体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

注文の多い料理店―院生編

注文の多い料理店―院生編

今回はFumiaki Nishiharaさんのブログ『Colorless Green Ideas』から転載させていただきました。

注文の多い料理店―院生編

概要
キャンパスの外れをさまよっていた院生が見つけた研究室。そこには「当研究室は貢献の多い研究室ですからどうかそこはご承知ください」という文言。この研究室は一体?

本文

二人の若い院生が、いっぱしの研究者きどりで、キャンパスの奥深くの、人気の少ないとこを、こんなことをいいながら、あるいておりました。

「ぜんたい、ここらの研究室はけしからんね。研究費もろくにもってやしない。なんでも構わないから、金の心配なしに、実験をやってみたいもんだなあ。」

「実験に使ったマウスをガスバーナーで焼いて、大学生協で買ってきた焼き肉のタレをつけて食べたら、ずいぶん痛快だろうねえ。かりかりと焼けて、それからぐいっとビールを飲めるだろうねえ。」

それはキャンパスのだいぶ奥でした。案内してきた万年助手も、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの奥でした。

風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。

「どうも業績が足りない。前からろくな研究もしていないんだ。」

「ぼくもそうだ。もうあんまりめんどうな実験もしたくないな。」

「したくないよ。ああ困ったなあ、何か楽に業績がかせげる研究室があればなあ。」

「あればなあ。」

二人の院生は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。

その時ふとうしろを見ますと、ブレハブの建物がありました。

そして入口には

RESEARCHER WANTED
研究者求む
WILDCAT LABORATRY
山猫研究室

という札がでていました。

「君、ちょうどいい。ここはこれでちゃんと研究室があるんだ。入ろうじゃないか。」

「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か研究ができるんだろう。」

「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか。」

「はいろうじゃないか。ぼくはもう業績がほしくてしかたないんだ。」

二人は入口に立ちました。そしてガラスの開き戸があって、そこにこう書いてありました。

「学部生・院生・ポスドクの方、どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。」

二人はそこで、ひどくよろこんでいいました。

「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、最近はなんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。ここは研究室だけれどもただで実験させてくれるんだぜ。」

「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」

二人は戸を押して、なかへ入りました。そこはすぐ廊下になっていました。その戸の裏側には、こう書いてありました。

「ことに実験が得意なお方や熱心に研究して下さるお方は、大歓迎いたします。」

二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。

「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」

「ぼくらは両方兼ねてるから」

ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキ塗りの扉がありました。

「どうも変な研究室だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」

「これはロシア式だ。研究の秘密をしっかりまもりたいとこはみんなこうさ。」

そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう書いてありました。

「当研究室は貢献の多い研究室ですからどうかそこはご承知ください。」

「なかなか学術に貢献しているんだ。こんな場所で。」

「それあそうだ。見たまえ、海外の大きな研究室だって、いなかにあるだろう。」

二人はいいながら、その扉をあけました。するとその裏側に、

「貢献はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」

「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの院生は顔をしかめました。

「うん、これはきっと学術に関する貢献があまり多くて毎月のように英語で論文を書かないといけないけれどもごめん下さいとこういうことだ。」

1 2次のページ
生活・趣味
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。