【ここは法廷だゼ!】とにかく叱りまくる裁判官!「裁判所に謝っても、何も有利になることありませんっ!」
ある日のさいたま地裁。被告人は埼玉県迷惑行為防止条例違反で逮捕・起訴されたS(45)。髪は真っ白、なで肩の体に汚れた大きめの赤いジャンパー。ヨロヨロ歩くその様子は、まだ40代にも関わらず、老人のようなくたびれ感を醸し出している。
Sは朝の電車内で女子高生のスカートをまくりあげ、尻を触ったという。痴漢のために無職にも関わらず早朝の電車に乗り、ときに乗り換えながら、好みの女性を物色していた。そんなガッツがあるなら仕事もすぐ見つかりそうなものだが……。
被害女性の隣に立っていた女性の調書には「上尾から乗ってきた男が、隣の女の子にすり寄ってきた。無理矢理後ろに回り込み、しばらくすると『ハァハァ』と息をし始めて、気持ち悪かった」とある。こんなに分かりやすく痴漢を働いておきながら、一度は逃走を図ったり、しらばっくれたりしていたという。
「もともと女子高生の制服が好きだった。逮捕されたときは『仕事を探しに行くため電車に乗った』と言ったが、痴漢のためだった。5年前から若い女の子に痴漢を始めて、これまで100回くらい痴漢している。一昨年に罰金刑を受けた後はしばらく控えていたが、風俗に行く金がなくなり、昨年10月以降から6〜7回くらい痴漢した」
と調書で語っている。かつては仕事を持っていたが、無職になったため、風俗代がなくなってしまったようだ。なおさら仕事を探した方がよかったのでは……。
ちなみに被告人には件の罰金刑の他にも同種前科がある。その度に、年老いた母親が金銭面で尻拭いしてきたようだ。また、現在は生活費も面倒をみてもらっているという。そんなSに対しては、裁判官が黙ってはいなかった。
まず情状証人として出廷したその母親に対しても容赦なく「アナタが肩代わりしてるんじゃ、被告人のためになりませんよ! 前回のときアナタが一生懸命示談したのに、それが仇になってる。これ以上甘やかしちゃいけないんじゃないですか!?」とバッサリ。そして「もう今回、刑務所です。それは避けられないと思うんです!」と、堂々と実刑判決予告。珍しいタイプだ。
被告人に対しても「無職なのにキャバクラ行って、カードで支払って、それで行き詰まって、キャバクラ行けなくなったんでしょ!」と無軌道な生活を延々と叱責。さらに、
「あなた自分でさっき“引きこもり”とか言ってたけど! わざわざ痴漢のため、電車乗ってんでしょ! どこが引きこもりなんですかっ!……お母さんが可哀想ですよ! アナタのために色々……お母さんが苦労してる一方でアナタは、痴漢のために電車に乗り、痴漢繰り返してた! そんな無気力な人生送ってていいんですかっ!」
と、叱り飛ばした。法廷も静まり返る。
そうこうして求刑も終わり、被告人が最終陳述で「今回のことはお詫びしたいです。申し訳ありませんでした……」と頭を下げたときも裁判官は逃さなかった。
「アナタがお詫びする相手、裁判所じゃありませんっ! あなたが詫びなければならないのは被害者であり、お母さんですっ! 裁判所に謝っても、何も有利になることありませんっ!」
と再び叱り飛ばした。
起訴事実を認めている被告人がここで謝罪を述べるのはいわばお決まりの流れであり、裁判官も特にコメントをしないのがお決まりなのだが、この裁判官はそれすらも許さない情熱の固まりのような男なのだった……。いい歳こいて、公衆の面前で叱り飛ばされたことがSにとって次の犯罪への抑止力となればよいのだが……。
画像引用元:flickr from YAHOO
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/
TwitterID: tk84yuki
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