仕事でモテる男はなぜ、「メンズ美容」をしているのか?
近ごろ男性ビジネスパーソンの間で「メンズ美容」への関心が高まっています。スキンケアやニオイケア、ひいては身だしなみをきちんとしたいと考える大人の男性たちが増えているのです。
そんな彼らは今、男性のあるべき身だしなみのノウハウを求めて、ある女性のもとに駆け込んでいます。その人の名は、メンズ美容家・山川アンクさん。
なぜ今、メンズ美容なのか。そしてなぜ、メンズ美容に意識が高い男性は仕事でモテるのか。アンクさんにお話をうかがいました。
朝の洗顔もまともにしないほど美容に無頓着だったライターの松岡がお送りします。
山川アンク:クリスチャン・ディオールをはじめ国内外の化粧品メーカー4社に勤務を経て、2012年より日本初の女性メンズ美容家として活動開始。
一般社団法人日本メンズ美容協会理事長。「美容の科学と女性目線」でメンズ美容の普及に務め、ビジネスもプライベートも成功する、見た目改造方法をメディアや講演会を通じて指南している。
意識すべきは「見た目」と「ニオイ」
――ビジネスやプライベートにおいても「選ばれる男」になるにはどうすべきか。メンズ美容の大切さについて、ぜひお聞きしたいと思いまして。
山川 ええ。
――見た目についてはみんな気にしていて、自分をよりよく見せようという気はあると思うんです。洋服屋さんに足を運んで、ちょっといい感じの服を探したりするのもそうで。ただ美容については、たとえば洗顔すら満足にやっていない人も実は多いんじゃないかという気がしているんです。
山川 松岡さんも洗顔されてないんですか?
――もちろん顔は洗っているのですが、洗顔フォームは使わずに、水でパシャパシャしているだけで。必要最低限といった感じです。
山川 私は男性の美意識には段階があると思っていまして。スキンケアというのはその最終段階なんだと思うんです。
――段階ですか。
山川 まずはヘアスタイルやファッション。人ははじめに相手の顔を見ますから、髪型をどうにかしようとする。次にファッションに気を配るようになる。体の中で首から下が占める割合は大きいですからね。まずはそういうところに意識がいって、それと前後してデオドラントに気がまわる。思春期のころからニオイを気にして、ケアをなさっている男性も多いと思います。
お金の問題もありますね。限られたお金を何から使うかと言えば、やっぱり分かりやすく服や髪型に費やすはずで、スキンケアについてはどうしても優先順位が低くなりがちです。
――しかし、きちんとケアをしないと「顔から臭う」というお話を聞いたことがあります。
山川 ええ。汗と一緒に皮脂を分泌する皮脂腺が顔にありますから、ベタついたまま放置していたら顔からもニオイが発生します。
――僕はたとえベタついても、自分が不快なだけだから別にいいやと思っていたんです。でも、顔から臭って周りに迷惑をかけているのだとしたら、これはマズイなと。
山川 迷惑とまでは言いませんけれど。顔のニオイが分かるほど接近される方は一部の近しい方だけだと思いますし(笑)。ただ、ニオイの問題はデリケートですから他人に指摘されにくいのは確かです。
――そういえば最近、妻に「加齢臭がする」って言われたんです。まだ30代なんですけどね。うちの奥さん、わりと思ったことを素直に言うタイプなのですが、さすがにこちらが傷つくと思って、なかなか切り出せなかったみたいです。
山川 正確には、それは「ミドル脂臭」といわれるものですね。皮膚に付着している汗が分解されて生成されるジアセチルと皮脂(皮膚の脂)が混ざって発生するニオイです。加齢臭とは異なり、空気中に拡散しやすく、人と離れた位置にいても気づかれやすい性質があります。30代半ばごろから発生するので、注意が必要ですね。山川 そんなに臭ってたんですか?
――自分では分からなかったんですけど、このまま外に出て人と会わせるのが不安なくらい強かったらしいです。でもある日、そのニオイがゼロになったと言われました。
山川 それはどうして?
――僕は子供ができてから、子供と一緒にお風呂に入っているんですが、赤ちゃん用のボディソープを自分でも使っていたんですね。赤ちゃんの肌にやさしい天然素材というふれこみだったから、同じのを一緒に使えばいいやと思ったんです。天然素材って聞くと、なんだか良さそうな気がして。
山川 なるほど。赤ちゃん用と大人用では求められる洗浄力がまったく異なりますから、それはダメですね(笑)。
――それで元の大人用ボディソープに戻したら、それまで出ていたニオイが完全に消えたと言われました。要は「積年の洗い残し」だったわけで(笑)。
山川 奥様もなかなか言えなくて、悶々とされていたでしょうね。小さなことかもしれませんけれど、夫婦円満のためにも衛生面においても、こういうことは意外と積み重なってくるものですから、ニオイの成り立ちだとか原因について知識をもっておいて損はないと思います。
見た目はコミュニケーションツールと考える
――ろくに洗顔もやっていなかった僕ですが、思えば思春期のころは結構いろいろ身だしなみに気をつかっていたんです。
山川 あ、そういう方、多いです。今はサボってるけど思春期の時はやってましたとおっしゃる男性。ちなみに松岡さんはどんなことをしてましたか?
――ジェルをつけて髪型を整えたり、太い眉毛が嫌でよく抜いてました。あと毛玉取りと櫛がセットになったモテグッズを学ランの胸ポケットに入れてましたね。悪っぽい龍のイラストがプリントされてましたっけ。
山川 ああいう行為をすること自体が嬉しいんですよね。中学生になって、異性も意識し始めて、大人の仲間入りをしたような気持ちになりますから。私がやっているYoutubeチャンネルも10代後半から20代前半の方に一番視聴されているんです。「ニキビはどうしたらいいでしょうか」とか、いろんな質問をいただきます。
――僕も中学生の時、顔中がニキビだらけだったんですよ。将来、肌を陥没させたくなかったので、市販のニキビ用クリームを毎晩、必死に塗っていました。でも全然治らなくて。毎朝きちんとスクラブ洗顔もしていたのに。
山川 つぶつぶのスクラブ洗顔は効果があるんですけど、やり過ぎには注意です。角質層を削り取りすぎちゃうので2週間に1度程度で十分なんですよ。
ニキビはホルモンの関係もありますけれど、肌の乾燥が一番の大敵なんですね。それは大人も同じです。そうやってスクラブ洗顔のしすぎて、おそらく肌表面が荒れてしまい、間違ったケアをしていたからクリームでも治らなかったのだと思います。
――なるほど、そうだったんですね。それにしても思春期は美容に気をつかっていたのに、なぜ大人になっておろそかになる男性が少なくないんでしょうか。
山川 みなさん、大学生まではきちんとされるんですよ。やっぱりモテたい時期ですし、異性の目を意識しますから。でも社会人になって働き出すと、今までは何でも自分でコントロールできていた生活ががらりと変わって、プレッシャーも受けるようになって、自分に余裕がなくなってしまうのだと思います。
お金も無関係ではないでしょうね。親元を離れて一人暮らしを始めた方は、実家と違って生活費も自分持ちですから、自由に使えるお金も限られてきます。働き始めたばかりで、そのような中で身だしなみまで気を配ってやりくりするのは大変だと思います。
でも、そんな中でも今、メンズ美容に関心が高まっているのは「自信をもってコミュニケーションを取れる人間になりたい」と思っている方が増えているからではないでしょうか。SNSの普及で手軽に人とつながれる時代にはなりましたが、ビジネスシーンにおいて取引先や職場の方と接する際は気を抜けません。だからみなさん会話術を勉強したり、身だしなみもきちんとして自信を持ちたいのだと思います。
――自分の口が臭っているかもと思うと、おどおどして自信が持てなかったりしますよね。
山川 ええ。他人から口臭がするなあと感じた経験があったら「自分だって臭うかも」と思われるのは自然なことだと思います。だから本当は正面を向いて話したいのに、必要以上に気にして口を違う方向に向けたりして。
――人のふり見てわがふり直せ、ですね。
山川 とにかく20代は仕事を覚えるのに大変な時期ですし、30代になったら下の世代に教えなきゃいけない立場になりますから、自分を客観視できる心の余裕がどんどんなくなります。身だしなみへの意識も弱くなりがちです。
でも、時間は自分でつくるものですから。一日の中でたったの5分、身だしなみを意識するだけで、人生が大きく分岐すると思います。
みなさんも何となく分かってらっしゃると思うんですけど、人の見た目や全体的な雰囲気って、人生のふとした部分で左右されるんですよね。ビジネスの場ではお互い気持ちよくコミュニケーションを取りたいわけですから、見た目に気を配っている人の方が何かと仕事がうまくいきますし、人生もいい方向に転びます。
「人の見た目」はコミュニケーションツールのひとつですから。
山川アンク著『収入2700万円の差がつく身だしなみ』(3/27発売)
YouTubeチャンネル登録者数4700人、有名企業にも多数招かれ、セミナーなどをこなす日本初の女性メンズ美容家が教える、ビジネスにおける「男性の身だしなみ」の基本。身だしなみがビジネススキルとなりつつある昨今。体型コンプレックスをなくすスーツの選び方や、気になる体臭のケア方法、薄毛対策やヒゲ剃りなど、知っているようで知らない「ビジネススキル」の決定版山川アンク公式サイト
https://www.ankh-yamakawa.com/
文:松岡厚志1978年生まれ、ライター。デザイン会社「ハイモジモジ」代表。最近、白髪が目立ってきたが、薄毛にはならない根拠なき自信がある、ぎりぎり30代。サイトはこちら。
イラスト:Mazzo Kattusi
撮影:鈴木 健介
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