菅首相、退陣意向表明 全文書き起こし 「震災めどで若い世代へ引継ぎを」

access_time create folder政治・経済・社会

菅直人首相

 菅直人首相は2011年6月2日昼、衆議院本会議に先立って開かれた民主党代議士会に出席し、東日本大震災や福島第1原発の対応に一定のめどがついた段階で「若い世代への引継ぎを果たす」と、退陣する意向を表明した。その上で前日に野党から提出された不信任案については、「一致団結しての否決をお願いしたい」と訴えた。

 菅首相の民主党代議士会での発言全文は以下の通り。

■私の指導力・考え方が不十分であった

 代議士会の輪に本来ならもっと頻繁に出て、皆さんの声を直接聞くべきであったと思っていたが、この間それが果たせなかったことについて、まずお詫びを申し上げたい。この大震災の中、野党の皆さんから私に対して、不信任案が提出されることになった。やはり私に不十分なところがあったことが、野党の皆さんがこういう(震災・原発事故対応の)中であっても、不信任案を出すことにつながったと、このように受け止めている。そういった意味での私の不十分さについて、皆さま方にも大変ご迷惑をおかけすることを、あらためてお詫びを申し上げたい。

 今私たちが置かれた状況は、どういう状況にあるのか、言うまでもない。何としても3月11日に発生した大震災に対して、復旧復興の道筋をつけていくこと。そして原発事故に対して、何としても1日も早い収束を図っていくこと。そのことにすべての力を傾注しなくてはならない。この間、政務3役の皆さんはもちろんのこと、すべてのわが党の国会議員、与党の国会議員、いや、野党の国会議員の皆さんも含めて、私はそれぞれの立場で全力を挙げて、この課題に取り組んできていただいたと、受け止めている。

 もちろん被災者の皆さんから「まだまだ遅い、不十分、なぜこんなことになるんだ」と、厳しい指摘を私自身にもたくさんいただいている。そういった点の不十分さについて、私の指導力、あるいは考え方に、不十分であった部分も多々ある。しかし同時に、これは政治家だけではなく、国家公務員、地方公務員、いろんな皆さんが全力を挙げて、この問題に取り組んでおられる。そのことだけは、お互いに確認できるのではないか。その中でわが党の国会議員、(民主党代議士会の)皆さん方にも全力を挙げて取り組んでいただいている。このことも、お互いに確認できるのではないかと思っている。

■「震災からの復旧復興」「民主党を壊さない」「政権を自民党に戻さない」

 今回、野党から不信任案が提出されることになった。私は皆さんの前で、3つのことをしっかりと目標として、これから取り組み、行動していくことを申し上げたいと思う。1つは言うまでもない。この大震災。まだまだ原発事故は継続中で、復旧復興もこれからがより本格化していく。これに向けて全身全霊をあげて、最大限の努力をする。当然のことではあるが、皆さんにも、国民の皆さんにもあらためてお約束したい。2つ目は、この民主党を決して壊さない。壊してはならない。そういう根本に立って行動する。このことを2つ目にお約束したい。そして3つ目に、今のわが党中心の政権を、自由民主党に戻すことがないように、しっかりと対応していく。この3つのことを、私の行動の基本において進めていく、ということを皆さんの前であらためてお約束させていただく。

 これからの復旧復興の中で、野党の皆さんから私に対して「お前が総理では物事が進まないから、その地位を外れろ」と、強いご指摘を頂いている。私はいま、総理大臣という極めて重い立場を頂いている。その立場に就いたときに最も強く感じたのは、その立場に立って、その責任をしっかり果たしていかなければならない――そのことを今日も感じている。中には、「地位にしがみついて、ありとあらゆることをそのために発言して行動しているんじゃないか」という厳しいご批判もいただいている。しかし私はその立場その地位に立ったときに、その立場その地位に立ったものとしての責任を、どこまでしっかり果たしていくことができるか――。総理という立場であれば個人だけではもちろんない。すべての国家公務員、そしてすべての党の国会議員、内閣のメンバー、そういう立場の皆さんと一緒にどこまで責任を果たしていけるか――。そのことを考えて行動してきたつもりだ。

■一定のめどがついた段階で若い世代へ引継ぎを

 そうした中において、今回の大震災を迎えた。それまでも日本の先送りされてきた多くの課題に対して取り組みたいと、皆さんの前で、国会の席で申し上げてきた。この大震災が生じた中で、まず最優先でこのこと(震災対応)に取り組むことを、当然のこととしてやってきた。私としてこの大震災に取り組む、このことが一定のめどがついた段階で、私がやるべき一定の役割が果たせた段階で、若い世代の皆さんにいろいろな責任を引き継いでいただきたい。このように考えている。

 私には、まだ松山の53番札所から88番札所までお遍路を続けるという約束も残っている。そういった気持ちも含めて、この大震災、そして原発事故に対して、一定のめどがつくまで、ぜひとも私にその責任を果たさせていただきたい。その責任を(民主党代議士会の)皆さんとともに、果たさせていただきたい。そのためにも本日、野党から出される不信任案に対して、民主党、そして衆議院議員の皆さん方の一致団結しての「否決」という対応を、ぜひともお願いしたい。

 先ほど3つのことを申し上げたが、民主党が壊れることなく、そして自民党に政権が移ることがない――そうした道筋を歩み、そして一定のめどがついた段階での若い世代への引継ぎを果たす。そしてその中から次の時代、ぜひとも民主党が責任を持った政党として、国民の皆さんへの理解をあらためて築き上げていただきたい。そのことが国民の皆さんが私たちに、政権交代のときに期待されたこと、そして被災地の皆さんが望まれていることにつながると、私は考えている。どうか私の心情を汲み取っていただき、一致団結の行動で不信任案の否決をしていただくよう、あらためて心からお願いを申し上げて、私の話とさせていただく。

(了)

【衆議院 国会生中継】 ~平成23年6月2日 本会議~

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]菅首相の発言部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv51980658?ref=news#5:45

(岩本義和)

【関連記事】
小沢氏「自主判断で投票を」 内閣不信任案 否決の公算
菅首相、退陣の意向を表明 「震災・原発にめどがついた段階で」
ニコ動のネット世論調査 ユーザーの半数が「内閣不信任案」に理解

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 菅首相、退陣意向表明 全文書き起こし 「震災めどで若い世代へ引継ぎを」
access_time create folder政治・経済・社会
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。