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「もう無理」と言っても耳を貸さなかったワタミ これじゃ「カウンセリング」の意味はない

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係争中のワタミ過労自殺裁判において、被告のワタミ側は「店長がカウンセリングをしたのにもかかわらず、過労自殺した女性社員の異変に気づくことができなかった」旨の主張をしているそうです。

一方で原告の遺族側は、カウンセリングを通じて店長が女性から心身の異常があることの訴えを受けながら、業務軽減を図るなどの具体的な措置を行っておらず、「聞きっぱなし」になっていたと反論しています。(文:ナイン)

確かに「シート」は存在したが…

そもそも、ワタミにおける「カウンセリング」とは何なのでしょうか。簡単にいうと、面談によって部下から話を聞く機会を上司が設けるというものです。私が勤務していたころは、会社から月に一度は必ず行うように言われていました。

カウンセリングの目的は、部下の仕事の状況の確認と、部下の心の状態を知ることの2つです。部下はカウンセリングを行う前に、「カウンセリングシート」に、現在の仕事での悩みや将来の目標、いま手がけている仕事の進捗状況などを記入します。

このようなカウンセリングを業務に組み込んでいる会社は、そう多くないでしょう。その点でワタミは、社員のケアをする会社であるという見方もできるかもしれません。

一方で、結果的に悲劇が起こっているわけですから、このような仕組みが形骸化していて、きちんと機能していなかったのではという見方もできます。原告側としても、「実態がおざなりになっていたのであれば、会社の安全配慮義務が果たされたとは言えない」と考えたとしても無理はありません。

私自身、ワタミの社員であったころ、上司である店長からカウンセリングを受けていました。しかし私の経験に限って言えば、「しっかりやっていた時期は新卒の頃くらい」でした。カウンセリングは「やらされ仕事」になっていた感が否めないのが正直なところです。

「社員なんだから頑張れよ」という社風が追い詰める

カウンセリングがおざなりになっていた理由は、そのしくみにも関係があります。社員は店に備え付けられているパソコンで「カウンセリングシート」を作成し、店長を経由して担当の課長に送ります。

したがって、「今月のシート書いといてね」と部下に言うだけで、面談を行わずに課長に転送する店長もいました。これでは、面談によって「顔色」や「表情」から社員の様子を把握する本来のカウンセリングが果たせません。

実際に、私の上司であった店長たちは、ほとんどそうでした。もちろん中にはちゃんと行う上司もいるでしょうが、周りの同期の話や、私の上司を見る限り、ワタミの外食社員の7割は、しっかりカウンセリングを行っていませんでした。

さらに、ワタミの現場にはもっと大きな問題がありました。仮に「心身の不調」がカウンセリングで分かったとしても、解決に向けた動きが難しい雰囲気があったのです。

ワタミのような外食チェーンでは、従業員の9割はアルバイトです。アルバイトのシフト次第で、社員の勤務体系が変わってきます。店長は「業務が厳しい、仕事についていけない」と部下に言われたとしても、シフトとの兼ね合いを見なければなりません。

特にワタミには「社員は店の責任を持つ」という社風があり、シフトに穴が開いていたら、無理をしてでも社員が入らざるを得ないのです。店長が女性社員に「業務が厳しいから、シフトを見直してほしい」と言われたとしても、「社員なんだから頑張れよ」などと言い返されてしまう社風なのです。

「無理やりやらせれば無理じゃなくなる」と創業者

この社風は、創業者の渡邉美樹さんの発言にも表れています。2006年に放送されたテレビ東京の「カンブリア宮殿」で、MCの村上龍さんに向かって渡邉さんはこう発言していました。

「よく『それは無理です』って最近の若い人たちは言いますけど、たとえ無理なことだろうと、鼻血を出そうがブッ倒れようが、無理やりにでも1週間やらせれば、それは無理じゃなくなるんです」

入社数か月の新入社員である女性が自殺したのは、その2年後の2008年のこと。カウンセリングで「それは無理です」と言ったとしても、「無理やりにでもやらせれば無理じゃなくなる」としか考えない創業者の下で、改善は難しかったのかもしれません。

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