コールセンターは本当にAIに代替されるのか?

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こんにちは、モンキージェットです。
昨日(2016/05/09)、エン・ジャパン株式会社にて、以下のニュースが配信されました。

AIに代替される可能性が高い業務は 「一般事務」「経理」「コールセンター」。 一方、AIに代替されにくい業務とは…? ―『ミドルの転職』コンサルタントアンケート集計結果―
http://corp.en-japan.com/newsrelease/2016/3245.html

この記事の中で、アンケートの結果『コールセンターの仕事』は10年から20年以内にAIに代替されると予想できる仕事第3位と書かれています。僕は過去にまさにそのコールセンターでアルバイトをしていましたが、感覚としてはあんまりそう感じません。本当にAIに取って代わられるんでしょうか。

さっそくですが、僕の結論は「代替されない」です。もうちょっと突っ込んで書くと、「部分的にはAIが利用されるけれど、結局それに似たような業務に関わる人間は一定数残る」です。

現在でもコールセンターの仕事の一部は全部機械音声が回答してくれたりするものもあります。例えば銀行や金融系の資産情報の確認(webでやる人が圧倒的多数だと思いますが)や、家電や携帯電話の問い合わせなどです。でも、これって機械音声ってだけで、あんまりAI関わってないですよね?

そもそもAIってなんだろうと思って、われらがwikipediaをひも解くとAIというのは「人工知能(artificial intelligence)」というもので、定義もわりと曖昧な様子。たぶん世間的には「人間の代わりに状況判断をして、的確な反応を返してくれる機械」とでもなるんでしょうか。いちおう今回はこの定義に則って考えてみます。

で、もしAIがそのようなものだとすると、コールセンターの自動受付って少なくともいまのところは全然状況判断をしてくれるものではなくて、「金額の確認をする場合は1を。ご契約内容の確認は2を。それ以外のご用件の場合は9を」とか状況判断は結局のところ利用する人間がやってるんですよね。こっちが「携帯電話のMNPしたいから予約番号発行してくれないかなー」と電話をかけるとなんやかんや時間をかけてあれこれ番号を押して、結局はオペレータさんにつながります。
それなら最初から、
AI「ご用件を仰ってください」
ぼく「MNPしたいです」
AI「予約番号はhogehogeです」
でいいのに、ですよ。
ここでAIが利用されないのは、けして技術的に出来ないからじゃないと思います。技術的な問題以外の理由で代替できないのです。

第一の理由「営業ができるのか?」

ではなぜ、わざわざ手間ひまをかけてオペレータに対応させるのか?
営業を掛ける必要があるからです。
AI「ご用件を仰ってください」
ぼく「MNPしたいです」
AI「まぁそうおっしゃらずに、何とかうちを使い続けてくださいよ〜^^;」
いまのところ、AIにこれができないからです。もしこれが10-20年で出来るようになるならコールセンターの半数くらいは代替できるかもしれません。しかしニュース元を見ていただけると分かりますが、「代替されにくい職業」の第3位が「営業職」だということを考えると、ちょっと難しそうですね。

第二の理由「AIが謝ることは出来るのか?」

AIは過失を認めることは出来るでしょう。
でもきっと謝れないです。
これは多くの場合、感覚的な問題ですが、文化的な問題でもあります。AIにこれらを理解したうえでの謝罪ができるのでしょうか。
仮に僕が何らかのクレームをコールセンターにしたとしましょう。僕はAIに「お待たせしました」「申し訳ございません」と言われても、きっとあんまり気分が良くなりません。たぶん「そんなのは良いから担当者につないでください」と言うでしょう。ここで言う「担当者」とはもちろん人間のことです。僕はきっと、責任ある人間に心から謝ってほしいと思うはずです。
ただ、もしも将来、全てのコールセンターがちゃんと「AI化」されて、それを日常と感じる世代が大多数になったらもっとAIからの謝罪の言葉を受け入れるかもしれません。でも、それには20年では足りないでしょう。

第三の理由「AIとの会話を楽しめるのか?」

統計的な数字を見たことはないのですが、近年では「さみしいから」という理由で119番や110番をする高齢の方がいるようです。本来なら緊急性のある電話を優先させなければならないので、これは命に関わる重要な問題です。これ自体はAIを使えばむしろ改善しそうな問題ですね。重要性のあるものを的確に振り分けてくれるのなら助かる命もあるかもしれませんから。

しかし、同時にここで見えてくるのは「さみしいから会話したい」という欲求があるっていうことです。怪我をしたり足腰が弱くなったりして外出できなくなった、家族がいない、友達もいない、そんな理由から電話をかける人は少なからず存在するのは間違いありません。そうして、そういう人は電話をする機会を作ろうとします。前出のように119番をするかもしれません、細かいクレームの電話をするかもしれません、テレフォンショッピングをするかもしれません。僕は過去に小売業で勤めていましたが、やっぱりそんな理由で電話をかけてきてるのだろうな、と思える人は何人かいらっしゃいました。実際に会ってみると別に怒ってるわけでもなし、むしろお茶をごちそうしてくださったりします。

もちろん、各企業や自治体のコールセンターがこれらの人々の受け皿になる必要があるわけではありません。しかし、「会話をしたい」という需要はあるのです。もしコールセンターから人間がいなくなれば、もしかしたら、この欲求を満たすための職業が新たに生まれて、そちらに人が移動するだけになるかもしれません。あるいは、結局は人が対応したほうが満足度が上がる傾向になり、コールセンターに人が残り続けるかもしれません。

なくなるタイプのコールセンターもある

なくなるとすれば、上記の3つの要素がまったく必要ない場合です。最初に書いたような金融系の情報を引き出すだけのものや、修理の受付をするだけのものはAIに取って代わられることはあるかもしれません。これらは精度さえ上がれば十分対応できそうです。
(余談ですが、数年前ある大企業メーカーのコールセンターは部分的に音声受付をしていました。ただし精度はすこぶる悪く、僕が何度も電話に向かって「温水便座!温水便座!」と連呼してもなかなか聞き取ってくれず、結局つながったのが冷蔵庫担当だったときは、まぁこういうのは当分先だな、と思いましたね!)

でも本当は少し期待してる

おもに上の3つの理由から、「コールセンターはなくならない」と僕は結論付けました。
でも、本当はちょっと期待してたりもします。
初音ミク「ご用件を仰ってください」
ぼく「MNPしたいです」
初音ミク「そこをなんとか、お願いします〜」
ぼく「MNPするのやめようかな…」
初音ミク「わーい!」
ぼく「でも年間で2万円くらい安くなるしなぁ…」
初音ミク「ううぅ…;;」
ぼく「やっぱり残ります^^」
てな感じになったらどうでしょう。たぶん僕は一生MNPできないでしょうね…。
これは、ニュース元にもあるように、営業の要素をキャラクターで埋めているからです。

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「営業においては、人ならではの『コミュニケーション』や『個性』『キャラクター』などが、相手との関係構築に必要とされる要素の1つであると思う」「相手の感情やその場の状況をみてコミュニケーションをとらなければ、商品が良くても売れないと思うため」
エン・ジャパン”http://corp.en-japan.com/newsrelease/2016/3245.html”より抜粋

この場合でいえば初音ミクという『キャラクター』が、高度なAIを持ってコミュニケーションを取ってくれるから成立します。

いまのところ、AIの活用を期待できるのは初音ミクであるとか、女子高生AIりんなとか、キャラ付けがされたものだけのような気がしています。それでももし、将来的にこれらのキャラクターが電話対応(たぶんそこまで行く頃には音声だけではなくて映像付きになるでしょうけど)してくれるとしたら…いやー、夢が広がりますね!

画像出典
トップ画像「足成」http://www.ashinari.com/2009/05/10-019683.php
引用画像「エン・ジャパン」http://corp.en-japan.com/newsrelease/2016/3245.html

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