ボーカロイドをテーマに“初”の青春小説が登場

ボーカロイドをテーマに“初”の青春小説が登場

 あなたは「ボーカロイド」を知っているだろうか? 
 おそらく多くの人は「知っている」と答えるだろうが、念のために説明しておくと、ボーカロイドとは音声合成技術を使ったソフトウェアのことだ。メロディーと歌詞を入力するだけで、人間の音声を合成することができる。
 よく耳にする「初音ミク」や「鏡音リン・レン」「巡音ルカ」はボーカロイドの各ソフトのキャラクターで、自分がプロデューサーとなってキャラクターをプロデュースするという楽しみ方がある。

 そんな「ボーカロイド」をテーマにした青春小説が登場した。
 『拝啓、あなたはボーカロイドを知っていますか?』(廣済堂出版/刊)は映像作家・シナリオライター、小説家として活躍する北條俊正氏が執筆した、初の青春“ボーカロイド”小説である。

 ガチオタ(「ガチなオタク」の略)のパルコ(前田晴子)は中学生の頃からボカロP(ボーカロイドを活用する人)としてネット上で活動している女の子。そんなパルコには憧れの人がいた。ボーカロイドメーカー・アージュシター社に勤務しており、試作版ボーカロイド「CUL」(カル)を開発している伯父さんだ。
 高校生になり、リアルを充実させるために野球部のマネージャーになったパルコだったが、一方で“とある野望”を達成するために燃えていた。そんなある日、伯父さんから電話がかかり、開発中の「CUL」のキャラクターボイスを担当してくれないかと誘われる。その知らせにパルコは嬉しさで震え上がった。
 さて、パルコが高校で果たしたいと思っている“とある野望”。それは、姫古川高校の一大体育イベント「姫古祭」の応援合戦で自分の作曲したボーカロイド楽曲を流し、観客でいっぱいの運動場でみんなと踊ることだ。

 しかし、なかなか事は上手く進まない。「CUL」の製品化は実現されず、応援団長たちに掛け合っても「姫古祭」でボカロ曲が流されることはなかった。そして弱小野球部も甲子園どころの騒ぎではなく…。
 それでも、パルコとその周囲の人たちは少しずつ成長していく。幼馴染みのマーブ(伊藤学)の強い決意と、それに共感した野球部のエース、高志。高校2年生の冬には、なかなか日の目を見ない「CUL」のためにパルコが書いた曲がランキングトップ10入りし、伯父さんが祝ってくれたりもした。
 そうして、パルコが3年生になった春、突然の悲劇が訪れる。

 「CUL」は昨年12月に実際に発売されたボーカロイドで、テレビ番組から誕生したオリジナルキャラクターでもある。本作に出てくるボーカロイドソフト「CUL」は、12月に発売した「CUL」とは関係なく、ボカロレボリューション製作委員会のライセンシーを受けて執筆された「アナザーストーリー」という位置づけになるという。

 パルコの視点で物語が進むため、本文中にはネットスラングも散りばめられており、ボーカロイドやインターネットに慣れ親しんでいる人は間違いなく楽しめるだろう。また、ボーカロイドをあまり知らない人にとっても、現代の高校生たちの青春に胸を熱くするのではないか。
 ボーカロイドとはどんなもので、どの様に若者達の間で楽しまれているのかが描かれているので、ボーカロイドを知らない人にとっては、分かりやすいボーカロイドの入門書でもあり、ボーカロイドというソフトウェアをめぐる人々を描いた小説でもある本書。ボーカロイドの世界の広がりを実感できる一冊だ。
(新刊JP編集部)

【VOCALOID小説ドラマ化してみた】馬琴編 第1話(100人の朗読SP)
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