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55階建てタワーマンションの大規模修繕工事が開始、その難しさとは

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55階建て、高さ185m(屋上ヘリポートまで)、総戸数650戸の超大規模で超高層なマンションの大規模修繕工事が進んでいる。1998年、埼玉県川口市に竣工した「エルザタワー55」だ。いわゆる一般のマンションの大規模修繕工事とは、どんな違いがあるのだろうか?
工期2年、工事費用12億円のまさに大規模な修繕工事

「エルザタワー55」は建設当時、日本一の高さのマンションとして大きな話題となった。当然ながら、筆者も新築時のマンションを見学した。黄色をアクセントに、低層中層高層でデザインが変化する洗練された外観フォルムは、タワーマンションとしての存在感を示すかのようだった。

竣工して17年目に入る2015年3月に、大規模修繕工事が始まった。工期2年、費用約12億。マンションの大規模工事としては、これまでにない規模になる。当然ながら、一般のマンションの大規模修繕工事とは、いろいろな違いがあるのだろう。それを知りたいと思い、取材を申し込んだ。

取材に応じてくれたのは、管理組合で生活環境・広報委員を務められている上杉恒彦さん、同マンションの管理を担当する大京アステージの川名裕之さんのお二人。第一回目の大規模修繕工事着工に至るまでの経緯を伺った。変化する外観が難易度を上げ、大規模修繕工事は紆余曲折

実は、美しい外観フォルムこそに大規模修繕工事の難しさがあった。

タワーマンションの大規模修繕工事の基本的なやり方は、筆者の記事「タワーマンションの大規模修繕、一般的なマンションとどう違う?」でまとめているが、一般的なマンションで使われる枠組足場ではなく、屋上から吊り下げ昇降させる「ゴンドラ」か「移動昇降式足場(リフトクライマー)」を使うことが多い。ゴンドラはロープで足場を移動させるのに対し、移動昇降式足場は建物にレールを取り付けて足場を移動させるもの。

「エルザタワー55」の場合は、「1階~6階」と「7階~50階」、「51階~55階」で外観フォルムが大きく変化する。上から下までゴンドラやリフトクライマーを昇降させれば済むというわけにはいかない。マンションを建設した「元施工会社」に、大規模修繕工事にはどういった方法があるかを提案してもらうところから始まった。

2007年には、管理組合に修繕委員会を設置。出てきた課題は、「元施工会社しか大規模修繕工事ができないのではないか?」ということ。ほかに施工会社として手を挙げるところがあるかどうかを知るために、大規模修繕工事の提案を募った。4社が手を挙げたものの、提案された工事の方法や費用の見積もり額の妥当性など、相当の知識がないと判断できず、また、650戸の合意形成のためには客観的なプロの目でこれを判断していただく必要があるとの考えに至った。

そこで、管理組合に修繕工事の設計や施工監理などのコンサルティングをしてくれる「コンサルタント会社」を選定したうえで、具体的な工事方法や予算を詰めていくことにした。コンサルタント会社の公募をしたのが、2012年11月。大規模修繕工事の検討と並行して敷地改良工事等を企画・実施していたこともあり、ここに至るまでに5年近くかかっている。途中で東日本大震災があった影響も大きいが、過去に例のない高さのマンションの修繕工事の難しさがここにあると思う。

「1階~6階」、「7階~50階」、「51階~55階」で外観フォルムが変わる(東面)。「7階~50階」は矢印のところでデザインが変化。「51階~55階」は右の写真(北面)のように上層に行くほど細くなるデザインとなっている。(写真撮影:住宅ジャーナリスト/山本久美子)コンサルタント会社公募から施工会社決定まで約2年

応募があったコンサルタント会社の書類審査、面談による二次審査、最終審査を経て「東京建物リサーチ・センター」と業務委託契約を締結したのが2013年8月。コンサルタントフィーは、建物劣化診断費用を含み約1800万円だ。

コンサルタント会社は建物劣化診断を行い、マンションの所有者に対して結果の報告会を行った。マンションの劣化状況を所有者にも理解してもらうためだ。そのうえで、修繕委員会と理事会で協議しながら具体的な工事の設計仕様や施工会社の公募条件を決め、見積もりを依頼する施工会社を公募。公募時点(2014年6月)で、経緯や内容について住民への説明会を行っている。

最後に、応募のあった施工会社から工事内容の詳細と見積額の提案を受け、その中から1社に絞り込むわけだが、ここまでくるとそれほど時間はかからない。公募から約4カ月後の2014年9月には、修繕委員会と理事会で施工会社を内定し、翌10月の管理組合の総会で正式に「シミズ・ビルライフケア」に決定した。

この間2年かかっているが、筆者が住んでいる8階建ての一般的なマンションの場合でも、大規模修繕工事のコンサルタント会社や施工会社の決定には同じような工程と期間を要しているので、タワーだからといって 特に長くかかったわけではないと言っていいだろう。工期は2年かかるものの、バルコニー先を作業員が昇降するのは数カ月

では、現在の大規模修繕工事はどのように行われているのだろう?
通常の大規模修繕工事の第一回目は、外壁のタイル補修や塗装、防水、鉄部塗装、シーリング工事などが中心となる。タワーマンションといえども、修繕工事の内容が異なるわけではない。大きく異なるのは、仮設工事の方法や工期などだ。

「エルザタワー55」では、「1階~6階」は一般のマンションと同様の枠組み足場とし、「7階~50階」はリフトクライマー(ただし、35階で外観の形状が変わるためにリフトの形状の改造を施す)、「51階~55階」はゴンドラの仮設工事を行う。

そして、建物は四面あるので、前半は東面と北面でバルコニーからの外壁や防水等の工事を終え、後半は西面と南面で同様の工事を終えるという手順となっている。並行してマンション内の共用廊下の改修工事なども行われている。

上層階から工事をするのが基本で、冒頭の写真の7階までの仮設足場は7階以上に使用するリフトクライマーに人や道具を運ぶための簡易エレベーターを設置するためのものなので、足場が解体されている途中だ。低層階用の枠組足場は2016年春に設置される予定だ。

このように仮設足場の組み方は複雑で、工期も2年と長くなるが、実際に居住する住戸のバルコニーが使えない、バルコニー先を作業員が昇降するといった期間は、数カ月で済む。その点では、一般のマンションの場合と変わりはないと言ってよいだろう。

もちろん数カ月で修繕工事全体が終わるわけではないので、工事車両が出入りしたり、一部の共用部を使用できないなどの不便さは、工事が終了する2017年2月末まで残る。ただ、工事車両と居住者の車両を別のルートにするなど、居住者には十分な配慮をしているという。管理組合の活発な活動が、650戸の合意形成に功を奏した

この規模の大規模修繕工事におけるもう一つの大きな課題は、管理組合での合意形成が650戸に及ぶことだ。使う金額も大きいし、工事中はさまざまに不便を感じることになる。このために、住民への説明会などを要所要所で行い、同じ説明を日を変えて何度も行うことで理解を深めてもらう努力をしている。

さらに、特定の対象向けの説明会も行っている。例えば、枠組足場と昇降式足場の切り替わる階の住戸は、他住戸に比べ仮設工事における影響に違いがあるため、該当する住戸を対象にどういった影響を受けるかについて説明会を行っているし、マンションに居住する子どもたちとその親だけを集めて、工事中の注意点などの説明会を行っている。

また、管理組合の活動自体が活発なことも功を奏している。会計、建物施設、生活環境・広報、防災、ペット飼育などの多数の委員会があり、組合員相互が交流する場も多い。すでに、新築時にはなかった身体障害者等のための駐車場や高齢者等のための1階駐輪場などを、管理組合の判断で増設したといった実績もあった。こうしたことが合意形成を図りやすくしているのだろう。

さて、タワーマンションの新築ラッシュを受けた大規模修繕工事は、今後増えていくことになる。高さが200m近い規模のタワーマンションの先駆的な存在だった「エルザタワー55」は、大規模修繕工事でも先駆的な役割を果たすことになりそうだ。
元記事URL http://suumo.jp/journal/2016/01/15/103918/

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