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ももクロの「オズフェスト」出演が明らかにしたもの

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今回は柴 那典さんのブログ『日々の音色とことば:』からご寄稿いただきました

ももクロの「オズフェスト」出演が明らかにしたもの

■オズフェストが成功をおさめた理由

さて、出来事が風化する前にきっちりと自分が目撃したこと、考えたことをまとめておこう。少なくとも、僕には言いたいことが沢山あるぞ。

5月11日、ももいろクローバーZが「OzzFest Japan 2013」に出演を果たした。改めて言うまでもないことだけれど、大きな話題を集めたし、最初からかなりの賛否両論を巻き起こした。あれは一体何だったのか。

時系列で振り返っておこう。4月中旬の発表を受けてまずは主催者のFacebookページに批判コメントが相次ぐ。ニュースサイトがそれに飛びついた。

「「Facebook上でプロモーターへの批判も……」ももいろクローバーZの“オズフェスト”参戦発表で広がる波紋」 2013年04月18日 『日刊サイゾー』
http://www.cyzo.com/2013/04/post_13101.html

「伝説のメタルフェス【ozzfest japan 2013】にモモクロ参戦発表で大ブーイング!!」 2013年04月15日 『ガジェット通信』
http://getnews.jp/archives/322136

開催直前の5月上旬には大手新聞にも取り上げられている。

「ももクロ×ヘビメタなぜ 「オズフェスト」に参戦」 2013年05月08日 『朝日新聞DIGITAL』
http://digital.asahi.com/articles/TKY201305070397.html
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ちなみに、僕は参加が発表された日にこういうツイートをしている。

柴那典@shiba710

いろんな意見が飛び交ってるけど、「黒い週末」がブラック・サバス「Sweat Leaf」へのオマージュであることを含めて、オズフェストへの出演は文脈的に超アリだと思います。 / “ナタリー – ももいろクローバーZ「Ozzfest …” http://htn.to/FuQjdi

2013年4月14日
https://twitter.com/shiba710/statuses/323632757131587584

その後に寄稿したコラムでもこう書いている。僕は一貫してこういうスタンスです。

冒頭、高城れにの「ゲホ、ゲホ、ゲホ……」という咳は、ブラック・サバスの3rdアルバム『Master of Reality』収録の「Sweet leaf」でのオジー・オズボーンの咳へのオマージュ。ちなみに、この曲のギターに参加してるのが、サバス直系のドゥーム・メタルを展開し活動歴20年を超える人間椅子の和嶋慎治。こちらもオズフェストに参加予定。というわけで、ももクロのオズフェスト参戦に「メタルの聖域に場違いのアイドルが~」なんて言ってる人はちょっと狭量にすぎるんじゃないの?と、人生で最初に買ったCDがオジー・オズボーンの『ノー・レスト・フォー・ザ・ウィケッド』だった僕としては言いたいです。

「第63回:ももクロ新作『5TH DIMENSION』から「楽曲厨」が語るべき10選」 2013年04月25日 『DrillSpin Column』
http://www.drillspin.com/articles/view/590

これまであんまり言う機会はなかったけど、僕、ほんとにオジー・オズボーンが青春だったんですよ。メタル好きな少年時代を過ごしてきて、特に中学生の頃は部屋にポスターを貼ってたくらいオジーが好きだった。2002年にはイギリス・ドニントンで行われたオズフェスト(マッド・カプセル・マーケッツが出たやつね)にも足を運んで当時の雑誌にレポート記事を書いている。もちろんブッキングに納得いかないメタルファンの気持ちはよくわかるけど、少なくともそれなりにオジーとサバスへの思い入れはあるつもり。

そういう人間が、オズフェストの2日間に行ってきたわけです(2日目は仕事の都合もあってトゥールとサバスしか見れなかった)。

で、言いたいことは沢山あるけど、端的にいえば、僕は今回のオズフェストは成功だったと思う。とにかく、初めてこの目で観る(ほぼ)オリジナルのブラック・サバスがめちゃくちゃ格好よかったのだ。オジーも、トニー・アイオミも、ギーザー・バトラーも、バリバリ現役だった。ヘヴィロックの原点として、ちゃんと今も通用する音を鳴らしていた。で、ステージからもちゃんと見渡せるくらい広いフロアが後ろまで熱狂していて、そのことにも感涙した。

なにせ、僕は伝説のウドー・ミュージック・フェスティバル、その惨状をこの目で見てきた人間だ。今じゃ半分笑い話になってるけど、少なくとも、あの時ヘッドライナーだったKISSはあれから来日していない。ついでに言えば、同日開催されるはずだったTOKYO ROCKSがやらかしたおかげで、10年ぶりに来日するはずだったBLURが次にいつ来るかはわからない。オズフェストだって、チケットの売れ行きが苦戦しているという噂もあった。

そんな中、炎上気味のブッキングだったとはいえ、幅広い層に話題を広めることで興行を商業的に成立させたことは評価していいと思う。オジーも「来年、また戻ってくるぜ」的なことをMCで言っていたし。もちろん実現するかは今の時点ではわからないけど。

なんだかんだ言って、オズフェストは「メタルの祭典」ではなく、オジー(とシャロン)のフェス。ブラック・サバスが最高だった時点で、オジーに「また来るぜ」と言わせた時点で、オズフェストは成功だった、というのが僕の見方だ。

■「事件」はTL上で起こっていた

では、ももいろクローバーZはどうだったのか。

強く感じたのは、なんだかんだ言って、騒ぎの火種はネットにあったんだ、ということ。「事件」はフロアではなくツイッターのタイムライン上で起こっていた。もしくはFacebookのコメント欄で。2ちゃんねるで、まとめサイトで、それに食いつくネットメディアの上で。

特にそれを実感したのが、以下の2ツイート。ライブが終わるまでの30分で数百RTを記録している。

柴那典@shiba710

ももクロのオズフェス第一声。「いい? 今、みんなの目の前にいるのがアイドルです!」。すげえ、ぶっこんできた。

2013年5月10日
https://twitter.com/shiba710/statuses/333133341253595136

柴那典@shiba710

ももクロ@オズフェス。「いいかお前らー! 高城の気合い見てろー!!」→コーラ500ml一気飲み→むせて咳き込む→「黒い週末」。ギターはNARASAKIさんと人間椅子の和嶋慎治さんのツインギター。なんかもうすげえ。

2013年5月10日
https://twitter.com/shiba710/statuses/333137882569117698

ちなみに、正確には「見てから決めろー!」「今、目の前にいる私たちがアイドルだ!」が第一声だったよう。どちらにしろ超ストロングスタイル。ライブそのものに関しては、ナタリーのレポとtogetterのまとめが詳しい。

「ももクロ、Ozzfestで白熱ライブ「私たちがアイドルだ!」」 2013年05月11日 『ナタリー』
http://natalie.mu/music/news/90444

「オズフェス-ももクロ部分」 『Togetter』
http://togetter.com/li/501151

Ozzfest全体のレポート記事はこちら。

「Ozzfest Japan初開催でサバス、SLIPKNOT、日本勢が大活躍」 2013年05月18日 『ナタリー』
http://natalie.mu/music/news/90772

「Ozzfest Japan 2013 1日目@幕張メッセ 9~11ホール」 2013年05月11日 『RO69』
http://ro69.jp/live/detail/82153

「Ozzfest Japan 2013 2日目@幕張メッセ 9~11ホール」 2013年05月12日 『RO69』
http://ro69.jp/live/detail/82170

ももクロのパフォーマンス自体は相当気合いの入ったものだった。去年のサマソニとかに比べても、すごくよかったと思う。メタル的な要素を押し出すでもなく、異種格闘技戦を挑むでもなく、「アイドルとしてのももクロ」を直球ストレートでぶつけ、NARASAKIさんと人間椅子の和嶋慎治さんのギターがそれを盛りたてるスタイル。最初は様子見だったフロアのお客さんたちが彼女たちに好感を抱いていく様子も、実際に感じ取れた。

ただし、その後の反響を追っていくと、やっぱりちょっと勘違いしたようなものもあった。ツイッターのTLやネット上の感想だけを見て何があったのかを判別しようとすると、得てしてそうなってしまう。その典型が以下のような記事。

「Ozzfestとは思えぬ異常な雰囲気」、「今オズフェスに来てるはずだけど、何かがおかしい」、「これが伝統のオズフェスとは思えない。空気が違いすぎる」という意見も少なくない。しかし「ももクロによって、会場が一体化!」、「外国人さん目が点、口ポカーンだけど、手を振ってるよ。素敵な光景」という会場の雰囲気があったことは確かなようだ。

「「アウェーというよりホーム」。Ozzfestに参戦した“ももクロ”の評価は。」 2013年05月12日 『マイナビニュース』
http://news.mynavi.jp/news/2013/05/12/081/index.html

「モノノフ対メタラーの対立を乗り越え、賛否両論もあった中、ももクロが会場を一つにした」――おそらく現場に足を運んでいないこの記事の書き手がツイートをかき集めてそんなストーリーを思い浮かべたとしたら、それは実情からはちょっと異なる。

そもそも「モノノフ対メタラーの対立」なんてものは、あそこのフロアにはなかった。繰り返しになるけれど、それはあくまでツイッターや2ちゃんねる、まとめサイト上にあったもの。あえて言うなら、あそこにいた人の持っていたスマホの液晶画面の上で展開されたものだった。

オズフェストは左右に並んだ二つのステージで交互にライブが行われる形式のフェスだ。転換の時間は短い。そしてステージエリアで飲食することはできない。長丁場の一日だし、必然的に食事やトイレはそれほど興味のないアクトの時間帯に休憩エリアで済ます必要がある。まず、見たくないもの、気に入らないものをわざわざ見る理由がないわけだ。ヘッドライナーのスリップノットに向けて休憩していた人も多かったはずだろう。

そして、正直に言えば、決して会場が一つになったわけではなかった。前方は盛り上がっていたが、後ろのほうでは腕を組みながら最後まで首をかしげていた人もいた。逆サイドには次のホルモン待ちの人もいた。

でも、そういうこともちゃんと踏まえて、それでもあえてアイドルらしいアイドルの姿を全力で貫いたももクロのパフォーマンスは素晴らしかったと思う。

■「フェスリア充」とオズフェスト

そして、もう一つ大事なこと。

そもそもあの日、オズフェストのあの場所にいたのは本当に「メタラー」だったのか。実は大多数がそうではなかったと僕は見ている。オズフェスト1日目のオーディエンスのマスは、いわゆる正統派のHM/HRファンではなかった。Galneryusのような正統派ヘヴィメタルバンドも、元ガンズのSlashもいたけれど、やはり最大の熱狂を生んでいたのはヘッドライナーのスリップノット。そしてその次はマキシマムザホルモン。MAN WITH A MISSIONも相当盛り上がっていた。どれも00年代以降のラウドロックだ。

つまり、あの場でももクロに盛り上がっていた人たちの多くは、夏フェスが日本に定着し、レジャーとして消費されるようになったここ10年ちょっとの風景を当たり前に過ごしてきた若者だった。

僕は翌日のブラック・サバスのときにそれに気付いたよ。

柴那典@shiba710

トゥール終了、サバス前方待機中。やっぱり昨日とは全然客層違うな。ロックフェスが「リア充のコミュニケーション装置」になる以前の人たち。昨日ももクロで盛り上がってたのは、やっぱりMWAMやホルモンのお客さんだったか。ヒリヒリする。

2013年5月12日
https://twitter.com/shiba710/statuses/333526145406484481

ちなみに、「夏フェスが定着し、レジャーとして消費される風景」、そこに集まる「フェスリア充」(と名付けてみた)な人々については、以下の記事に詳しいです。マキシマムザホルモンやMAN WITH A MISSIONは、まさにここ最近のロック・イン・ジャパン・フェスの人気者だしね。

「音楽を楽しむ」よりも「コミュニケーションを楽しむ」ってのが上にきちゃってるから、ライブやDJブースでは曲に関係なくとりあえずサークルモッシュとハイタッチ。知らない人との身体的な接触を図れるのがフェスの醍醐味って思ってるんですよ。そこには「新しいバンドを見つけよう」みたいな動機付けは皆無。見ず知らずの人たちと「うぇーいwww」ってやれればそれでOKってこと。

「ロックインジャパンについての雑記2-RIJFのRはリア充のR」 2012年07月29日 『レジーのブログ』
http://regista13.blog.fc2.com/blog-entry-5.html

(一応誤解のないように言っておくと、僕自身は「フェスリア充」という書き方で誰かを揶揄するようなつもりは一切ないです。基本的な僕のスタンスとして、どんなスタイルであれ何かを全力で楽しんでる人を皮肉ったりしようとは思わない。むしろわりと好感持ってる。楽しそうな人を見たらこっちも楽しくなるしね)

で、「オーディエンス同士のコミュニケーションを楽しむ」というのは、アイドルのライブでも普通に見られる光景。ヲタ芸というのはその象徴だと思う。そう考えると、たとえばMAN WITH A MISSIONの「FLY AGAIN」でキッズがわっしょいわっしょい盛り上がってる様は、ちょっと見方を変えればヲタ芸にも見えるよな。

「【MVフル】MAN WITH A MISSION「FLY AGAIN」」 『YouTube』




(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=1QEKNvw4DPU

そのMAN WITH A MISSIONにスリップノットのシドが飛び入り参加してたんだけど、実はスリップノットも、「スワレー!」で全員しゃがんでからのジャンプとか、そういう「フィジカルなコミュニケーションを楽しむエンタテインメント」の要素があるよね。ホルモンの「麺カタ!こってり!」コールもそうか。

そういうわけで、話は冒頭に戻る。朝日新聞の記事で『BURRN!』編集長の広瀬和生さんはこう語っていた。

「コアなファン層には言葉にできないある種の美学があり、違和感を覚えた人たちが反発しているのかも」

「ももクロ×ヘビメタなぜ 「オズフェスト」に参戦」 2013年05月08日 『朝日新聞DIGITAL』
http://digital.asahi.com/articles/TKY201305070397.html
※こちらを閲覧するには会員登録が必要です。

『BURRN!』の広瀬編集長が言う「言葉にできないある種の美学」というのは、「リア充のコミュニケーション装置」としてのフェスのあり方と対極にあるものだと僕は思う。そういえば、1日目の帰りに会ったライターの友だちが言ってた。「メタルのイベントだとセットチェンジの時に文庫本読んでる人とかいるんですけど、今日はそういう人、全然いなかったですよね」。そうそう! それが1日目と2日目の客層の違いに如実に結びついていたし、いろんな反発とかハレーションの底流にあったものなのではないかと僕は思う。

そういうわけで、今回のオズフェストで明らかになったのは「モノノフ」と「フェスリア充」の予想以上の距離の近さ、そして両者と「メタラー」の、微妙に重なりあいつつ相容れない関係性だったのではないだろうか。

なんてね。

執筆: この記事は柴 那典さんのブログ『日々の音色とことば:』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年05月21日時点のものです。

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