東京都北区 町会・自治会の加入率が減少、加入促進の策とは

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東京都北区 町会・自治会の加入率が減少、加入促進の策とは

2016年1月19日、東京都北区は「町会自治会の加入促進に関する協定書」を(公社)東京都宅地建物取引業協会北区支部、(公社)全日本不動産協会東京都本部城北支部、東京都北区町会自治会連合会との4者で締結した。「隣に誰が住んでいるか分からない。地域社会で顔が見えない。少子高齢化が進むなかで、地域のきずなが薄らいでいるのではないでしょうか」と北区地域振興部副参事の鈴木啓一さんは言う。「5年前の東日本大震災の際、東京も大きく揺れ、帰宅難民が出るなど防災上の課題もあぶり出されました。このとき行政だけでは対応できなかったことも多く、町会・自治会を母体とした自主防災組織が初動時に動いてくれ、たいへん助かりました」と振り返る。

例えば、2015年7月に北区上十条5丁目で発生した住宅火災では、近隣の住民が手を取り合い、初期消火活動を行って被害拡大を未然に防いだ。日ごろから町会内で消火訓練を行っていたことが役だったのだ。鈴木さんは「地域防災の面において、あらためて町会・自治会の役割の大きさを見直しました」と説明する。

都市部における地域コミュニティの希薄化への問題意識から、北区では、地域における人と人とのつながりを大切にし、住民が地域への愛着を深めるとともに積極的に地域活動へ参加できるしくみをつくりだそうと、2014年度から「地域のきずなづくり推進プロジェクト」をスタートさせた。これは、地域の「つながり」や「支えあい」の大切さを見つめ直すことを目的に、さまざまな取り組みを進めている。この「町会自治会の加入促進に関する協定書」も、「地域のきずなづくり推進プロジェクト」の一環だ。

この協定については、町会・自治会へ加入するメリットやその主な活動内容などについて紹介するチラシを北区が作成・発行し、東京都宅地建物取引業協会北区支部や全日本不動産協会東京都本部城北支部の会員である不動産事業者が、賃貸住宅や住宅販売の仲介のために訪れた区民に、来店時や契約時にそのチラシを配布し、町会・自治会への加入を促そうという取り組みである。【画像1】区内不動産事業者から、賃貸住宅や住宅購入などで北区に住むことになる人に、町会・自治会加入の案内チラシ(北区作成)を手わたしてもらう協定を交わした(資料:東京都北区)

【画像1】区内不動産事業者から、賃貸住宅や住宅購入などで北区に住むことになる人に、町会・自治会加入の案内チラシ(北区作成)を手わたしてもらう協定を交わした(資料:東京都北区)

北区には182の町会・自治会。加入率は約7割

そもそも、北区における町会・自治会を取りまく状況はどんなものだろうか。

2016年1月現在、北区には182の町会・自治会がある。北区の総世帯数は年々増加しているが、町会・自治会加入率は2004年度に80.0%であったものが、年々減少し、2015年度には67.1%と、11年で約13ポイント減少している。統計をよく見ると、これまでの11年間で加入世帯数にはほとんど増減が見られず、総世帯数は年々増加している。【画像2】北区の町会自治会の加入率の推移。この10年で約8割あった加入率が約7割まで落ち込んでいる(資料:東京都北区)

【画像2】北区の町会自治会の加入率の推移。この10年で約8割あった加入率が約7割まで落ち込んでいる(資料:東京都北区)

このことから「従来から加入している世帯は変わりなく加入しており、新しく住宅が建てられるなどして、転入してきた世帯の町会・自治会への加入が伸び悩んでいるのではないかと推測されます」と地域振興課地域振興係の門脇淳一さんは分析する。

こうした転入者に向けて、町会・自治会加入を促す窓口として、不動産仲介事業者に目を付けたわけだ。区内の不動産事業者を訪れ賃貸住宅にせよ住宅購入にせよ、担当者が区作成のチラシを手わたすとともに、加入を呼びかけるのだという。

これとは別に、北区では2015年度に集合住宅条例施行規則の改正を行い、階数が3以上かつ15戸以上の共同住宅の新築、増築、改築、用途変更をする際には、建築主又は所有者等が入居予定者に対し、町会、自治会への加入誘導の実施協力を求めている。

町会・自治会の活動、加入するメリットは

地域コミュニティの担い手として町会・自治会を位置づけ、その加入率の動向を見てきたが、町会・自治会とはどういう組織だろうか。加入するメリットはどのようなものだろうか。

まず、町会・自治会とは、各地域内に住む住民によって自主的に組織された団体だ。住民の親睦や共通の利益促進、地域自治のための任意団体・地縁団体である。農村部でも都市部においても、また最近でも団地や大規模マンションなどでも自治会が新しくつくられることがある。

主な活動は、防犯・防災・交通安全活動、環境美化・リサイクル活動、子育て支援・青少年育成事業、地域の親睦を図るための祭りの開催……などが挙げられる。

自治体と住民の橋渡しとしての役割も担うことも多い。北区では、区の広報紙の配布やチラシ、ポスターの回覧・掲示板への掲出、区民まつりの開催、自主防災組織の活動など、行政と連携し行っている。

ただ、住民の加入については義務づけられているわけではない。任意の加入となる。また、月額200~300円程度の町会・自治会費を徴収しているところが多い。

鈴木さんは「新しく暮らしはじめた地域で、いきなり町会・自治会への参加・加入はもしかしたらハードルが高いのかもしれない。地域でのお祭りや防犯・防災活動は町会・自治会主導でやっている。こうした近隣の人の集まる機会を捉えて顔なじみになり、それがきっかけで町会・自治会の担っている活動にふれ、自然なかたちで加入してもらえれば良いのではないか」と語る。加入を促す広報の一つとして、このたびの不動産事業者団体等との連携を考えたのだという。

また、町会・自治会側も古い体質に染まって、閉鎖的であっては若い世代に敬遠されてしまう。こうした問題意識から北区では地域活性化・経営コンサルタントの講師を迎え、町会・自治会の役員等を対象にした「情報発信力パワーアップセミナー」を2016年2月に開催したという。

住民が、町会・自治会に加入するメリットとしては、年行事としての地域のお祭りや子どもの行事など、地域と結びつき楽しめるイベントへの参加などの機会を得ることができそうだ。その延長として、防犯や防災時の助け合いなど、もしものときの備えにもなる。

「東日本大震災、また熊本地震のように、近年の大災害を機に、若い世代においても、地域コミュニティへの関心、つながりによる安心感を求める思いは強くなっていると感じます。そうした身近な繋がりとして、町会・自治会が見直されています。行政では、お住まいの地域の町会・自治会の案内、ご紹介ができます。気軽に問い合わせてほしい」(鈴木さん)と語る。●取材協力

東京都 北区
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