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紛れも無い現実を突き付けられる映画『ドローン・オブ・ウォー』レビュー

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例年にも増して大作が多かった2015年・夏の映画ラッシュ。久々に劇場に足を運んだという人も多かったのではないだろうか。
しかーし!肝心なジャンルがまだ残っている!そう、ハリウッド戦争映画!!戦争映画を見ずしてハリウッド映画は語れない!ということで、今回は10月1日に公開予定の異色の戦争映画『ドローン・オブ・ウォー』の魅力について、少し真剣に迫っていきたい。

『ドローン・オブ・ウォー』(原題:Good Kill)  : 104分
監督 アンドリュー・ニコル (『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』)
主演 イーサン・ホーク (『ガタカ』『6才のボクが、大人になるまで。』)

あらすじ

アメリカ軍のトミー・イーガン少佐(イーサン・ホーク)は、戦闘機パイロットから無人戦闘機(UAV=ドローン)操縦士へと転任した優秀な軍人である。ラスベガス近郊に整備された綺麗な住宅街に居を構え、美しい妻そして2人の子供と何不十分ない生活を送っていたトミーだが、実際に行っている任務は「地球の反対側にいるドローンを遠隔操縦し、ミサイルを発射してテロリストを殲滅する」というものだった。そんな中、CIAの極秘任務に参加せざるを得なくなり、度を越した非人道的な作戦に幾度と無く従事することとなるトミー。次第にPTSD(心的外傷後ストレス障害)に侵され、家庭も崩壊の危機に瀕する。そしてトミーはついに、ある決断をするーー。

公式サイト http://www.drone-of-war.com

知られざる「今の戦争」をリアルに描き出す

非対称戦争という言葉がある。現在、アメリカ合衆国が公式・非公式に行っている「戦争」は、この「非対称戦争」に該当するとされている。つまり、正規軍である「アメリカ合衆国軍」が戦っているのは、当該の国家の「正規軍」ではなく、いわゆる「テロリスト」であることがほとんどだ。アメリカ軍は圧倒的な軍事力を持ち、規律の取れた軍事作戦を明確な命令系統で行っている、いわゆる「しっかりとした」軍隊であるのに対し、その敵は相対的に軍事力が乏しく、資金も無く練度も低い場合が多い。そのような「敵」を、アメリカ軍は地上からは目視すらできないはるか上空から無人機で「監視」し、必要があればミサイルで「狙い撃ち」しているのだ。
この映画は、そんなアメリカ軍が現在も実際に行っている作戦の一端を、大々的に大衆の目に晒すというある意味非常に衝撃的な作品と言える。そして、今こうしている間もアメリカでは誰かが「ドローン」を遠隔操縦しているという「事実」が、映画観賞後に観客の心に重くのしかかるのは間違いない。


トミーの上司役として、上層部との板挟みに苦しむブルース・グリーンウッドの演技も見どころだ。

「良き父親」が大量殺戮者となってしまう瞬間

名優イーサン・ホーク扮する本作の主人公トミーは、多少寡黙でありながらも家族思いで真面目に仕事をこなす「どこにでもいそうな」アメリカ人だ。戦闘機パイロットとして何度も戦地に赴き、その度にアメリカの為に尽くしてきた立派な軍人でもある。
しかし、アメリカが対テロ戦争を本格化させた事によるドローン操縦任務の増加は、確実にトミーの心を蝕んでいった。昔のように戦闘機パイロットとして空を飛びたい本心とは裏腹に、増え続けるドローン任務。この心の葛藤に加え、エアコンの効いたコンテナからゲーム感覚で敵兵を殺傷し、仕事終わりには何事もなかったかのように家で子供たちとくつろぐという歪んだ日常が、次第にトミーから人間性すらも奪っていったのである。

そしてある時、上司からCIAの任務を任される事になったトミー。CIAは軍とは別の意思で動いており、その任務内容は一切記録されないようなものだった。電話越しから淡々と伝えられるCIAの命令に、従わざるを得ないトミー。そしてこのCIAの任務こそが、トミーの精神に決定的な打撃を与えるものだったのだ。

妻、上司、そして国家に追い詰められた主人公の「決断」

目を覆いたくなるような過酷な内容の作戦に従事し続け、ジャニュアリー・ジョーンズ演じる美人妻・モリーからも見放され、全てが狂いだすトミー。しかし、トミーは最後に大きな「決断」をする。この決断こそが、トミーにとっての「Good Kill」だったのかもしれない。そして、それは皮肉にもドローンにしか出来ない「決断」でもあったのだ。この意外な結末に、トミーの漢気を感じざるを得なかった筆者である。

非常にシリアスな題材を扱っている本作。娯楽大作に隠れがちな2015年の戦争映画だが、「現実の戦争」について考えるには良いきっかけとなるのではないだろうか。また、日本で「ドローン」が一般的になりだしたのもこの2015年。もはや他人事ではないこの「ドローン」についても、今後深く考える必要が出てきそうだ。

映画『ドローン・オブ・ウォー』は10/1から全国ロードショー。


youtube特報

※画像は公式サイト[http://www.drone-of-war.com]及びYoutube[https://www.youtube.com/embed/4fGputLUYc4]から引用。

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