績はいまいち伸びない。小説を読むのが好きで、将来の夢は文学の研究者。こういうパターンの場合、アドバイスのタイミングを間違えると大炎上する。親に肩入れしすぎると、生徒との信頼関係を失ってしまうし、生徒に肩入れすると今度は親が怒鳴り込んでくる。
 もし、この生徒が国立難関大を狙える成績なら、進路指導教員には奥の手がある。それは「とりあえず東大」だ。大学受験最難関の東京大学理科III類。しかし、2年間は教養課程だ。教養課程ののち、他学部に移ることもできる。しかも、親は東大に入れば鼻高々。高校は進学実績が上がったと教育委員会に報告もできる。三者とも良しとなる。
 ただ、この奥の手を使える生徒はなかなかいないだろう。東大を狙うほどの学力を持っていない場合は、親子で話し合いさせるしかない。三者面談のときはどちらにも肩入れしない体を装う。二者面談のときはそれぞれの味方となるとのことだ。

 進学校の進路指導教員は、上司である校長・教頭や、その上の教育委員会からのプレッシャーにさらされている。さらに、生徒とその親の板挟みになることもしばしばあるようだ。ただ、生徒にとっては、学力や将来の方向を考えて相談にのってくれる存在でもある。現在の大学受験が、どんな状況なのか。大学受験の現実と裏側を読むことのできる一冊だ。
(新刊JP編集部)



(新刊JP)記事関連リンク
内定を取れない学生に共通する3つの勘違い
人事担当者が不採用者を見極めるための4つのポイント
若者が避妊をしない理由

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 教師たちを悩ます“進路指導の現場”

新刊JP

ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。