自分の記憶にだまされる? フォールスメモリーの恐怖
あなたは自分の記憶にどれくらいの自信があるだろうか? 思い違いや勘違いは誰にでも起こりうるが、まったく事実無根の記憶であるにも関わらず、本人が事実であると思い込んでしまう「フォールスメモリー」という症状があるのはご存知だろうか? 1993年のイギリスで、ある青年がカトリックの高名な神父に「性的虐待を受けた」として訴訟をおこした事件があるが、調査の結果、青年のフォールスメモリであったことが判明した。この事件をきっかけに記憶違いによって起こる訴訟が欧米では数多く報告されるようになったが、訴訟をおこした本人には妄想などの精神疾患はなく、あくまで健常者であることからイギリスやアメリカではフォールスメモリに関する協会まで設立されるようになった。なぜ、「普通の人」がこのような記憶違いを起こしてしまうのか、背景には精神分析や催眠療法などのセラピーが関与していることが考えられている。
フォールスメモリーは①無理やり思い出す②無理やり思い出すために帳尻を合わせるように偽りの記憶を合成する③合成された記憶を事実であると思い込む。という図式で出来上がる。精神分析や催眠療法のカウンセラーは「抑圧された記憶を思い出せば心の不調が治る」という治療理論をもっているので、メンタルに不調を抱えているクライアントに対して、「過去に虐待やいじめ、セクハラなどのトラウマがあった」ということを前提にセラピーをすすめる傾向がある。その結果、過去に何もトラウマが無かったとしても、クライアントの過去に何らかのトラウマがあったかのように誘導してしまう。実際にフォールスメモリーによって訴訟を起こす人たちが精神分析を受けていた例は多い。精神分析を気軽に受けられる土壌がある欧米ならではの症状といえるだろう。
このような実態から近年の研究では、「記憶を思い出すときは歪んだ形で思い出される時があり、本人もだまされることがある」という説は常識になってきている。みなさまも精神分析を受けるときには偽りの記憶を植えつけられないようにご注意を。
写真素材足成より引用http://www.ashinari.com/2011/08/29-349530.php
※この記事はガジェ通ウェブライターの「浅川 クラゲ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。