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「高金利・円安・インフレ」のアナザーワールドにようこそ

「高金利・円安・インフレ」のアナザーワールドにようこそ

今回は橘玲さんのブログ『Stairway to Heaven』からご寄稿いただきました。
※この記事は2013年3月15日に書かれたものです。

「高金利・円安・インフレ」のアナザーワールドにようこそ

本日発売の『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』の「まえがき」をアップします。

「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」 橘 玲(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478024375/

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「強い日本経済を再生する」と宣言した安倍自民党政権の誕生で、「株価や地価が上昇するのでは」という期待と、「なにかとてつもなくヒドいことが起きる」という不安が交錯しています。

安倍首相が信奉する経済政策、すなわちアベノミクスは、どんな手段をとってでも日銀に2%のインフレを実現させる、というものです。

これから実施されるであろう史上例を見ない大規模な金融緩和(リフレ政策)の効果については、経済学者のあいだでも10年以上にわたってはげしい論争(というか罵り合い)が続いています。ある高名な経済学者は、「日銀が市場に大量のマネーを供給しさえすれば日本経済は復活し、経済成長による増収によって財政問題も解決に向かう」と主張します。それに対して別の高名な経済学者は、「デフレは日本経済の構造的な問題で、日銀はすでにじゅうぶんすぎるほど金融緩和をしており、これ以上なにをやっても効果はない」といいます。なかには、「いずれ国債が暴落して財政が破綻し、ハイパーインフレになる」と警告する経済学者もいます。

アベノミクスによって私たちは早晩、この「神学論争」の決着を見ることになるでしょう。いずれの論者が正しくても、そこに待っているのはこれまで経験したことのない新しい世界にちがいありません。

本書では、「アベノミクスによって日本経済はどうなるのか」という問題はいっさい扱いません。神学論争は経済学者にとっては意味があるかもしれませんが、私たちのようなごくふつうの生活者がアカデミズムの迷宮に足を踏み入れたところで仕方がないからです。

大地震や原発事故、戦争や内乱など、未来にはさまざまな不確実性が潜んでいます。経済的な混乱もそのひとつですが、そこにはふたつの大きな特徴があります。

第一に、市場で起きる出来事は将来のシナリオをかなり限定できることです。日本経済の未来には、次の3つに可能性しかありません。

(1) 楽観シナリオ アベノミクスが成功して高度経済成長がふたたび始まる
(2) 悲観シナリオ 金融緩和は効果がなく、円高によるデフレ不況がこれからも続く
(3) 破滅シナリオ 国債の暴落(金利の急騰)と高インフレで財政は破綻し、大規模な金融危機が起きて日本経済は大混乱に陥る

ふたつめは、経済には強い継続性(粘性)かあることです。

仮に(3)の「破滅シナリオ」が現実のものになったとしても、それは次のような順番で進行するでしょう。

第1ステージ 国債価格が下落して金利が上昇する
第2ステージ 円安とインフレが進行し、国家債務の膨張が止まらなくなる
最終ステージ(国家破産) 日本政府が国債のデフォルトを宣告し、IMFの管理下に入る

書店に行けば「国家破産」のタイトルのついた本が並んでいます。日本国が抱える1000兆円の借金を考えれば、誰も財政破綻の可能性を否定することはできません。

しかしここで指摘したいのは、別の単純な事実です。“危機”は第1ステージから第2ステージ、最終ステージへと順に悪化していくのですから、ある朝目覚めたら日本円が紙くずになっていた、などということはぜったいにありません。

だとすれば私たちは、いたずらに「国家破産」を心配する必要はありません。仮に日本国がデフォルトするとしても、それまでの間に自分と家族を守るための時間はじゅうぶんに残されているのです。

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