【ショートコラム】一生食べ続けられるフリーランスの条件
今回は山本繁さんのブログ『NPO法人NEWVERY山本繁のパーソナル・ブログ』からご寄稿いただきました。
【ショートコラム】一生食べ続けられるフリーランスの条件
私の両親はフリーランスでした。30年以上二人のフリーランスを見て来た彼らの一生から、教訓めいたものを抽出しようと試みました。才能ある若いフリーランスの方々やこれからフリーランスを目指す方々の少しでもお役に立てば幸いです。
◎一生食べ続けられるフリーランスの条件
ノマドやフリーランスになりたい人は潜在的に多いように思います。私の両親は二人ともフリーランスでした。ここで、私が両親を見ていて学んだある事実を皆さんと共有したいと思います。
<フリーランスの20代>
若い人がフリーランスとして成功するのに、最も重要なことは何だと思いますか?
「年上から好かれること」
ではないかというのが、30年以上観察してきた私の結論です。
フリーランスの仕事というのは、仕事を発注してくれる人がいなければ成立しません。その発注してくれる人、つまり予算や決済の権限を持っている人は、20代の時は大抵年上です。BtoBの場合は特にそうでしょう。取引先の人(年上)に気に入られるのは最も重要なことです。
また、20代ではスキルはそれほど違いがありません。20代同士では微々たる差に優越感や劣等感さえ抱くことがあるかもしれませんが、4,50代の人から見れば微々たる差です。それよりも、これから長く一緒に仕事をしていきたい人間かどうか、ということの方が重要です。それにはやはり人間性や性格的な一致・不一致がポイントになります。
というわけで、年上に好かれないタイプの人・仕事をもらいづらいタイプの人は、そもそも20代でフリーランスになるのはあまり向いていないといえるでしょう。(芸大ではもっとこういう教育・トレーニングをすべきです。)
<フリーランスの30代>
20代を乗り切ったあとの30代はフリーランスにとって最も幸福な時期です。実力も付き、実績も生まれ、業界ではちょっとした(かなりの)有名人。ギャラも年々上がっていきます。
40代以降の話に関連するので、ここで少しうちの両親の話をしておきます。父は18歳で弟子入りして以来、CMカメラマンを助手からずっとやってきました。50代で廃業するまで。30代はバブルまっさかりということもあり、また、業界でトップクラスの仕事をさせてもらっていたようなので、マンションのローンは2年で返しています。月のお小遣いは50万円以上。区の高額納税ランキングにも載ったことがあります。(後日廃業するんですけどね。)
母は元々ヘアメイクで、20代の後半でニットのデザイナーに転身します。父とはヘアメイク時代に職場結婚。今年60歳。今も現役のニットデザイナーです。
<フリーランスの40代>
40代はフリーランスにとって分岐点です。我が家の場合で言えば、父は徐々に仕事が減り、アルコールやギャンブルに逃げ始めました。母は着実にポジションを築き、その地位を維持し続けました。
この違いは、本人の変化と、環境の変化への適応という2つの変化に由来するというのが、私の理解です。
本人の変化とは、幸福な30代を過ごした結果、天狗になる人と、謙虚な姿勢を持ち続ける人の違いです。そうでなくても、人は年を取るにしたがってわがままになっていきます。30代にあげた実績もあり、その分周りからは少し関わりづらい人(気を使わなくてはいけない人)になります。ここで謙虚でい続けられるかどうかが、今後の分かれ道の1つです。
もう一つ。これが今日一番伝えたい情報です。
40代中盤くらいを境に、仕事をくれる人たちとの関係が逆転します。仕事を持っている人(発注してくれる人)の年下率が圧倒的に増えるのです。
ズバッといいます。年下から好かれないフリーランスは、40代で頭打ちになり、徐々に仕事を失います。うちの両親の最大の違いは、この点でした。
父に仕事をくれた電通や博報堂、東北新社、サンアドなどのプロデューサーは、父が40代に入ったころから現場から距離を取るようになりました。多くは管理職になっていったのです。
結果、父よりも若いプロデューサーが増え、父はギャラは高いし、気を使うし(煙たいし)、ということで敬遠されるようになりました。プロデューサーも自分より若いカメラマンを使いたいと思ったのでしょう。
また、父は徐々に横柄になっていたので、30代の頃、まだアシスタントプロデューサーだった代理店や制作会社の20代の人たちを、あまり大事にしませんでした。
年上からは好かれることで一時代を築いた父でしたが、年下から好かれない、一緒に仕事をしたいと思ってもらえなかったことで、徐々に仕事を失っていったのです。
だから私が今日言いたいことは、フリーランスの方は、20代、30代の頃から、年下には丁寧に接するということです。やがてその人たちが客先でヘッドになります。また、年下から慕われる人間になれるように、日々自己研さんと自己抑制を忘れないということです。
<フリーランスの50代>
年下から仕事がもらえないフリーランスは、50代前半で最悪失業します。今はもっとそれが早まっているかもしれません。本当に今若くて才能あるフリーランスの人たちが、そうならないように祈るばかりです。
父は専門学校等で教えた後、50代前半でタクシーの運転手になりました。マンションのローンを2年で返していた、世界100ヶ国を撮影で旅した人がです。
母は、今年60になりますが、何年も前から「もう目も辛いし仕事を辞めたいのだけれど」と言っています。しかし、「あと1年お願いします」と言われ続けて、仕事を辞めさせてもらえないのです。母は謙虚にずっとやってきて、年下にも好かれ(その代り我慢もしています)、60代でも仕事が途切れません。
これが私が物心ついてから30年以上見て来た景色と、そこから学んだことです。
若いフリーランス志望者や、フリーランスの方の少しでも参考になれば幸いです。
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執筆:この記事は山本繁さんのブログ『NPO法人NEWVERY山本繁のパーソナル・ブログ』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年2月28日時点のものです。
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