『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』クリエイター・成田昌隆さんに聞く! 「スター・デストロイヤーの一部は“戦艦大和”をモチーフにしている」
いよいよ12月15日(金)に全世界同時公開を迎えたシリーズ最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』。本作で、宇宙船「ミレニアム・ファルコン」と、兵器「AT-AT」の進化系となる「AT-M6」などのCGモデリングを担当しているのがルーカス・フィルムのVFX部門であるIndustrial Light & Magic(通称ILM)に所属する日本人クリエイターの成田昌隆さんです。
成田さんは、元証券マンで8年前に46歳でCGクリエイターに華麗なる転身を果たしたという、とってもすごいお方。夢を持つ大人達の憧れの存在なのです。現在は2018年公開のスピンオフ映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のリードモデラーを担当されてます。以前『アイアンマン3』の“アイアンマン”制作についてのお話を伺っていますので、こちらもぜひご覧ください。
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今回も色々とお話を伺ってきました! 成田さんが制作したミレニアム・ファルコンのプラモデルの完成度がスゴすぎるので必見です。
▲成田さんが作ったAT-AT のプラモデル、汚し塗装にこだわり
――『最後のジェダイ』にて成田さんが担当されたパートを教えていただけますでしょうか?
成田:『フォースの覚醒』では「ミレニアム・ファルコン」、「ファースト・オーダー・スター・デストロイヤー」、「タイ・ファイター」など、『最後のジェダイ』では「AT-AT」、「AT-M6」、「スキー・スピーダー」、巨大レーザー砲などのCGモデリングを担当しました。「AT-M6」は従来の「AT-AT」の1.5倍ほどの大きさです。AT-ATがスノー・スピーダーにケーブルを巻かれてやられてしまいましたよね、なのでファースト・オーダー側がそれを防ぐ為に、でっかい足でさらに強力な兵器を作ったという事です。僕らは「アトアト(AT-AT)ゴリラ」って呼びながら作っていたんですが(笑)、ゴリラの動きをもとにしています。コンセプトアーティストがライアン監督と話しながら決めたそうなのですが、「昔のAT-ATは犬の様な戦車であった。今回は犬よりも獰猛で強い動物にしよう」という事でゴリラになったとのことです。
▲AT-AT(右)が1.5倍サイズにパワーアップしたAT-M6(左)のCGモデル
――確かに腕が内側に入る様な重い歩き方が、言われてみればゴリラですね! モデリングする際に一番気をつけている事はどんなことですか?
成田:僕らがモデルを作り始める頃って、それが映画のどのシーンで使われるか分からないんですね。それで「AT-M6」についてはひきのシーンが基本的かなと思っていたら、顔のアップがかなりあって。あれが大スクリーンに映ると、ディティールが細かくないと耐えられないと思い、顔のパーツはかなり作り直しました。
『スター・ウォーズ』というのは、「スター・ウォーズっぽいデザイン」というのがありますよね。エピソード4、5、6が作られた頃はCGが無いので、模型を作ってそれを実際にカメラで撮影して合成していました。当時作られた「ミレニアム・ファルコン」は「キット・バッシング」と呼ばれる手法で、つまり飛行機や戦車などの日本のプラモデルの部品をそのまま張り付けて作られたんです。その模型感が「スター・ウォーズっぽさ」を生み出しているのです。ですから今回CGバージョンの「ミレニアム・ファルコン」を作る際気を付けたのは、CGで綺麗にカッコ良い特別なパーツを作るのではなくて別の目的で使われる飛行機や自動車のパーツをモデリングしてそれをはめ込んでいるんです。なのでよく見ると野暮ったい部分があるんですね。
――最高峰の技術で作っている『スター・ウォーズ』シリーズにおいて、あえてアナログなアプローチをされているということですよね。
成田:そうです。究極を言っちゃうと、実際にあった古いプラモデルのパーツをCGで作ってはめこんだりもしています。
――それはそれは、すごいお話ですね。日本人の感覚的な部分をモデリングに活かすことはありますか?
成田:せっかくですから、自分の日本人らしいセンスを入れたいなと思ってやっている事はありますね。『フォースの覚醒』で登場し、『最後のジェダイ』にも出てくる「スター・デストロイヤー」で、艦橋の形を戦艦大和をモチーフに作っています。「ミレニアム・ファルコン」にも大和のプラモデルのパーツが入っていたりするんです。大和大好きなので、そういう事もしています(笑)。
――このプラモデルも成田さんが作られたということですが、すごい完成度ですね……!
成田:プラモデルは小学校から中学生くらいまではずっと作っていて、その後再開したのは37歳で、また熱中しはじめました。それでコンテストに出したりして勝てないと悔しくて(笑)、色々と研究して。プラモデルを作るにあたって何が一番大切かというと、ディティールなんですよね。「細かいところまでしっかりと見る目を養った」というのが、プラモデル作りが今の仕事に活きている一番大きな部分だと思います。物を作るということは、ゼロから全て積み上げていくので、ボルト1本足りなくても形にならないわけです。
後、CG初心者にありがちなんですが、最終的なモデルに完全な直線と平面が残っているとリアルに見えないんですね。世の中にある物の中に完全な直線というのは1本も無いんですね。車でさえもぐにゃぐにゃなんです。どれだけ真っ直ぐにしようとしても、どうしても曲がってしまう。それをCGだと一発で直線に出来てしまうのですが、それをやると本物に見えないんです。今回は模型っぽく見えないといけないんだけど、リアルにも見えないといけない、そこのせめぎ合いがあるわけです。
▲ハン・ソロとチューバッカが色々と手を加えているという設定で、カスタマイズされまくっているミレニアム・ファルコン。「ミレニアム・ファルコンがこの向きで飛んでいる時にこういうものが飛んできて傷がついて……といったディティールも本物の映画で使われた模型そっくりに作っています」と成田さん。神の手や……!
――普段観客として映画をご覧になっていても、そうした細部にまで目がいってしまうのではないでしょうか?
成田:やっぱり目がいってしまいますね。僕は特に、日本の『エヴァンゲリオン』といった作品のデザインにすごく興味があって、勉強させてもらっています。アニメであったとしても、線の角度のつけかたとか、細かな所にセンスを感じるんですよね。モデラー同士でも「あの作品のモデリングが良かったね」という話はよくしています。僕の原点となっているのが『2001年宇宙の旅』なのですが、今観ても本当に洗練されていて、スター・デストロイヤーのモデリング等で参考にしています。
――ここまで、様々ななこだわりを伺ってきましたが、『スター・ウォーズ』ほどの作品ですと、かなり時間の制約があるのではないですか?
成田:そこは日本の会社とアメリカの会社で考え方が違って、スケジュール管理するのがモデラーの仕事では無いので、期日が過ぎてしまった、という事が起きても僕らの責任では無いんですね。時間が厳しくなってくれば、スケジュール管理を専門にしているスタッフから「このくらい残業してください」といった指示が来るので、僕はそれに従いとにかくベストを尽くして仕事をしていくというシンプルな働き方です。
――最後に、改めて『スター・ウォーズ』という作品に関わったお気持ちをおしえてください。
成田:僕は小学生の頃から映画大好き少年で、78年に『スター・ウォーズ』を始めて観た時は本当に感動して興奮して、今でもその感覚というのは思い出せるほどです。その時はまさか自分がその続編に携わることになるとは夢にも思わなかったので、感無量といった感じです。『最後のジェダイ』、日本でもたくさんの人に観ていただける事を本当に楽しみにしています。
――今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
http://starwars.disney.co.jp/movie/lastjedi.html
成田さんの公式サイトでは、CGモデリングを手がけた作品から、プラモデルの細部を写した写真を見る事が出来るのでこちらもチェック!
■1/72 Bandai Perfect Grade Star Wars Millennium Falcon built and painted by Masa Narita
http://www.naritafamily.com/cgi.htm [リンク]
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