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問題は「格差」ではなく「貧困」(そして「非正規」ではなく「不景気」)

問題は「格差」ではなく「貧困」(そして「非正規」ではなく「不景気」)

今回はarnさんのブログ『A.R.N [日記]』からご寄稿いただきました。

問題は「格差」ではなく「貧困」(そして「非正規」ではなく「不景気」)

ドワンゴ取締役などを務める夏野剛氏の格差論騒動もあり、格差論争がまた熱く語られはじめました。(反論という形であっても)生活に苦しむ人々の声がトピックスとして上がってくる事自体はとても良いことだと思うのですが、どうも旧態依然な左派的な考えで語る人が多く、論点に違和感を感じることがしばしばあります。

そのひとつが「不景気」から発生する(短期の)問題と「構造問題」から発生する(長期の)問題との混同です。苦しい人には金や仕事を渡せ、というのはその通りかもしれませんが、通常の経済状態であれば苦しまなくても済むのであれば、そもそもの話として通常の経済状態にすることを目指すべきであって、助けると言っても一時的な支援に留める必要があります。一方、構造的に貧困の発生が不可避であるならば、永続的な支援が必要となります。

前者の通常の経済状態であれば特に支援が必要ではない問題の最たるものが「失業」です。景気が良ければ、仕事はある程度選べるようになります。今でこそブラック企業が横行していますが、労働市場の需給が逼迫してくれば、劣悪な労働環境の職場には自ずと人が集まらなくなり企業としても状況を改善せざるを得なくなります。

このように考えていくと「非正規」の何が問題なのか、という話になってきます。なぜなら、もし「非正規雇用」と「正規雇用」のどちらでも自由に選べるのであれば、それは単なる個人の自由意志の問題に他ならないからです。実際、過去にはフリーター=自由な新しい生き方としてポジティブに捉える時代もありましたし、非正規雇用は正規雇用に比べ景気から賃金への波及が素早くかつ大きいため好景気が続けば非正規雇用の方が手っ取り早く高収入を得られるため、サラリーマンから自由業に移る人も多くなります。

現状の問題は、「非正規雇用」という選択肢しかない(あるいは「非正規雇用」か「ブラック正規雇用」という選択肢しかない)という不景気特有の状況が続きすぎたが故に起こっているとも言えます。そうであれば、素直な解決策は景気を良くすることであって、決して「非正規」を制限することではありません。「非正規」という概念を無くしたところで、全体の労働需要が変化しない以上、失業者が増加し「普通の正規/ブラック正規」という区分けに変わるだけでしょう。

それでは「格差」はどうでしょう。格差は必ずしも景気状況に左右される問題ではありません。アメリカのように景気が良くとも格差が広がるケースはあります。格差については、むしろ「日本は格差が大きいのか」が問題となります。

格差の指標としては「ジニ係数」が有名です。では、日本のジニ係数がどうなっているかと言えば、「所得格差の長期推移」*1を見ればわかるように徐々に上昇してきています。この事実をもって、日本は格差が拡大している! と主張される方がいますが、これは早合点のように思います。なぜなら、ジニ係数は少子高齢化の状況では大きめの値になってしまうという問題があるからです。

*1:「図録 所得格差の長期推移及び先進国間国際比較」 『社会実情データ図録 Honkawa Data Tribune』
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4660.html

これは「年齢階級別のジニ係数」*2を見るとわかりやすいのですが、人は年齢が上がるにつれてそれまでに培った人生経験に応じて所得の差が当然大きくなるので、高年齢になるにつれて格差が大きくなる傾向にあります。そのため、少子高齢化が進むと、格差が大きい高齢者が増えて、格差の少ない若年者が減る結果、ジニ係数は大きくなってしまうわけです。これは、格差の増加と言ってもライフサイクルにおける必然であって問題視すべき格差ではありません(当初所得におけるジニ係数悪化*3も同じ原因によります。ほとんどの高齢者は定年後所得がなくなるため、全体としてはジニ係数が悪化していきます)。

*2:「図録 各年齢層の所得格差の推移」 『社会実情データ図録 Honkawa Data Tribune』
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4665.html

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