知ってる? ヘルニアで食道ガンになる?!
「ヘルニア」といえば“腰椎椎間板ヘルニア”を思い浮かべ、「腰痛の事ね」と思っている人、意外と多いのではないでしょうか。しかし、「ヘルニア」とは「臓器が正しい位置からずれてしまい、場合によっては飛び出してしまった状態」のことを言うので、腰の症状とは限らないのです。俗に言う“脱腸”も、「腸が腹膜から脱出している」ヘルニアなんですよ。
さて、“食道裂孔ヘルニア”をご存知でしょうか? 筆者の私事ではありますが、先日胃カメラを飲み「食道裂孔ヘルニア」と診断されました。この症状、“ヘルニア状態”なだけでは何の自覚症状も現れないのですが、逆流性食道炎の原因となり、慢性化させてしまうと胃ガンや食道ガンの原因ともなる、怖い現象なんです。
“食道裂孔ヘルニア”とは?
通常、胃は横隔膜の下にあり、口から降りてきた食道が横隔膜に開いている穴を通過して胃とつながっています。この穴が「食道裂孔」。
そして、横隔膜に締め付けられる感じで、胃と食道の境目が閉じています。この境目を「噴門」といいます。
ところがこの食道裂孔が緩んでしまうと、噴門は開きっぱなしになり、胃が横隔膜の上にはみ出してしまいます。
【食道裂孔】から胃が胸側へ【はみ出す】、この状態が“食道裂孔ヘルニア”なのです。
症状
“食道裂孔ヘルニア”になっているだけでは、“ヘルニア状態だ”というだけで、特に症状はありません。しかし、胃が胸側へ脱出していることで胃酸の逆流が起きやすくなるため“逆流性食道炎”などになりやすく、その症状で受診して、ヘルニア状態を発見されることが多いのです。筆者もまさしくそのパターンだった訳です。
逆流性食道炎の三大症状といえば、
1. 胸焼け
2. 胸痛(胸骨の裏側が圧迫されるような痛み)
3. つかえ感
「なんとなく食欲がない」とか「甘いモノが食べられなくなった」と感じる人もいるようです。
症状を特に強く自覚するのは、
・寝ている途中や起床時(寝た姿勢で胃酸が逆流しやすく、食道に炎症を起こすため)
・食後しばらくした時
・酒・タバコ・コーヒー・ココア・チョコレート・油物などを摂った時
など。
また“食道裂孔ヘルニア”では、噴門が閉じていないためゲップが多くなり、屈んだ姿勢やお腹を締め付けるような衣類を着たりすると、胃酸の逆流が起こって“逆流性食道炎”の症状が現れます。
治療
ヘルニア自体は、軽度であれば特に自覚症状を起こさず、特別な治療も必要としません。しかし、逆流性食道炎などの原因となり、食道の炎症が慢性化すると食道ガンや噴門ガンの原因ともなるので、脱出を起こさないように日常生活で注意する必要があります。
・食後すぐ横にならない
・胃液の逆流を防ぐため頭部を高くして寝る
・肥満を予防する
など。
逆流性食道炎などの症状がある時は、自覚症状に応じて胃酸を抑える薬等が処方されます。
内科的治療法で改善が見られなかったり、脱出状態が重症な場合は外科的手術を施すことになります。重症の場合、胃の半分以上や、時には全体が、脱出してしまうこともあり、呼吸器循環器障害を発症することとなります。
また稀ですが、脱出の形態が「傍食道型」という、“食道は元の位置のまま、胃のホッペタが食道のわきを通ってはみ出している”ような状態だと、横隔膜に挟まれるため出血したり、血の巡りが悪くなったりします。より危険度が高く、自然に治癒する事は難しい事や、合併症を未然に防ぐなどの理由で、手術で治すことが多いようです。
原因
“食道裂孔ヘルニア”には、生まれつき食道裂孔が緩い「先天性」と、加齢とともに進む「後天性」があります。この記事で話題にしているのは、大人に現れる「後天性」。
後天性の場合、加齢によって横隔膜裂孔の靭帯が、弱くなったり伸び切ったりして、噴門部の固定状態が悪くなるためではないか、と言われています。喘息や慢性気管支炎など咳の出るような慢性病を持っている人、肥満や妊娠、嘔吐などでも腹圧が上昇するので“食道裂孔ヘルニア”になりやすいようです。
そこのお兄さん! 散々飲んだ挙句に吐いたりして、胃や食道裂孔をイジメてませんか? 加齢とともに、身体を支える機能が緩んでくるのは、誰にでもあることです。しかし「よくあることだから……」とウヤムヤにしていると、取り返しの付かない病気にまで発展してしまう危険性をはらんでいます。
「よく胸焼けになるな」「ゲップがやたら出るな」「ベルトをキツく締めるとお腹が痛いな」「息苦しいな」など思い当たる点があれば、早めに胃腸科・消化器科を受診することをおすすめします。
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