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【原発20キロ圏内のリアル】拳銃と実弾を所持――「すべてを懸けて生きのこる」楢葉町復興計画副委員長に有罪判決

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渡辺興業「すべてを懸けて生きのこる」

「拳銃所持で逮捕された楢葉町 復興計画委員会副委員長」が経営する渡辺興業へ行ってみた

判決、懲役3年執行猶予5年ーー。
本日8月1日、東京地方裁判所701号法廷で行われた判決公判で、裁判長が読み上げた判決文だ。

福島県双葉郡楢葉(ならは)町は、東京電力福島第二原発と、作業員の前線基地であるJビレッジがある町。
国道6号線、広野町と楢葉町にまたがるJビレッジ前に設けられている警戒区域の検問を通過して600メートルほど進むと、渡辺興業の敷地と建物が見える。

この「渡辺興業」社長、渡邉征(68=懲役3年執行猶予5年)と、息子で同社企画部長の啓(41=懲役3年執行猶予4年)が、銃刀法違反で警視庁組織犯罪対策5課に逮捕された。

征は、町の復興計画副委員長をつとめ、同社は町内での除染作業の業者指名も受けていたが、この事件により全ての役職を解任され、同社も福島県からの9ヶ月間の指名停止を受けた。

検察の冒頭陳述によると、征は、楢葉町商工会長や漁業組合長などの立場から、町の復興計画に関わっていたが、昨年5月、復興資金を受け取る計画を持ちかけてきた東京の暴力団関係者Aと頻繁に会うようになり、今年2月、Aから拳銃一丁と実弾5発を受け取った。その拳銃を、長男啓は震災後にいわき市内に新設した会社の机の引き出しに保管していたのだという。

「(暴力団員Aらが持ちかけてきた復興支援金の申請計画は)被災地の漁業組合が対象ですでに30くらいの漁協が受け取っている。アメリカ大使館と、皇室つまり天皇、それから農林水産省から、500億から300億くらい資金が出ると(暴力団員Aらから)聞きました」

7月3日の初公判での征の発言である。

もちろん、アメリカ大使館や皇室が復興支援金を漁業組合などに対して支援金を交付していた事実はない。
つまり、征は復興支援金詐欺に引っかかったわけだ。

父親征から拳銃を預かった息子の啓は、「オヤジ、復興支援金の話は詐欺だから関わるな」と再三警告していたのだと初公判の法廷で語っていた(啓は初公判時はすでに保釈済)。

征は楢葉町民でもある別の暴力団員から500万円を借り受けてAに手渡した以外はまとまったカネを巻き上げられた事実は裁判では出てこなかった。

なぜ、拳銃を受け取ったのかは、初公判で征本人の口からこう説明された。
「皇室や、農水省、アメリカ大使館などからもらえる復興支援金の申請のためのやり取りを何度もAらと重ねて来て、ようやく交付にこぎ着けられそうだという感触をAらからの報告で受けていた。そんな矢先に、Aとその仲間のHというブローカーとの間で金銭トラブルが起こった。それ以降、Aは頻繁に『Hはオレのことを舐めている。オレは普通の人間とは違う。チャカだって持っている。Hのことをぶっ殺してやる』と口走るようになった。AやHらと一緒に動いたことで、楢葉町に支援金が降りる目前だと理解していたので、仲間割れの結果刃傷沙汰になるのは避けたいと思い、500万円を楢葉町民の暴力団員Yから借り入れて、Aに渡してやる代わりに『チャカ』は取り上げてやらないとならないと思った」

記者は法廷で傍聴していて、啓が言うように、詐欺に巻き込まれたものだと理解したが、征本人はそれに気がついている様子が見受けられなかった。同じ感想を持ったのか、検察官は征のこの証言を受けて、法廷でこう質問した。

「あなた、今何故この席に座らされているかわかりますか。大きな詐欺に巻き込まれて、拳銃つかまされて、それでここにいるんですよ」

検察による求刑は3年。
征は初公判の翌日に保釈されている。

渡辺興業

町関係者によれば、征は、震災後、拳銃所持で逮捕されるまで数千万円もの借金を重ねたのだという。
現在、避難先のいわき市内に設けた臨時事務所の看板は降ろされ、開店休業状態になっている同社だが、楢葉の町民の一人はこう言う「以前から強引な仕事の仕方で反感を覚えている人たちは多かった。立場を利用して金を借りたりすることが震災の後に目がついたので、会長は山師の気質だったから、なんかあるんだろうと思っていた。執行猶予になって、現場復帰したとしても仕事は来ないだろう。もう、あの会社は終わりだ」

警戒区域の検問を通過し、国道6号線を600メートルほど北上した場所にある、渡辺興業へ行ってみた。同社の窓ガラスには「みんな笑顔でワッハッハ」という標語が掲げられ、同社の庭先の手作りの看板にはこんな言葉が掲げられていた――

 「すべてを懸けて生きのこる!!」

町民からの信用を完全に失った渡辺興業の生き残る道を、征は見いだすことはできるのだろうか。

渡辺興業「すべてを懸けて生きのこる」

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※「原発20キロ圏内のリアル」は、福島第一原発警戒区域20キロメートル圏内の現在の姿を写真とともにお届けする連載企画です。

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記者:

連載「原発20キロ圏内のリアル」で福島第一原発警戒区域20キロメートル圏内の現在の姿を写真とともにお届けします。

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