優越感と劣等感は非対称

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優越感と劣等感は非対称

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

優越感と劣等感は非対称

よくネットでの匿名の議論を不毛なものとして批判する時に、「そんなことをしてなんの意味があるのか?ただ優越感に浸りたいだけではないか?」ということを言う人が少なくない。少なくないどころかこれが唯一かもしれない。

一見なんの役にも立たないことを人間はよくやるのだけど(草野球だったり趣味の園芸だったり)、なぜかネットの議論だけが「なんの役に立つのか」「なんの意味があるのか」と批判される。不思議なことだ。

たとえば負けると悔しくて不快なだけなのに、なんでわざわざ草野球の試合をするのか?とか批判すればいいのに。

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で、優越感云々という人は、たぶん自分が抱いた劣等感の裏返しで、「(自分が劣等感を抱いた分だけ)相手は優越感を抱いているはず」と考えるのだろう。だから優越感のために議論をするのだ、と結論づけるわけだ。

そうかもしれないしそうでないかもしれない。そもそも優越感とか劣等感というのは曖昧だ。そんなことを言い出したら、他人に親切にするのも優越感のためだとか、先生が生徒に勉強を教えるのも優越感のためだとか、先生という職業を選んだこと自体が優越感に浸りたいためだとか、なんでも言えてしまう。

ようするに何でも結び付けられる理屈い意味はない。

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ところが劣等感は優越感ほど曖昧ではないような気がする。劣等感を感じるケースというのは比較的明確だ。すなわち対等だと思っていた相手が、対等ではなく自分より上だと認識することを「劣等感を感じた」と表現するのだ。

優越感の場合たしかにその逆(対等だと思っていたら自分の方が上だった)のケースもあるにはあるだろうが、なんかちょっと違うような気がする。だいたい人間は本当に対等な相手を対等だとは思わないものだ。自分の方が優れていると思っている(笑)。

むしろ明確な優越感というのは、第三者に認められた場合に感じるのではなかろうか。テストで相手よりもいい成績を取ったとか、何かで表彰されたとか、昇進したとか。

劣等感もそういうケースで感じるけれど、もっと他のケースでも感じる。劣等感を感じるのになぜか第三者は不要だ。お手軽!

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人はわざわざ劣等感を感じるために何かするのではないように、優越感を感じるために何かするというのは違うと思う。劣等感も優越感も結果的に意図せざる状況でもたらされるものだ。

まあ普段、対等のはずの相手を「自分の方が優れているはず」と思っている分だけ、劣等感は感じやすいのかもしれない。ガラスのようにもろい虚栄心。

でまあ、自分が相手に劣等感を感じている時、必ずしも相手は優越感を感じてはいないことが多いと思う。双方とも「自分が買って当然」と思っているので、勝ってもさほど優越感は感じないが、負けた時は予想外の劣等感のダメージを受ける。

だから「○○するのは優越感を感じるためだ」とか安易に批判すると、結局自分の虚栄心をさらけ出すことになってしまうと思うのだよね。

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他人を馬鹿にするのも優越感のためだという人が少なくない。これも劣等感を感じる側の理論のような気がする。俺はよく議論で相手を馬鹿にするけど、それで優越感を感じることはない。優越感というものが心地よいものであるとするなら、相手を馬鹿にした時まったく心地良くない。

馬鹿にする背景にあるのは相手への失望感だろう。ぜんぜん心地よくないぞ?まあその時相手は劣等感を感じているかもしれないけど、馬鹿にした側に優越感はない。

馬鹿にするのは優越感のためという理屈を繰り出す人は、きっと自分は優越感なんて感じたことがないから、自分は相手を馬鹿にしていない、という理屈なのかもしれない。いやいや、あなたも他人を馬鹿にしてますってば。そもそも「優越感のためだ」とかいう考えが他人を馬鹿にしている。

「馬鹿にする=優越感のため」という幼稚な思考から抜け出せば、いろいろな見方が変わると思うんだけどね。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年03月19日時点のものです。

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