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「信頼できない話は大声でやって来る」 科学者、菊池誠さん<「どうする?原発」インタビュー第6回>

「デマ」や「トンデモ」に警鐘を鳴らす科学者、菊池誠さん

 2011年3月の福島第一原発の事故以降、放射線に関するさまざまな情報が飛び交った。「内部被曝で鼻血が出た」「先天性異常の赤ちゃんが生まれる」……。その多くは、不正確なデータや出どころ不明のデマだったが、ツイッターなどネット上であたかも真実のように拡散してしまったケースも少なくない。

 そうした情報を「真実ではない」と、指摘し続けてきた科学者がいる。大阪大学サイバーメディアセンター教授、菊池誠さんだ。専門は物理学だが、以前から科学的立場を装ったオカルト情報「ニセ科学」に対して警鐘を鳴らしてきた。日々、マスコミやネットから押し寄せてくる無数の情報の中から、私たちは一体、何を信頼したらいいのか、菊池さんに聞いた。

(聞き手:亀松太郎)

■「あなたの鼻血は被曝ではない」と誰かが言うべき

――菊池さんがニセ科学には関心を持つようになった経緯は?

 もともと、変な話は好きだったんです。最初は単に好きなだけだったんですが、1995年にオウム真理教事件がありました。そのオウムで科学技術省のトップだった村井秀夫は僕が勤めている大阪大学で物理学科の大学院を出ていた。つまり、科学の専門教育を受けたはずの人が超能力を売り物にするカルトの中で科学をやろうとしたわけで、それはどういうことなのかを考えるようになりました。

 それから数年後に、江本勝の『水からの伝言』という著作が小学校の道徳教育に使われているのを知り、「これはいくらなんでもまずい」と思って積極的に発言を始めました。2000年代に入ってからです。

――それから10年くらい経って、今回の震災が起き、いろいろな情報が乱れ飛びました。デマや科学データに基づかない発言に対して、何か言わなきゃというのは、ニセ科学と共通する部分があるんですか?

 共通するところはあります。放射能に関するおかしな情報といっても、学説ではあるものの認められていないマイナーなものから、完全なトンデモまで幅がありますよね。科学的には完全におかしな話を耳にして、それで怯えているような発言がツイッターなどで見つかります。そうするとやっぱり、「それはないよ」って誰かが言っておいた方がいいんじゃないかなと思うわけです。

たとえば、低線量の被曝なのに、事故直後から「放射能の影響で鼻血を出している人がいる」って言い張る人がいた。だけどこれはさすがにありえない。これは被曝の影響についての常識的な知識がある人なら誰でも否定できる話です。

――放射線の影響がただちに鼻血につながったということは?

 ありません。それは言える。被曝の急性症状が出るのは高線量の被曝をした場合です。鼻血が出るほどの被曝をしたら、鼻血以外にも症状が出ているはずです。だけど、福島原発事故でそんな高線量の被曝をした人はいません。そういう明らかにおかしなことを言うひとにぎりの人達がいて、それを聞いて不安に感じる人達がいるっていうのが嫌なんです。不安になるのはわかるし、心配したほうがいいこともあるけど、この鼻血問題に限れば放射能の影響とは関係ない。だから、そういう不安に対しては「鼻血は被曝の影響ではありません」と言った方がいいと思うんです

■ガイガーカウンターが間違っているケースも

――なるほど。積極的になったきっかけはありましたか?

 特定の何かというよりは、細かいことがいろいろあったのですが、今挙げた鼻血の話が出てきたときには仰天しました。それから、ガイガーカウンターの使い方の問題もあった。「ガイガーカウンターを持って測りにいったら、ここで凄く高い線量が出ました」っていう話がネット上にたくさん出るじゃないですか。高エネルギー加速器研究機構教授の野尻美保子先生や、東京大学大学院教授の早野龍五先生のツイートを見たり、ほかにもいろいろな方と議論したりして、どう考えても測り方がおかしい例が多いことがわかりました。

 ガイガーカウンターは不適切な測り方をすると正しい数値がでないのですが、その場合は実際よりもずっと高い数値が出るケースが多い。それはまずいと思いました。単に高い低いって比較するだけならまだいいんだけど、数値の評価をしちゃうじゃないですか。そうすると数値がある程度正しくないとだめですよね。

――ただ放射能って目に見えなければ、匂いも何もないし、そういう機器に頼りたくなるということなんでしょうね。震災直後は、公的機関の調査も全面的に行われていたわけじゃないんで、やっぱり自分の手で知りたい、調べたいっていう、そういう不安に基づいた気持ちっていうのは自然なのかなと。

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