ツイッターでの心無いつぶやき 乙武洋匡さんの本音は?
『五体不満足』で注目を浴び、スポーツライターや教師など幅広い分野で活動をする乙武洋匡さんと、斬新な創作活動で脚光を浴びる書道家・武田双雲さん。この二人に共通することは“超ポジティブ”な人間であることだ。
常に自然体な乙武さんに、豪快に笑顔を振りまく双雲さん。そんな最強の二人がなんとタッグを組んだ!?
主婦の友社より出版されている、『だからこそできること』(乙武洋匡、武田双雲/著)は、教育談義を起点に乙武さんと双雲さんの生き方や考え方があますことなく語られた一冊だ。もともと面識がなかった二人だが、双雲さんが突然ツイッター上乙武さんに「教育談義をしましょう!」と呼びかるというまさに“破天荒な”きっかけから、震災や武田さんの病気などもありながら、約1年間にわたり対談を重ねてきた。
そして7月2日には本書の出版を記念し、丸善丸の内本店で公開対談イベントを開催。台本がまったくない二人のトークは大いに盛り上がり、予定の1時間を大幅に過ぎた1時間30分もの間、会場は爆笑の渦に飲み込まれた。
さて、乙武さんといえば、ツイッターでの心無い一言に対する、とんちの利いた返答が話題だが、実際に乙武さんはそうした声をどのように感じているのか? イベント内で双雲さんが深く切り込んだ。
◇ ◇ ◇
双雲「乙武さんの気持ちよさは、嫌われることを厭わないというか。それって一番すごいことだと思う。俺、嫌われるのが嫌なんですよ。100人中100人に好かれたい」
客席「ああ〜(納得)」
双雲「(乙武さんに)なんでそういう風になったんですか? すごい批判もくるけど、へっちゃらな感じで答えるじゃないですか。ツイッターとかで」
乙武「そうですね」
双雲「ひどいんですよ、ツイッター。すごいですよね」
乙武「本当にいろいろなものがあって、ちょっと前には暴力的な言葉を投げかけられたりしましたし」
客席「きたきたきた!」
乙武「その前は『バーカ』ってきたので、『カ、カ、カメラ!』ってしりとりで返しました(笑)」
客席「(笑)」
双雲「しりとりに変えちゃう。そのときの心境ってどうなんですか? 例えば、一回傷ついてグラっときてから陽転思考になるのか、そもそも(ダメージを)くらわないのか」
乙武「そもそもくらわない」
双雲「なんだよそれ」
客席「(笑)」
双雲「なんでくらわないの? 物騒な言葉を言われたら、ちょっと嫌じゃん」
乙武「本当に、面と向かった状態で、武器を持って暴力的な言葉を言われたらビビりますけど、ネットで僕に言ってくる人ですから、どこかに寂しさがあったり、満たされない想いがあって暴力的な言葉に変換されてしまっているだけだから」
双雲「それは分かっても、怖いものは怖くないですか? じゃあ、ムカつくことはありますか?」
乙武「ないですね」
双雲「ムカつかないんだ」
客席「へぇ〜」
双雲「(客席に向かって)天才でしょ? そりゃ、ツイッターできるわ」
乙武「よく双雲さんは『強さだ!』と言ってくださるんですが、僕の中では、(自分は)ただ我慢ができない子なんですよ。さっき双雲さんが『自分は空気が読めない』って言いましたけど、逆にすごく嫌われたくないから、人に気を使うことができるんですよね。僕はそういう我慢がまるで出来ないんですよ。自分が相手に好かれるためにこういう風にしようとか、こういうことを言いたいけどどうなるかなと思ってしまって飲み込むことが出来ない。『俺はこれでいくよ、自由にいさせて』っていうのが根本的にあるので」
双雲「要するに好きな人だけついてきて、と」
乙武「初対面が苦じゃないのは、もう最初から(自分を)開いてしまって、僕はこういう人間です。こういう強みもあればこういう弱みもあります。こんな形をしています。これで気に入った人は付き合っていきましょう。気に入らなかった人はご縁がなかったですね、というスタンスだからなんですよね、基本的には。だからすごく生きていて楽です」
◇ ◇ ◇
イベント開始前、お二人に行ったインタビュー取材の中で、対談を通して相手の印象がどのように変わったかを聞いてみた(記事は後日配信)。そこで双雲さんは乙武さんについて「こんなに前向きで、強くてしなやかな人がいるんだと思いました」と語り、乙武さんは双雲さんについて「自分は人との間に垣根をつくらないほうだと思っていたのですが、双雲さんはそれ以上に垣根をこえてきたんで、すごく衝撃的でした(笑)」と話していた。
二人の公開対談は、客からの質問に答えながら、教育や障がい、恋愛、家族、仕事などさまざまなトピックについて語られ、盛況のうちに幕を閉じた。しなやかでいつも自然体な乙武さんと、分け隔てなく垣根を越えてくる双雲さんの人柄に溢れた時間が流れていた。
『だからこそできること』は、どんなことでもポジティブにとらえ、前を向いて生きる二人が、「だからこそできること」というキーワードにポジティブに生きる方法、自分らしく毎日を過ごす方法を読者に伝える一冊となっている。二人のユニークで示唆に富んだ言葉に耳を傾けてみて欲しい。
(新刊JP編集部/金井元貴)
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