4年連続で世界一! ロンドンの黒タクシーが旅行者に支持される理由
ロンドンの黒タクシーってそんなにいいの?――オンラインホテル予約サイト『Hotels.com』が世界23か国の旅行者(4821人)を対象に行った『タクシーに関する意識調査』では、4年連続でロンドンの黒タクシー(Black Cab)が1位になったそうです。『Hotels.com』のユーザーなら、決して“セレブ”ではなく安い旅行を楽しむ人がが多いはず。彼らはなぜ、高い料金を払っても「黒タクシーに乗りたい!」と支持するのでしょうか?
同調査では、「安全性」「接しやすさ」「清潔さ」「価格」「乗り心地」「道の把握度」「利便性」の7項目について、各都市のタクシーを評価。ロンドンの黒タクシーは、世界23か国の28%に支持され、2位のニューヨーク(9%)、3位の香港(7.4%)に大差をつけて総合1位になっています。また、「安全性」「接しやすさ」「清潔さ」「乗り心地」「道の把握度」で1位に選ばれると同時に、20%の人に「一番高い」に選ばれています。
ロンドンの黒タクシーといえば、山高帽をかぶったままで乗り降りでき、車いすのままでの乗車も可能な屋根の高い車体が特徴。今では黒以外の塗装の車両もありますが、いまだに「Black Cab」と呼ばれています。乗り心地も非常に良く、一度経験するとそれだけで
「いい思い出」になっちゃうほどなのですが、黒タクシーが評価される理由はここだけではありません。
黒タクシーの運転手になるには、厳しい試験を突破してタクシー免許を取得必要があります。まず、ロンドン全域の地理を頭に入れて、目的地までの最短ルートを示すという“人間ナビ”とも言える技を身につけなければなりません。ロンドンには、同名の通りがいくつもありますので、運転手は「NW4 ○○street」などのように、エリアコードと合わせて記憶しておき、言われたらすぐにそこへの道順を組み立てる能力を身につけています。
地図だけで道を頭に入れるのは難しいので、タクシー免許を取得したい人はバイクで走り回ったり、ミニキャブと呼ばれる準公認白タクシーの運転手をしながら地理を頭に入れていくことが多いようです。余談ですが、ミニキャブは流しで客を拾うことを禁じられていて、電話で呼んだり店に行って予約します。黒タクシーより安価で値段交渉もできるので、ミニキャブを使うロンドン市民や旅行者も少なくありません。でも、ミニキャブは黒タクシーの脅威とはならない――両者にはやはり雲泥の差があるからです。
さて、試験で問われるのは地理だけではありません。車の全長と同じ幅のライン内で方向転換をするなど、運転技術も厳しく問われます。でも、一度試験にパスすれば仕事からあぶれることもなければ社会的地位も安定するため、免許取得を目指す人は少なくありません。
厳しい壁を越えて免許を取得した黒タクシーの運転手はプライドの高い仕事をします。万が一、自らのミスで道を間違えたりしたときには、黒タクシーの運転手は料金を取ることを固辞することすらあります。渋滞や道路工事の状況まで頭に入れて、スムーズに目的地まで連れていってくれるサービスの良さに、やや高めのお値段もナットク! と気分よく料金を払う人が多いのではないかと思います。ちなみに、黒タクシーはいったん車を降りてから料金を払うスタイル、10%前後のチップを含めてキリのいい金額を渡します。
思えば、タクシーに乗るということは運転手に命を預けるのも同じこと。厳しい免許試験でクオリティを維持するとともに、運転手のプライドを育てるイギリスのタクシー制度は、公共の利益を守るうえで理にかなったものだと言えそうですね。
京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。
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