遠隔操作ウイルス試作痕跡 「開発環境なし」と指摘

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遠隔操作ウイルス試作痕跡 「開発環境なし」と指摘


今回は日本報道検証機構『GoHoo』からご寄稿いただきました。

遠隔操作ウイルス試作痕跡 「開発環境なし」と指摘

【読売】2013/3/23朝刊39面「PC遠隔操作 片山容疑者を起訴 ハイジャック防止法違反など」
【毎日】2013/3/23朝刊29面「PC遠隔操作事件 類似別ウイルス確認 片山容疑者を起訴」
【日経】2013/3/23朝刊43面「ウイルス試作?痕跡発見 遠隔操作、容疑者を起訴」
【東京】2013/3/23朝刊29面「PC遠隔操作で起訴 検察、間接証拠積み上げ」

《注意報1》 2013/3/23 17:00

いわゆるPC遠隔操作事件で、東京地検が3月22日、ハイジャック防止法違反などの罪で片山裕輔さんを起訴したことを23日付各紙が報じました。このうち毎日新聞や日本経済新聞などが、勤務先(派遣先)のPCに遠隔操作ウイルスと類似したウイルスが見つかった、もしくは、遠隔操作ウイルスを試作したとみられる痕跡が見つかった、などと相次いで報じました。

しかし、弁護人の佐藤博史弁護士によると、こうした痕跡がPCから見つかったとの報道について、片山さんは23日午前の接見で「全く思い当たることはない」と話しているとのことです。また、佐藤弁護士によると、派遣先のPCにも片山さんの自宅にも、事件で使われた遠隔操作ウイルスを作成するために必要なソフトがインストールされておらず、いずれの場所も遠隔操作ウイルスを作成できる環境にはなかったとのことです。

各社の報道や佐藤弁護士によると、事件で用いられた遠隔操作ウイルス(iesys.exe、アイシス・エグゼ)は、「C♯(シー・シャープ)」と呼ばれるプログラム言語で作成されているとされています。C♯でプログラムを作成するためにはマイクロソフト社製の「Visual Studio」というソフトが必要で、今回のウイルスは「Visual Studio 2010」で作成されたものとされています。

しかし、片山さんは従前から「C♯を作ってプログラムを作る能力がなかった」と主張しています。しかも、佐藤弁護士によると、派遣先のPCにも自宅のPCにも、「Visual Studio 2010」はインストールされておらず、遠隔操作ウイルスを作成する環境になかったとのことです(派遣先のPCにインストールされていたのはJAVAに対応する「Eclipse」だったということです)。(佐藤弁護士らが作成した3月21日付「意見書(2)」及び3月21日勾留理由開示手続き公判における佐藤弁護士意見陳述。)

佐藤弁護士は、当機構の取材に対し「報道されているとおり、もし派遣先のPCから試作段階のウイルスが見つかっても、PCで作る環境になかった以上、片山さんがそれを作成した証拠にならない。片山さんが真犯人だとする決定的証拠にはならない」と指摘しています。

…捜査当局が立証の柱と位置づけているのが、片山容疑者が勤務先で使用していたパソコンだ。解析の結果、「C♯(シー・シャープ)」と呼ばれるコンピューター言語で試作されたウイルスが見つかった。3事件で使われたウイルスはいずれもC♯で作られており、当局はウイルスを作る能力があったことを裏付ける証拠と見ている。…

(読売新聞2013年3月23日付朝刊39面「PC遠隔操作 片山容疑者を起訴」から一部抜粋)

パソコン(PC)の遠隔操作事件で、片山祐輔容疑者(30)の勤務先のPCから、一連の事件で使われた遠隔操作ウイルス「iesys.exe」と類似する別のウイルスが見つかっていたことが、捜査関係者への取材で分かった。「iesys」と同様に「C#」というコンピューター言語で作られており、他人のPCを遠隔操作するための機能があった。…捜査関係者によると、類似の遠隔操作ウイルスは押収したPCの解析で確認された。合同捜査本部は、片山被告が試作段階のウイルスを削除し忘れていたとみている。…

(毎日新聞2013年3月23日付朝刊29面「PC遠隔操作事件 類似別ウイルス確認」の一部抜粋

パソコンの遠隔操作事件で、IT関連会社社員、片山祐輔容疑者(30)が派遣先で使っていたパソコンに、遠隔操作ウイルスを試作したとみられる痕跡が見つかったことが22日、捜査関係者への取材で分かった。…(略)…捜査関係者によると、片山被告が派遣先で使っていたパソコンを解析した結果、遠隔操作ウイルスに使われたプログラム言語「C#(シー・シャープ)」でウイルスを試作したとみられる痕跡が残っていた。同被告は「C#は使えない」と主張している。…(以下、略)

(日本経済新聞2013年3月23日付朝刊43面「ウイルス試作?痕跡発見」)

…有力な間接証拠として地検が着目したのが、片山被告が勤務先で使っていたPCだった。米国のサーバーに保管されていた遠隔操作ウイルスの解析結果から、ウイルスが片山被告のPCで作成されたことを示す痕跡が見つかったためだ。地検幹部は「PCが片山被告以外の第三者に遠隔操作されていないことを証明できれば、他に真犯人がいる可能性をつぶせると考えた」と話す。特捜部の応援も得てPCの解析に力を注いできた。…

(東京新聞2013年3月23日付朝刊29面「PC遠隔操作で起訴 検察、間接証拠積み上げ」より一部抜粋)

執筆: この記事は日本報道検証機構『GoHoo』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年04月02日時点のものです。

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