西岡参議院議長、語る(2) 菅内閣は「共同正犯。連帯して責任を負う」

参議院議長の西岡武夫氏

 参議院議長の西岡武夫氏は2011年6月14日、ニコニコ生放送とUstreamで放送された「山本一太の直滑降ストリーム」に出演した。西岡議長は菅直人首相が「1.5次補正予算案」といわれる法案を編成するよう指示したことについて「チビチビしたことでも出してこられると、国会は対応せざるを得ない」とそのやり方に苦言を呈し、内閣についても「共同正犯」であると非難した。

 以下、山本氏と西岡議長の番組でのやりとりを全文、書き起こして紹介する。

■「”1.5次補正”は延命以外のなにものでもない」

山本一太参議院議員(以下、山本): ここら辺から核心に入っていきたい。今菅総理は国民、それからおそらくメディアにも見限られていると思う。野党だけでなく与党からも、ある意味で言うと「辞めなさい」という大合唱に直面している。ところが議長もご存じの通り、菅総理はいったんは「辞める」という「退陣する」というニュアンスを醸し出して、それによって本当は菅総理に対する不信任決議案に賛成しようと思っていた人たちを「反対」に回した。ところが不信任決議案が否決された直後から今度はもごもごと言い始めて、退陣の「た」の字も辞意の「じ」の字も言わなくなった。こういうことだと思う。

 そこで今国会を延長するかどうかが大きな議論になっていて、菅総理はこれだけブーイングが上がっているにも関わらず辞めない。国会を延長して2次補正(予算案)もやりたい。復興基本法案・・・これは自民党としても通していいと思っているわけだが、エネルギー政策のことまで急に言い始めて。とにかく8月でも9月でも伸ばそうということになってきた。それについて言うと、私は参議院の自民党の政審会長をやっている。非常に慎重にやっていかなければいけないと思うが、もし菅総理が延命のために国会を延長するなどということになってきたら、6月22日の会期末に向けて――もちろんその前に十二分に国民の方々に、なぜ菅政権に辞めてもらわなければいけないのか、議長がかなり(読売新聞への寄稿文でも)雄弁に書いているが、そのことを十分説明して納得してもらって、菅政権の支持率も2割を切るくらいに持っていって。こういうことが条件なのだが、場合によってはやはり参議院でも総理に「No」を突きつけなければいけない。場合によっては総理の問責決議案を出さなければいけない状況は考えられる。

 これが通ると参議院はほとんど菅総理との議論には応じないということなので、相当覚悟が必要だと思う。私はあくまで政審会長としての意見だが、場合によってはそのくらいやらざるを得ないと、国益のために思っている。例えば議長が今仰った、参議院の問責には法的な拘束力がない。しかし総理問責をやることによって、ある意味で言うと参議院はもう菅総理に対して機能しなくなる。万が一総理問責が通ったことになると、議長としてはどう対応されるのか。そういう総理が来た場合でも、例えば本会議のベルを押すことができるのか。ズバっとお聞きしたい。

西岡武夫参議院議長(以下、西岡): これは結論から言うと、問責(決議)が通ったとしても、内閣総理大臣を参議院には来させないということはできないと思う。残念ながら。というのは、もうひとつ問題があるのは、今これだけの(震災の)状況。東日本をはじめ、日本全国いろんな大きな影響を受けている。日本全体のまさに国難だから、いろいろな問題をやっていかなければならない。そこが菅総理の極めてずるいところで、チビチビしたことでも出してこられると国会は対応せざるを得ない。

 だって復興基本法も自民党と公明党の案を丸呑みした。これは(野党・自民党の)政審会長に申し訳ないが、政権側から言えばこんな不見識なことはない。本当は。中身の問題ではなく、そのやり方というのは。自分が今どうやって政権の座に就いて、居続けるかだけを考えて――そういう内閣総理大臣の下の政権だから。今日の夕刊でまたびっくりしたが、「1.5次補正」と言っている。こういう国民の皆さん方を愚弄するようなやり方は、ご指摘があったように延命以外の何ものでもない。やらなきゃいけないことはたくさんある。決断できないからやらないだけで。

 例えば財源にしても、本当に復興のために思い切って国債を出すんだと。私に言わせると建設国債、ほとんどが。(ならば)出せるわけ。だから例えば思い切って農地を、もう塩に浸かってしまった農地を買うとか国有化する。すると、その土地は将来、きちんとした農地として生きてくるんだろうと思う。いろいろやることはたくさんある。それを「1.5次補正」なんていうことを言いながら自分の延命を図ろうと(している)。こういう政治はもう我々が全部・・・参議院も含めて、国民の皆様方から誤解されて「同罪だ」と言われかねないと思う。

山本: 議長のお考えは私もよく分かるし、参議院として立法府として、震災関係のいろんなものが少しずつでも出てきたら、やはり話し合わざるを得ないという議長のお考えはよくわかるが、議長もこれまで新聞の投稿やインタビューで「急流で馬を乗り換えるのはよくない、これは理解できる」と。「しかしながら、急流で馬を乗り換えないというのは、その馬が本気で乗り切ろうとしている気概がなければいけない」と。「むしろ今、急流で馬を乗り換えないことは危険だ」と仰っている。

西岡: そう。

■「憲法に書いてある。『内閣は連帯して責任を負う』と」

山本: ということはやはり、ここはおそらく同じ感覚だと思うが、この政権が一日長く続くとそれだけ政治が停滞し、例えば震災対策についても必要な措置、法案も含めてできなくなってしまう。そういう中で菅総理がこれだけの状況下にあって、内閣支持率も直近のそのNHKでも朝日の調査でも落ちて20%ちょっとになって、おそらく2割を切っていく。原発対応についても、今まで6割くらいの人が「No」と言っていたのが、7割を超える。さらに震災対策に関してもさらに6割を超える人たちが「No」と言うと。民主党の中も「菅総理辞めてくれ」の大合唱。しかしそれでもこの総理が辞めないというときに、議長が仰ったように私も参議院の総理問責は慎重にやらなければいけないと思うが。しかし、ありとあらゆる方法を使って、その政治家として、政治としてこの人に「No」を突きつける。そういう姿勢は議長にも多分理解していただけると思う。

西岡: はい、よく分かる。

山本: そうすると議長が仰ったように、なかなか総理に「来るな」とは言えないと議長は仰ったが、もし仮に、もし本当に総理に対する問責を野党が一致して通した場合、例えばそれが通った場合は、やはり我々としてはなかなか菅総理を迎えての本会議とかは実質的にはできない。委員会もできない。こういう状況になるということには議長にご理解いただけるのか。

西岡: それは分かる。問題はやっぱり、国民の皆様がどう見られるかという問題。私などは、まぁ辛坊(治郎)さんみたいな人は別として、このごろようやく、私がずっと批判してきたことを少しは分かってきていただいている。特に震災後、「今ごろ何を言ってんだ」と。その「急流で馬を乗り換える」という話だが、「そんなことはできないじゃないか」という感じが全体、ひしひしと感じていた。ようやく最近それはだいぶ分かって頂いたなと思っているんですね。問題は菅さんのやりくち、やり方っていうのは、少しずつ出してくる。で、やったかのごとく見せて、これがなかなか。それで1.5(次補正)。それをマスコミの皆様方が、どう見ておられるのか。そしてまた、それを通じた国民の皆様がどう見ておられるのか、そこがやっぱポイントだ。

山本: 議長の仰ったことは大変いいご示唆だと思うが、いずれにせよ参議院でこの内閣を退陣に追い込んでいくときにも、今議長が仰ったように、世論、国民の気持ちに対して、きちっと菅内閣を変えることを納得してもらうと。そのためにあらゆることをやらなければいけないということをあらためて議長のお言葉を聞きながら思った。

西岡武夫参議院議長のイメージは?

 西岡議長の話が面白いが、せっかくアンケートができる機能があるのにやってないので、ここで最初のアンケートをさせていただきたい。ニコ生ユーザーの方々に西岡議長のイメージを。今日は本当にお忙しい中、時間を作っていただき私の議員会館の部屋まで足を運んでいただいた。本当に気さくな参院議長だが。西岡議長のイメージについて、皆さんがどう思っているかというのを四択で聞きたい。「1.練達のベテラン議員」、「2.異色の参院議長」、「3.意外と優しそう」、「4.ちょっぴり危ないかな」。こんな感じで、瞬時にアンケートができるという、なかなか画期的な空間だが。

 まだ時間があるので話を続けさせていただきたいと思うが、西岡議長が最近の発言で仰っていたのが、今民主党内では早くもポスト菅についてのいろんな動きがあり、大臣とか前大臣とか、いわゆる党の要職の方がポスト菅についていろんな発言をされている。その中でまた出てきたのが、私たちが問責を突きつけた仙谷官房長官(当時。現在は副長官)。その、仙谷副長官含めていわゆる菅政権を支えてこられた方々が、「菅さん早く降りて下さい」と、「6月末に降りて下さい」と。私は正しいことだと思うが、こういう方々がいろいろこうポスト菅についていろいろ蠢いているという状況を受けて、議長の方から「ちょっと勘違いしているんじゃないですか」と。すなわち菅政権を支えてきた責任があるにも関わらず、それを忘れてなんかポスト菅についていろいろ言うのはお門違いじゃないかというようなご発言をされたと思う。それについて真意をお聞きする前に、アンケートの結果が出たようなので、ちょっと見せてほしい。

ニコニコ動画・七尾功記者: アンケート結果が出た。西岡議長のイメージはという問いについて。まず、少ない方からいきます。10.1%で「ちょっぴり危ない政治家」。次に「意外と優しそう」、これが14.8%と出ている。次にまぁ、1位を言おう。「練達のベテラン」、これが41.2%。2位が「異色の参院議長」、これが33.9%。以上です。

山本: 分かりました。それでは練達のベテラン議員でおられる議長にもう一度お聞きしたい。さっき私が申し上げた「ちょっと勘違いしちゃいけない」と、「菅政権を支えてきたあなた方に責任はないんですか?」という意味のようなお言葉の真意をお聞きできれば。

西岡: 「共同正犯」と言ったんですよ。だってみんなの責任。憲法に書いてある。内閣は連帯して責任を負うと。何を言ってんだと、これ初歩の初歩。

山本: そうするともう議長から見ると、責任のある人たちが全然責任を取らないと。

西岡: そうです。

西岡参議院議長、語る(3) 「小沢さんは日本にとって一つの存在だと思う」
http://news.nicovideo.jp/watch/nw75399

(岩本義和、伊川佐保子、松本圭司、山下真史、土井大輔)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]全文書き起こし部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv52788408?ref=news#0:15:39

【関連記事】
西岡参議院議長、語る(1) 「国会の運営をやるだけが議長ではない」
松木謙公「造反票」への思いをニコ生で告白(1) 「政権交代時の旗がボロボロになった」
公明党・山口那津男代表がニコ生に初出演 全文書き起こし(1)

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 西岡参議院議長、語る(2) 菅内閣は「共同正犯。連帯して責任を負う」
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。