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AMDは終わりなのか

AMDは終わりなのか

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

AMDは終わりなのか

AMDが満を持して新アーキテクチャのCPU『Bulldozer』を発売した。現時点で最高の8コア。しかしベンチマークをみると、性能は芳しくない。『i7-2600』はもちろんのこと、格下のはずの『i5-2500』にも負けている。

週刊アスキー(2011/11/1号)なんか、『FX-8150』の対抗馬は価格的には『i7-2600』が相応だが、ベンチマークの結果は『i5-2500』といい勝負なので、あえて『i5-2500』と比較した、みたいなことが書いてある。だから『i7-2600』との比較の棒グラフは載ってない(一応1箇所だけ載ってたかな)。

なんだかな、と思う。インテルとデッドヒートを繰り広げたAthronの時代も遠くなった。CPUの周波数が1GHzに到達するまでのインテルとAMDの競争は凄まじかったものだ。先に到達したのはAMDだったと思う。

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面白い記事があった。

「“Bulldozer”開発裏話―何故“Bulldozer”の性能はふるわないのか」2011年10月14日『北森瓦版』
http://northwood.blog60.fc2.com/blog-entry-5351.html

AMDは回路設計を自動化してしまったのが敗因だという主張。元の英文の記事はAMDを辞めた技術者が書いているから、うのみにできるかは微妙なところだが、AMDは2008年に工場を切り離してファブレス化する等、なんか方向性が気に入らないんだよね。

技術が成熟して大きな進歩が望めない分野なら、営利的な面での効率化を目指すのもいいと思うのだが、まだまだ激しく技術革新が続いている分野は、家内制手工業的な職人気質のスタイルでないと、競争に耐えられないと思うのだが。

たとえばインテルの方は半導体の立体構造化を目指すという。こういうのはすべての技術が密結合して一体化していないと、なかなかできないのではなかろうか。

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自動化ツールもそうだけど“効率”に力を入れるというのは、俺には技術革新の最先端を放棄したようなものに見える。割りに合わないことをしなければ最先端に食らいついていけない。言い換えればそれができる体力を持っていないと、世界の最先端争いには参加できない。

なんか目先の小金しか考えられない最近の日本企業と同じ気がする。安定した技術だけを使い、効率面を重視した経営をすれば、数年間は一時的にもうけが増えるかもしれない。しかし最先端争いから脱落するということは、取り返しの付かない選択なのだ。安かろう悪かろうでは、どんどん事業が縮小していくだけ。

Athronも性能でインテルに勝ったから世間は注目したのだ。値段やコストパフォーマンスで勝っても、所詮は隙間商法に過ぎない。王者(インテル)が本気を出せば、あっという間に潰されてしまう。もっとも今回の『Bulldozer』はコストパフォーマンスですら負けているのだが。

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オーバークロック世界記録とか騒いでいるけど、裏を返せばこういうパフォーマンスでしか耳目を集められないのだろう。8コアというのも看板に偽りありという人もいる。実質4コアで、8コアというのはインテルのハイパースレッドと同等だろう、と。ようするに「4コア8スレッド」というべきところを「8コア8スレッド」だと言いはるのは、営業戦略以外のなにものでもないのだ、と。

それにしたって4コア8スレッドの『i7-2600』にも大きく負け、4コア4スレッドの『i5-2500』にもかなわない8コアってどうよ? 整数演算ユニットは8個あるのだから、4個しかない『i5-2500』にすら負けるというのは、よっぽど作りが下手なんじゃなかろうか。さすがに整数演算だけのベンチマークではAMDが勝っているけど、アプリレベルの性能ではほとんどで負けている。

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インテルのハイパースレッドは大半の演算機能は共有していて、メモリのアクセス待ちとかの時間でもう一方のスレッドを実行するだけのようなものだ。だから理屈の上ではちゃんと独立した2つの整数演算ユニットを持つAMDの方が圧倒的に有利なはずなのだが……。1コア当たりの性能を比較するとインテルの方が3割ぐらい高いんだよな。コア数でそれが補い切れていない。

『Phenom』の時代、整数演算パイプラインが1コア当たり3本だったのが、 『Bulldozer』になって2本に減っている。これがコア当たりの演算性能を大きく落としている原因のようだ。まあ『Bulldozer』の設計者はコア数を2倍にしたのだから、トータルではパイプラインは3本→4本に増えているということなんだろうけど、やはり1スレッド当たりのパフォーマンスが低いのはかなりマイナスのようだ。なんか致命的判断ミスだな。

まあインテルも過去を振り返れば『Pentium Pro』で32bitにチューニングしたため、当時まだ数が多かった16bitアプリ(なにしろWindows 95の時代)の速度が逆に遅くなって不評だったというミスがあったが。

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週刊アスキーの予想価格では3万3800円となっている(ただし水冷クーラー付き)。現状『i7-2600』が2万5000円ぐらい、『i5-2500』が2万円以下なのに、こんな値段で買う人がいるのだろうか。

週刊アスキーの記事ではAM3+ソケットがそのまま使えることに着目し、『i5-2500K』で一式組み直すと6万円かかるのに、『Bulldozer』ならCPUの値段だけだから3万4000円ですむと述べている。『i5-2500K』の場合CPUとマザーボード(合計2万9000円)の買い替えはともかく、なんでHDDやOSの値段までカウントされているのか理解に苦しむが、雑誌編集者も苦労するね(苦笑)。

CEOも交代してしまったし、もうAMDがかつてのように輝くことはないのかもしれない。

参考サイト:
「半導体業界最強にして最低と言われた男。それでも愛され続けたかつてのAMD社長…その男、ジェリーサンダース(1) 」2010年09月16日『Amazonの悪魔』
http://konozama.jp/amazon_devil/2010/09/amd-sanders1.html

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

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