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最低賃金を2倍にすると何が起こるか

最低賃金を2倍にすると何が起こるか

今回はRootportさんのブログ『デマこいてんじゃねえ!』からご寄稿いただきました。

最低賃金を2倍にすると何が起こるか

さあ、新聞記者にはできないくらい突飛なことを書こう。学者にはできないぐらいバカげたことを考えよう。なぜなら私はブロガーだからだ。

想像してほしい。最低賃金を時給1,700円に引き上げて、アルバイトにも社会保険や有給休暇を徹底し、サービス残業は完全禁止、ちょっとした違反でも厳しく取り締まる……。そんな世の中になったら、いったい何が起こるだろう。最近では「雇用流動化」を旗印に、労働者の賃金は引き下げられる一方だ。では、それに逆行してみたら、どんな世の中になるだろう。

「誰の賃金が下がったのか? または国際競争ガーの誤解」2012年09月10日『hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)』
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-0c56.html

こちらの記事では、経済産業研究所の「サービス産業における賃金低下の要因」というディスカッションペーパー*1を紹介している。この資料によれば、国際競争に巻き込まれているはずの製造業よりも、むしろ国内的なサービス業(※とくに小売業、飲食業、運輸業)で賃金の下落が進んでいるらしい。原因は非正規雇用が増えたこと、そして(※パートタイムが増えたのだから当然)労働時間が抑制されたことだという。

*1:独立行政法人経済産業研究所 『サービス産業における賃金低下の要因 ~誰の賃金が下がったのか~』
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/12j031.pdf

これはとても興味深い。

たとえばフィリピンではBPO分野が急成長しており、世界中の企業の管理部門やコールセンターが集まってきているらしい。またマレーシアのインド系住民は、かつて貧困に苦しめられていたが、最近では“裕福なインド人”が増えている。大陸からITエリートたちが移住してきているそうだ。

IT技術者や会計、経理などの仕事は、激しい国際競争にさらされている。グローバル化で賃金が下がるのはこういう分野であるはずだ。富山県のジャスコでレジを打っているのは富山県民であって、マニラやセブ島の住人と競争になるわけがない。

「グローバル化」を敵視する人がいるのは、それが賃金を引き下げるための“方便”として使われているからだ。世界の経済格差が緩和されるのは、本来なら望ましいことだ。人道的に正しいというだけでなく、消費者が増えて市場が拡大するという意味で、経済的にもすばらしい。にもかかわらず「グローバル化」という言葉に苦々しい気持ちを覚えるのは、国内の格差拡大に正当性を与える言葉として利用されているからだ。この言葉を盾にして、グローバル化とは全然関係ない人たちの低所得化が進んでしまった。

ここで冒頭の疑問が浮かんでくる。

もしも最低賃金を大幅に――たとえば時給1,700円に――引き上げたら、どんなことが起こるだろう。アルバイトにも社会保険や有給休暇を徹底し、サービス残業は完全禁止、ちょっとした違反でも厳しく取り締まる……。いわゆる「雇用流動化」とは相反することをしたら、どんな世の中になるだろう。

まずは地方に目を向けてみよう。

国道沿いのジャスコやスタバ、マクドナルドのなかでも、収益性の低い店舗は次々に閉店するだろう。人件費が高すぎて儲けを出せないからだ。人口密度のとくに低い地域では“郊外型店舗”さえもなくなり、モノも仕事もなくなる。本格的に人が暮らせない場所になる。そして住民たちは近隣の都市部へと移住する。

生活のコストは分散して暮らすほどが高くなり、密集するほど低くなる。人々が都市部に集まれば、もはや山を切り崩して余計な道路を作らなくてもいいし、水道管や電線も必要最低限で済む。自然環境にも行財政にも優しいのだ。さらにモータリゼーションとファスト風土化で分断された人間関係が、人口密度の高い地域では復活している。

また地方から都市部へと脱出した人々のなかには、相当数の農業従事者がいるだろう。が、自分たちの農地をタダで手放すわけがない。耕作放棄をするのではなく、野心的な生産者へと貸し出すなり売りつけるなりするだろう。こうして資本集約的で現代的な農業が可能になり、生産規模は現在よりもはるかに大規模になる。日本の農産物の価格は下落して、国際的な競争力を取り戻せる。

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