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直木賞作家・森絵都さんに聞く“10代におすすめしたい本”とは?

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直木賞作家・森絵都さんに聞く“10代におすすめしたい本”とは?

出版業界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』。

第87回に登場するのは作家・森絵都さんです。

森さんの最新長編小説『みかづき』(集英社刊)は、「2017年本屋大賞」にもノミネート(発表は4月11日)されており、「王様のブランチブックアワード2016大賞」を受賞、評論家や作家、各メディアから絶賛の声が上がった感動巨編。昭和から平成の塾業界を舞台に、親子三代が奮闘を続ける、家族と教育をめぐる物語です。

どんな世代でも必ず心を打つ風景が出てくる本作について、森さんにお話を伺いました。今回は最終回となる後編です。

前編はこちらから

中編はこちらから

(インタビュー・記事/金井元貴)

■森絵都さんが薦める「10代のうちに読んでおくといい本」

――本作に限らず、森さんの小説を読むと強く感じるのですが、登場人物に感情移入しやすいと思うのですが、それは何故なのでしょうか。

森:私も書いていて、(キャラクターに)感情移入しているところがあります(笑)。作中人物のせりふも、その立場に立ったつもりで書いているのが大きいのかもしれません。でも、その一方で人物を客観的に見る視点も持っていますね。

――特に少年や少女の心の機微は毎回心を打たれます。

森:でも、最近はちょっと描き方が違ってきていますね。デビューした頃はまだ20代半ばだったから、わりと肌感覚で10代の頃の心の動きを描けていたのですが、今はお母さん的な感覚で少年少女たちを描くようになりました。

――小説だけではなく、絵本も書かれていますが、絵本と小説の書き方はやはり違うものなんですか?

森:文章を書くという意味では、集中するところは変わりません。ただ、私の中で物語は誕生した時からだいたいどのくらいの長さになるかという尺が決まっている感覚があるんですよ。

だから、絵本は浮かんだとき絵本の尺に収まっているし、子ども向けの物語だとその尺になっている。

――では、『みかづき』も最初からこれくらいの長さになるだろうということは想像されていたのでしょうか。

森:『みかづき』については、長編になることは分かっていましたが、ここまで長くなるとは思っていませんでした。ただ、絵本や短い短編については浮かんだときからだいたい原稿用紙何枚かというのは分かります。

――長編と短編では、書きやすいのはどちらですか?

森:書きやすさでいえば長編です。特に後半になるにつれて、物語に没入していけますから(笑)。短編は毎回新しいものを書かないといけないけれど、短いので(執筆が)すぐ終わるから、その部分は書きやすいかな。

――森さんが感じる「魅力的な人」ってどんな人ですか?

森:基本的には自由な人ですね。マイペースで我が道を行くというタイプの人には魅力を感じます。

――お話を伺っていると、森さんご自身もかなり自由な方のように思います。

森:そうなんですか? 作家の中では常識に縛られているタイプではあると思うのですが…(笑)。

でも先日、朝日新聞社の「オーサー・ビジット」という、作家が学校で特別授業を行うという企画に参加させていただいて、授業終了後に子どもたちから感想をいだいたんですね。そうしたら、「何物にもとらわれていない自由な人だと思いました」と書かれていたんですよ(笑)。私ってそんなに自由な人だったんだ!って。

――小説に関してはすごくストイックでいらっしゃる一方で、発想はすごく自由でいらっしゃいます。それは小説を読んでいてすごく感じます。そんな森さんに10代のうちに読んでおいてほしい本を3冊選んでいただきたいのですが、よろしいでしょうか?

森:そうですね…。まず、『ムーミン』シリーズは10代のうちに読んでほしいです。

『ムーミン』シリーズって、読む年齢によって受け止め方がすごく違ってくるように感じるんですね。私は20代に入ってから読んだのですが、10代で読んだらまた違った読み方をしていただろうなという感じがあって、10代であの自由な共同体の世界に触れることは大事なことだと思いますね。

あとはそうですね…。男の子向きと女の子向きで分けて選んでもいいですか?

――大丈夫です。

森:男の子向けは、以前「誰にも薦めないけれど読んだ方がいいかもしれない本」というテーマの案内本でも取り上げたのですが、佐々木譲さんの『冒険者カストロ』です。

この本はフィデル・カストロというキューバで革命を起こした政治家の人生を辿ったノンフィクション小説です。カストロについては良い面だけではないかもしれないけれど、今の世界にはあまりいない人だと思っていて、特に男の子であれば、彼のような強い生き方に触れることで何か感じるものがあるような気がするんですね。

また、200回以上暗殺されそうになったり、エピソードも波乱万丈で単純に物語としても面白いですし、佐々木さんの文章もすごくかっこいいですね。

女の子向けですと、佐藤多佳子さんの作品ですね。特に彼女のデビュー作となった『サマータイム』は、『月刊MOE』という絵本の雑誌が主催する『月刊MOE童話大賞』を受賞した作品で、初めて読んだときに私は作家志望の身だったのですが、「こんなに上手な人がいるんだ!」と思って友だちに見せて回ったのを覚えています。

その後、『サマータイム』の新潮文庫版の解説を書かせていただいたりもしているのですが、佐藤多佳子さんはどの作品も好きです。

10代のなんともいえない、言葉にできないところを言葉で表現されているのが佐藤さんで、自分たちのもやもやをしっかり描いていると感じて、読むとすっきりすると思います。また言葉の綺麗さも素晴らしいので、ぜひ読んでほしいです。

――作家志望の頃のお話が出てきましたが、森さんが作家になろうとしたきっかけはなんだったのですか?

森:教育をテーマにした小説を書いていますけど(苦笑)、高校3年生になったとき、大学に行く気もなく、就職したくもなかったけれど進路を考えないといけなかったんですね。じゃあ自分はどんな仕事ができるのかなと消去法で考えていったときに、書くことは昔から好きだったので、これなら続けられるかもしれない!と思って作家に(笑)

――まさに大島三姉妹の菜々美と被りますね…。

森:そうなんですよね。菜々美は中学生のときに「高校には行かない!」って言っていましたけど、私も高校に入学した当初は、「高校をやめる」って宣言していましたね。

――これから『みかづき』を読もうと思っている方や、再読しようと思っている方にメッセージをお願いします。

森: 世代によって受けた教育は違うと思いますが、自分と重なる部分がどこかで出てくると思います。物語ですが、大島家の人たちを身近に感じながら読んでいただけたら嬉しく思います。

■取材後記

『みかづき』の最大の特徴は、どんな世代の人が読んでも、自分の世代の視点で読むことができるということ。私自身は3人目の主人公にあたる一郎と同じ世代なのですが、彼とその仲間たちがやろうとしたことに対して共感を覚えますし、また上の世代の人たちがどう考えて教育を変えようとしてきたか、どのように「教育のあり方」が変わってきたのか、新たな発見がありつつ、読み込むことができました。

もし本作を読み終えたら、ぜひご家族の方にもすすめてみてください。きっとこの本で話が盛り上がるはずです。(新刊JP編集部/金井元貴)

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