【ここは法廷だゼ!】痴漢の言い訳は「仕事で頭を下げてきた。その腹いせ」?

埼京線車内

昭和28年生まれの会社員A。裁判所とは無縁に見えそうな、普通のオジさんに見える。ある朝の埼京線、赤羽〜板橋間で25歳の女性の腰をしっかりホールドし、大腿部や陰部を触りまくったとして、迷惑防止条例違反で逮捕起訴された。

「間違いありません」

もはや観念したのか、法廷ではしおらしく罪を認めてみせたが、犯行当時、被害女性に服をつかまれて電車を降ろされた際には「触ってないよ、あの子ひどいよ!」など冤罪を訴えたほか、口裏合わせのため、友人に電話をかけたり、往生際の悪いところを見せていたようだ。ちなみにこの埼京線は通勤で乗る必要のない電車だった。

被害者の調書によれば「危ない危ない、間に合った。フー、フー」と電車に乗り込んできた被告人は、電車が動いてすぐに体を触ってきたという。

「今でも夢に見る。作業着を見ると今でもイヤな気分になる。捕まっても言い逃れをしていたアイツの人生を滅茶苦茶にしてやりたい!」

怒りも相当である。

被告人は冤罪を訴えてみせたが、過去、痴漢で5回、逮捕された事があり、こうも語っている。

「今まで金で解決してきたが、女性の怒り方を考えると、決して金だけで解決できる問題ではないと感じている」

当たり前である。そんな“女は痴漢しても金を払えば許してくれる”と甘い考えを持っていた被告人は犯行動機についてこう述べた。

「仕事……人から金をもらう関係上、頭を下げてきた。その腹いせ……。要は、支配したいとか、優位に立ちたいとか、そういう気持ちです」

被告人というのはよく、ストレスを犯行理由に挙げる。しかし、それはこの人が許さなかった。

裁判官「あなた優位に立つってことと、お尻触るってこと、どう関係あるんですか? 痴漢で捕まって、公開の裁判……。なぜ、こんなに繰り返すのか、理解しないと直んないですよ!」

そして法廷を見回し、

裁判官「傍聴席にはたくさん若い女性もいるんですよ。あなた、自分がどう見られてると思う?」
A「最低だと……」

自ら最低だと認めるAだが、繰り返し痴漢に及んでも見捨てなかった妻がいる。大事なものを失う前に、我慢を覚えることはできるのだろうか……。

画像引用元:flickr from YAHOO
http://www.flickr.com/photos/31029865@N06/5904829488/

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高橋 ユキ

傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。

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