「不名誉な全国1位」は徳島県議会(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

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兵庫の号泣県議騒動以来、「デタラメな使われ方」が一気に明るみに出た地方議員の政務活動費。今月6日に全国で最も悪質な使われ方をした地方議会を決めるコンクールが開かれ、徳島県議会がダントツの得票で1位に選ばれた。

主催したのは全国81の市民オンブズマン団体が加盟する「全国市民オンブズマン連絡会議」(事務局・名古屋市)。9月5~6日に神戸市内で開いた全国大会の一環として、「うっとこ(関西地方の方言で「うちの議会」)はこんなにひどい」コンクールを開催した。

全国各地の加盟団体がエントリーした「ひどい支出」は16県議会と2政令市議会の全18件。このうち宮城県議会では年間117回、タクシーや代行者を利用した議員や年度末にアップル社のタブレット端末「iPad」を配布した会派など4件がエントリー。ほかにも海外視察を他人に丸投げして800万円以上の費用を請求していた愛知県議会の議員や、架空の調査委託費をねつ造した神戸市議会の会派など悪質な事例がズラリと並んでいる。

ちなみに今年8に起訴された兵庫県の号泣県議は「殿堂入り」との扱いで、今回のコンクールの対象からは外れた。

投票の結果、出席者の半数近くが「最も悪質」と判断したのが徳島県議会。同議会からは4件の事例がエントリーされたが、その内容はどれもひどい。

1件目は議長経験もあるベテラン議員が領収書の日付や金額欄を書き換え、政務活動費を虚偽請求していた事例だ。虚偽請求の総額は5年間で710万円以上。当該議員は問題発覚後に710万円を返還し、引責辞任した。

2件目は地元の飲食店や印刷業者から白紙の領収書を入手し、自分で日時や金額を書きこんで会議費や広報費として政務活動費を架空請求していた1年生議員の事例。総額は168万円で、問題発覚後は全額返還して議員辞職している。

3件目も議長経験のあるベテラン議員が、事務用品の購入費と称し、実際には法事の返礼用のワカメや商品券、子供服などを購入していたという事例。虚偽請求が明らかになった約23万円は後に変換し、その後、政界を引退した。

最後は実際に購入した書籍とは異なる書籍名を記載して資料購入費を請求し、実際には子供用の絵本などを購入していた県議の事例。この議員は80代、90代の高齢者に対する人件費も請求していたが、実態が不透明だと指摘され、後に計141万円を返還している。

領収書を偽造して架空請求するなどもってのほか。活動費を私的に流用したというのもかなり悪質だ。議長を経験したような大ベテランが関わっていることから、徳島県議会では政務活動費の使途に関するモラルが相当低下していたことをうかがわせる。

政務活動費は議員が市民のために活動するうえで最低限必要な経費を賄うため、市民の税金から捻出する予算。都道府県議会で平均421万円、政令指定都市議会で平均396万円。どの議会でも本当に必要な分だけ使い、余った金額は返還することとなっている。

ところが一昨年来、明らかになってきたのは多くの議員が「経費枠」を「手当て」と勘違いし、「全額使い切らないと損だ」とばかりにデタラメな支出を繰り返していたという事だ。そして、そうした実態は最近まで市民の目にさらされることはなかった。

国会ではたびたび「政治とカネ」が審議のテーマとなるが、地方議会ではこれまで議員同士による相互監視が機能してこなかった。明らかになった不祥事の多くは収支報告書を見れば簡単にわかることだが、他の議員や事務局が指摘することはほとんどなかった。

議会の中になれ合いムードが蔓延し、暗黙の了解の下で不正な支出がはびこっていたのだろう。事務局を務める役人も政治家に嫌われるのを恐れ、見過ごしてきたのではないか。マスコミの注目度が低いのも不正が蔓延していた理由の一つかもしれない。

最近になって市民オンブズマンの指摘に注目が集まるようになったが、本来は議会が自浄能力を発揮すべきだ。徳島のみならず、各議会は「うっとこはこんなにひどい」コンクールの開催という不名誉を重く受け止め、自らの身を律していかなければならない。

 

(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

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Photo : https://www.flickr.com/photos/67196253@N00/4042284662/

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