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ゆったりとした“島時間”に満たされた会場。ハンバートハンバートと大工哲弘のコラボに、心癒される春の夕べ

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ゆったりとした“島時間”に満たされた会場。ハンバートハンバートと大工哲弘のコラボに、心癒される春の夕べ
純真で、朴訥で、ちょっとユーモラスで――ハンバートハンバートのファンの多くは、そんなイメージを持っているのではないだろうか。しかし、彼らの発する言葉によく耳を傾けて欲しい。たっぷりと余白のある、過剰な説明のない歌詞は、その行間を読むと、実にリアルな日常生活に根差していることがわかる。それはまるで、子供のころに何げなく歌っていた「とおりゃんせ」などの昔から伝えられてきた童謡のように、表面的には他愛もなく聞こえるが、その言葉の裏には、さまざまな教訓が織り込まれているのと似ている。

 1998年に結成された佐藤良成と佐野遊穂によるこの夫婦デュオは、ヒットチャートに顔を出すような曲こそないものの、聴き手の心に深く染み込んでいく“名曲”をいくつも作ってきた。我々一般人と同じ目線で書かれた楽曲は、サウンド的にはアイリッシュやアメリカのアパラチアン・フォーク、さらにはカントリーなどがベースになっているが、そこに素朴な言葉を組み合わせた歌詞と牧歌的なメロディが重なり合うと、オリジナリティ豊かな“大人の童謡”ができあがる。決して派手ではないが、地道にファンを増やし、日比谷野音を満杯にするほどのファンを獲得してきたハンバートハンバート。彼らが八重山民謡の大御所、大工哲弘をゲストに迎えて行われた『ビルボードライブ東京』でのコンサートは、ゆったりとした味わいのある、記憶に深く刻み込まれるような特別なステージになった。

 いつものように飾り気のない、素のままの彼らが登場すると、客席で見守っている熱心なファンの視線がステージに集中する。そして何気ない会話の後、おもむろに「長いこと待っていたんだ」の演奏が始まると、自然と手拍子の音が大きくなっていく。みんな彼らの声に耳を傾け、歌詞を噛みしめながら、自らの日々の生活と重ね合わせて聴いているように感じられる。僕も、ときには目を閉じ、自然と彼らの歌の世界に足を踏み入れていった。

 いくつもの親しんできた歌詞がある。いくつもの口ずさんできた旋律がある。そう、彼らのファンにとっては絶対に手放すことのできない楽曲がいくつもあるのだ。普段は彼らの名前を口に出すことは少なくても、家で独り、繰り返し聴いてきたナンバーが目の前でヴィヴィッドに演奏されていく。そして、それらは何の気どりも粋がりもなく、しっかりと自分たちの足下を見つめている歌ばかりなのだ。さらには、今回のゲストである大工哲弘。沖縄の離島の生活に根差したコクのある三線の響きは、ハンバートハンバート独自のリアリズムと見事に共振し合って、楽曲が伝えようとしている意味に、より強い説得力を加えていく。地域こそ異なるものの、共にルーツ・ミュージックに軸足を置いた両者のコラボはとても親和性が高く、相性のよさを発揮していた。

 また何よりも軽妙洒脱な大工の口から発せられる歌と話は、土地に根付き、日々の生活の中で紡いできた根っこから明るく力強いもの。お互いがレパートリーにしている「生活の柄」を披露したり、佐野と一緒に歌った「おかえりなさい」や、独特の節回しで普段とはまったく違う表情になった「おなじ話」など、ハンバートハンバートと大工哲弘の化学変化はライブのハイライトとしてユニークな響きに。気が付くと会場にはゆったりとした“島時間”が流れていた。商業音楽とは異なるところで産み落とされた八重山民謡も含む大工の歌は、そのまま島の人々の生活のリズムやメンタリティを伝えてくる。

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