体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

「最愛の人に捨てられた」突然の出家に騒然!やりたい放題の源氏が犯さなかった3つのタブー~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

genji-27b

早くも、桐壺院の崩御から1年。年の暮れに、藤壺の宮(以下、宮)は一周忌を営まれ、続けて御八講(法華八講・数日間にわたり法華経を講じる法会)を催します。一周忌の日には源氏の歌にも素直に返事を書き、さすがの源氏もこの日ばかりは恋心を忘れて、亡き父の冥福を祈りました。

絶対行きたい!セレブが集う一大イベント『法会(ほうえ)』

御八講は、1日めは宮の父帝、2日は母后、3日は院のため…といったスケジュール。非常に荘厳で、お経の装丁、仏様の飾り付けなども、微に入り細に入り美しく整えてあります。もともとセンスの良い宮のこと、今回は特に念入りに準備したので、「まるで極楽浄土のよう」です。

普段は右大臣や太后の顔色をうかがって、宮に寄り付かない貴族や皇族たちも、この日ばかりは大勢参加しました。源氏について作者は「いつも同じことを書くようだが、源氏は見るたびに素晴らしく美しいので仕方ない」。と弁解しています。

現代人にはちょっとピンときませんが、当時の法会というのは一大イベント。会場の飾り付けはもちろん、講師となる僧侶の読経や説法(イケメンとか、話がうまくて声のいいお坊さんなら最高)、そこに集う貴族たちのファッションチェックなど、話題に事欠かない催しだったようです。

特になかなか外へ出る機会のない女性には、貴重なお出かけの機会でもありました。清少納言は宮仕えをする前、大混雑で牛車の中から見物した、貴族の屋敷での法華八講の様子を書いたりしています。

この御八講は、中宮主催ということもあり、清少納言が見たものよりもっとグレードの高い、厳かな感じだったと思いますが、法会の主催者はイベントプロデューサーでもあり、ここでは宮の繊細で高雅なセンスが褒められています。

後にも法会が何度か出てきますが、いい所も悪い所もいろいろと書かれていて、「なににつけてもセンスが評価される時代だったんだなあ」というのがよくわかります。

会場騒然!藤壺の宮、突然の出家

御八講の最終日に、突然、宮の出家が発表されます。誰も知らなかったので、会場は騒然。源氏は凍りついたように固まり、宮の兄(紫の上の父)兵部卿宮は驚き慌てて駆け寄ります。

兄の説得にも耳を貸さず、宮はその場で髪を下ろしました。会場はすすり泣きの声が満ち、兵部卿宮も激しく泣きます。源氏があの日、手に巻き付けた長い黒髪はとうとう、彼女の体から離れたのです。(平安時代なので、ツルツルにはせずボブカット)。

参加者が慰問に行く中、源氏は衝撃のあまり、独り会場に居残って呆然としています。やっとのことで宮の御簾の前へ行き、「どうして急にこんなことをなさったのですか」。

突然の出家に女房たちも戸惑い、バタバタしている中「ずっと考えていたことなのですが、前もって知らせるといろいろ言われて、決心が鈍りそうでしたので」。吹雪が部屋の中に吹き渡り、仏様の御前のお香と、源氏の香りが芳しく漂います。12月(旧暦)の寒い宵のことでした。

やりたい放題の源氏が犯さなかった3つのタブー

源氏は立ち上がれなくなるほどなにがショックなのか。何の相談もなく勝手に出家されたのも裏切りのように思えましたが、何と言ってもわずかに可能性があった、宮との男女関係が完全に絶たれたことです。源氏は生涯において、出家した女性とは関係を持っていないのです。

どの本だったか忘れましたが、瀬戸内寂聴先生が「やりたい放題の源氏が犯さなかった性的タブー」について書かれていました。

・自分の実母や実娘との近親相姦
・出家した女性(尼)との関係
・母と娘両方との関係(いわゆる親子丼)

人妻だの、処女だの、少年だの、父の妃で義母だの、兄の寵妃だの、あれこれやりまくってきた源氏も、この3つに関してはクリーン、というわけです。

当時だって生臭坊主はいたでしょうし、出家した相手と通じる人もいたはずで、「出家=肉欲と無縁の清い生活」というわけではなかったでしょうが、源氏としてはしなかった。宮も、源氏の猛追をかわしつづけるリスクを追うより、思い切って出家して、その立場に守られるのが一番だと思ったのですね。

1 2次のページ
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

山寺宏一&高木渉で『ポプテピピック』

GetNews girl / GetNews boy