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話題沸騰『この世界の片隅に』片渕須直監督インタビュー「日常をとにかくこだわって描く」

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こうの史代先生による同名マンガをアニメーション映画化した『この世界の片隅に』。先週末より公開となり、公開館数63館にして全国映画動員ランキング10位にランクインするという大ヒットを記録しています。

『この世界の片隅に』、広島県の呉を舞台に、18歳でお嫁にいった少女・すずの生活を中心に、戦時中、大切なものを失いながらも前向きに生きていく人々の姿を描いた、全日本人必見の映画。本作を制作したのは、口コミで話題を呼びヒットを記録した『マイマイ新子と千年の魔法』(2009)の片渕須直監督。今回は片渕監督に、映画について、「日常をとことん描きたかった」と話すアニメーション表現について、色々お話を伺ってきました。

【ストーリー】
すずは、広島市江波で生まれた絵が得意な少女。昭和19(1944)年、20キロ離れた町・呉に嫁ぎ18歳で一家の主婦となったすずは、あらゆるものが欠乏していく中で、日々の食卓を作り出すために工夫を凝らす。 だが、戦争は進み、日本海軍の根拠地だった呉は、何度もの空襲に襲われる。庭先から毎日眺めていた軍艦たちが炎を上げ、市街が灰燼に帰してゆく。すずが大事に思っていた身近なものが奪われてゆく。それでもなお、毎日を築くすずの営みは終わらない。そして、昭和20(1945)年の夏がやってきた……。

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―作品大変素晴らしく、切ない気持ちでいっぱいになりましたし、すずさんが活き活きとしていてとても魅力的でした。

片渕監督:ありがとうございます。すずさんは、18、9歳で戦時中のお嫁さんになった女性です。すずさんは絵が描きたい人だったんですが、花嫁になって絵が描けなくなって毎日家事に追われるわけですが、けれども、すずさんはその日々の中で、前とは違う何かを見い出していたのだと思います。例えば、毎日の食事で「今日は上手に出来た」とかね、道端のお花が綺麗だとか。しかし、戦争は彼女の自己実現の手段を根幹から奪ってしまう。それでも彼女はその先に別の道を見出していく。

―本作は戦時中のお話ですが、戦争の悲惨さ恐ろしさをダイレクトに描く事では無く、すずさんの日々のささやかな生活を中心にアプローチしているのが、もう本当胸がいっぱいになってしまって。

片渕監督:戦時中で舞台が広島ですからもちろん原爆がある、戦争でたくさんの方が亡くなり、たくさんの方が傷ついている。日本という国がしてしまった愚かな事がある。でもそれを直接的に描くのでは無く、すずさんという一人の少女が、どのような気持ちを味わっていたのかをちゃんと描くべきなのだと思いました。

―日常がとても丁寧に丁寧に描かれていて、本当にすずさんという人が存在している様な。

片渕監督:アニメーションというのは、現実では不可能な事を描ける分、ロボットアニメやSFなどそういうった作品を作りたい人が多いと思いますし、人気もあると思います。でも僕は、ご飯を作って食べるとか髪を整えるとか、そういう細かい日常をとにかくこだわって描くというのをずっとやってみたかった。過去、「この世界の片隅に」だったら、自分がやりたいと思っていたことが出来るなと思いました。もしかしてお気づきになったかもしれませんが、劇中で季節が巡る度に、すずさんが日焼けしているんです。

―(資料を見比べながら)わ、本当ですね……。あまりにも自然で今言われて、そうだ、と気付きました。

片渕監督:ふふふ、そうでしょう。夏が近づくとすずさんの肌が黒く、冬になると白くという、生きている人間の当り前の事がアニメーションではやらないんですよね。

―また、お嫁に行く、という事はもちろん男女関係があるわけですが、その描写もすごく艶っぽくて。

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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