カミングアウトまでの果てしなき道のり…!コミックエッセイ『男になりたい!』で語られるトランスジェンダーのリアル

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『男になりたい!』

マツコ・デラックスやIKKO、はるな愛といったおネエ系のタレントの活躍もあり、除々に認知されるようになってきたジェンダーマイノリティーですが、実際には周囲の人に理解されるのはいくものハードルがある様子…。そんな悩みを包み隠さず描いた山岸ヒカルさんのコミックエッセイ『男になりたい!』(中経出版)が刊行されました。

三人姉妹の末っ子で、保育園の頃から自分が男の子であるという自覚があったという「私」。用を足す際に男子トイレに入ろうとして先生と言い合いになり、連絡ノートに「女の子のお友達と遊ばず協調性が無く、自分は男の子だと言い張り先生を困らせます」と連絡ノートに報告されてしまい、母親から烈火のごとく怒られるというエピソードから始まります。
「バカって思われるよ」と言われて、しぶしぶ髪を伸ばしてスカートをはくようになった「私」。女の子らしく演じることを決意しますが、心の底から納得がいかずにストレスを溜めつつも「隠れ男の子」として生きていくことに…。この頃の経験が、消極的で後ろ向きな性格を作ったようです。

成長するにつれ、いじめられないために女子校に通い、短髪にできるという一点だけで剣道部に入部。レズという噂が立つとヤリマンアピールをして先生にマークされたり、カモフラージュで彼氏を作ったり…。判断が一周まわってしまってドツボにハマることの繰り返しなのですが、それを面白おかしくではなく淡々と描かれているあたりに悩みの深さを感じさせます。

大学に入り、飲み会で知り合った友達ミドリにはじめてカミングアウトができたところから、「私」に少しづつ変化が訪れます。女であることを再確認されるから苦手だった男の子とも、ミドリの彼氏・田中くんのお陰で除々に克服。それまで誰にも言えなかったアイドルの応援にライブに行くことも叶いました。

そして、「私」の前にボブカットの女の子・マユが登場。ひと目で恋に落ちた「私」ですが、ここでも同性愛であるという葛藤に七転八倒しつつ、遂に付き合うことに!
とはいえ、家族へのカミングアウトだったり、将来のことだったり、そしてエッチはどうするのかと難問が待ち構えてます。それに対して不器用に向かっていく「私」が出す答えは、時に見当違いだったりするのですが、真剣さだけは痛いほど伝わります。

「男になりたい女」として包み隠さず描いたコミックエッセイ。山岸さんはあとがきで「この本が、さまざまなセクシャリティの人々が相互理解を深めるきっかけになり、多くの人が言いたいことを言える世の中になればいいなと思います」と記しています。「もしかして性同一性障害かも」という人や、トランスジェンダーの人たちの悩みを知りたいという人にとって一読の価値ある作品といえそうです。

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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