作家・東浩紀氏、震災前の著書は「黒歴史みたいなもの」

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 アニメやマンガだけでなく、人間の特徴を表す言葉としても浸透している「キャラクター」という概念について、東浩紀氏(批評家・作家)と斎藤環氏(精神科医・評論家)が議論する番組が2011年4月12日、ニコニコ動画で生放送された。斎藤氏の最新のキャラクター論には、東氏の著作『動物化するポストモダン』に批判的な面があり、両者の丁々発止のやりとりが期待された。しかし東氏は、東日本大震災前の自身の著書ついて「黒歴史みたいなもの」と自嘲気味に語り、議論に積極的ではなかった。

 東氏は3月11日に発生した東日本大震災以降、自身の中で大きな変化があり「ニュー東」「東3.0」になってしまったと語った。ゆえに番組のキャラクターとは何かという問題についても、思考することの虚(むな)しさを感じるという。キャラクター的想像力を支えていたのは「平和で豊かな日常」であり、その日常が大きく変わってしまったことがその原因であると東氏は分析した。

「そもそも(震災前の)日本社会はダメな方向に向かっていた。それまでの問題が解決されていないのだから、復興の興奮が収まれば同じ問題が出てくる。政治は混乱しているし、東電の対応もあんな感じだし、海外からも批判され始めている。このまま混乱が続くとすれば、日本社会は急速にダメになる。簡単に言えば貧しくなる」

 と、東氏。続けて、「強固な日常がずっと続いているのがオタク文化の前提だった。しかし、それも(阪神・淡路大震災が起こった)95年以降壊れてきていた。強固な日常性の幻想を引っ張って、ようやく2011年までもってきたんだけど、それが無くなっちゃった」と話した。

 さらに、いわゆる「3.11」以降のキャラクター文化については、

「『キャラクター的想像力』というのは、もともと中高生のもの。ところが、ゼロ年代には、それが30~50歳代にまで侵食していた。そういう傾向は退潮すると思う。キャラクター表現みたいなものが社会の隅々にまで浸透するという流れは一回引くだろう」

 と語った。

ニコ生トークセッション いま、「キャラクターと日本人」を考える 東浩紀×斎藤環
「作家・東浩紀氏の『黒歴史みたいなもの』発言」から再生
http://live.nicovideo.jp/watch/lv45948912#13:35
(番組はタイムシフト機能で2011年4月19日まで視聴できる)

(鏡)

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