アイドルの縮図を見た!『DIANNA☆SHOWCASE』公演レポート
以前おもちゃショーでの取材時(拙稿 https://getnews.jp/archives/1008047 参照)に遭遇した礼儀正しすぎる名古屋のキッズアイドル「PREDIANNA」から、「東京で定期公演をするので見に来てください。」とのオファーを受けたので行ってみた。
件のPREDIANNAのお姉さんグループである「DIANNA☆SWEET」と同時公演だというので、いったいどんなグループなのか知らないまま見せていただくことにした。
芸能記者ではないので、ほとんど無知識のまま見たままをレポートする。
素人がライブに行って、メンバー、運営、ヲタさんの三者それぞれから取材したらいったいどういう事になったのか。
そのような視点でご覧いただきたい。『DIANNA☆SHOWCASE vol.5 in TOKYO』間もなく開演。
まずは、メンバーの紹介から。こちらはお姉さんグループのDIANNA☆SWEET。平均年齢15.2歳。
ジュリア萌(14)、鈴木杏実(14)、若葉愛(15)、岡本桃香(17)、永山風花(16)いずれも敬称略。
続いてPREDIANNA。平均年齢は12.4歳。
りのん(12)、侑杏(13)、知優(16)、桃世(9)、由莉奈(12)いずれも敬称略。
開演前なので、リハーサルの真っ最中。
DIANNA☆SWEETは月の女神のように美しく、スイーツのように可愛らしくがコンセプト。2013年11月にインディーズデビュー。
リハーサルとは言え、真剣そのもの。
PREDIANNAのPREはプレミアムの意。高級感のある上質なパフォーマンスを見せるユニットというコンセプト。
この日は記者の他に大手スポーツ紙等、計3媒体が取材。
ライブハウスに行ったことのない記者の現場の第一印象は「まずい、暗い。写真撮れないかも。」
リハーサル中はスピードライトを使用させてもらったが、まさか本番中にストロボをたくわけにはいかない。
明るい高級レンズを持ち合わせていない記者は、まずこの段階で当惑するしかなかった。
リハーサルと、フォトセッションが終了し、いよいよ開演。
オールスタンディングの会場で柵の前、バミリ0番の目の前に陣取ってカメラを構える。不安だ。
セットリストはあらかじめもらっていたのだが、まずはDIANNA☆SWEETが4曲披露する。
アイドルといってもAKBくらいしか知らない記者は、柵の後ろでコールやミックスを打つファンに圧倒されながらシャッターを切る。
全体的にAKBの掛け声と似ているが、少し静かな印象。
しかし、メンバーとファンとの物理的な距離は近い。2メートルはない。
瞬く間に4曲が終了して舞台から去っていった。
距離が近いので、声を「掛けている」というよりも、「会話している」という印象。
センター的な存在はいるのだが、パフォーマンスで入れ代わり立ち代わり移動するので、お目当てのメンバーがセンターに登場する機会も多い。
話は前後するが、公演後の短い時間でインタービューした。
全員が名古屋出身だという事だったので、名古屋メシで好きな、あるいはお勧めを聞いてみた。
まずはDAINNA☆SWEETから。取材対応に慣れているようで、スムーズに答えが出てくる。さすがだ。
永山風花 あんかけスパ いきなり名古屋のB級グルメできた。
若葉愛 きしめん 名古屋メシ王道のひとつ。
ジュリア萌 みそ煮込み これも有名どころ。ふたを皿のように使って食べる。
鈴木杏実 手羽先 食べ方にコツがあるが、慣れれば一皿は簡単になくなる。
岡本桃香 みそかつ 名古屋でとんかつを注文しても「みそかつ」とは書いていない。デフォルトでみそだから。
続いてPREDIANNA。こちらは9歳の子がいるので「名古屋メシ」という言葉がわかりそうにない。
「名古屋のごはんで好きなものは何ですか?」という質問にならざるを得ない。
そしたら、何やら相談が始まった。どうやら、空気を読んで答えが被らないように会議をし始めたではないか。
特に条件は付けていないので、好きなものを答えてくれればよいのだが、礼儀正しすぎるアイドルはここでも神対応を見せてくれた。
どうやら「答弁」がまとまったようなので、改めて名古屋メシのお勧めを聞いてみよう。
ちなみに質問はDIANNA☆SWEETとは別の部屋で行っているので、お姉さん方とは被るがこれは仕方がない。
由莉奈 あんかけスパ そんなに名古屋の人はあんかけスパを食べるのか。
桃世 手羽先 9歳のこん身の答弁は手羽先だったか。
侑杏 うなぎ と答えたところで、ちょっと違うことに気が付き、また会議が始まる。答弁を修正して「ひつまぶし」に落ち着いた。
知優 みそ煮込み みそは名古屋のソウルフード。
りのん ういろう 実は答えが被らないように配慮したのは彼女だった。だから絶対に被らないと確信した「ういろう」で勝負した。
10分ほどの短い時間内でこんなやり取りがあったのだが、この間に「大人」は一切ノータッチで助け舟を出さなかった。
後で一連のインタビューの様子を見ていたプロデューサーから「取材慣れしてなくてすいませんでした。」と謝罪が入ったが、そんなことはない。むしろ、彼女たちの「小さな心遣い」が逆に彼女たちの魅力を記者に十分に伝えてくれた格好になった。
さて、ライブに戻ろう。
舞台ではPREDIANNAが4曲披露している。
小中学生が目の前でこんなパフォーマンスを繰り広げるのは、正直驚きだがカメラ目線を意識している当たりはプロだ。
MC中に練習生の知優がPREDIANNA正規メンバーに昇格の発表があり、アンコールで7月29日発売のDIANNA☆SWEETの5thシングルを新衣装とともに初披露。アンコールで計3曲を披露してライブは終了した。
来場者特典の物販や、イベントが引き続き行われ、ファンたちは会場を後にした。
メンバーや運営の感じはある程度書いたのだが、肝心のファンの実態はどうなんだろうという疑問はまだ解決されていない。
そこで、記者はそこにいたファンに声をかけて話を聞くことにした。せっかくなのでランチをご一緒することにした。
気が付いたら6名のファンがぞろそろ来て、記者と会わせて7名になった。
この6名のファン、自らを「ヲタ」と呼んでいるので、ここから先は本稿でもヲタと呼ぶことにする。
さて、ヲタ6名の居住地は近い順に東京、神奈川、愛知、岐阜、滋賀、北海道と見事に違っている。関東2名に東海2名、関西1名に北海道1名は異常としか思えない。とっかかりにその辺のことを聞いてみた。
「いろんなヲタがいますが、同じですよ。おいしいものを食べるために新幹線や飛行機で遠くまで行くグルメな人もいるでしょう?」
確かに。でも、交通費は別としても物販で相当お金を使うのではないですか?
「使いますよ、でもそれも同じです。きれいなお姉さんを横にしてお酒を飲むのも、高級輸入車が好きでを食費を切り詰めてでも買ってしまう人も、ドルヲタのようにアイドルや物販でお金を使うのも同じことだと思ってます。ですから白い目で見られようが、後ろ指をさされようが、それが趣味ですから。趣味は理解できない人にはそう思われるものですよ。百も承知です。」
なるほど、すでに悟りきっている。むしろ人間ができている。続けてこうも話してくれた。
「ドルヲタがいなければ彼女たちの仕事もなくなってしまうわけですからね。彼女たちがいなくなると、楽しい遊び場(現場のこと)がなくなってしまいます。だからお金は使わないと。そのために仕事を頑張ってもいいのではないですかね?」
この言葉、実は資本主義経済においては重要で、消費する人がいなければ経済は成り立たないのである。デフレに陥った原因はまさに消費不足で、消費回復が生産を生み、好循環を促す原動力になっていることは昨今の経済を見れば明らかである。
すなわち、彼らドルヲタも日本経済の一翼をほんの少しかもしれないが担っていると言えなくもない。
「私たちは、全員最初からこのグループを推していたのではありません。48グループやアイドリング!!!、ももクロやチームしゃちほこなど、いろいろなグループのドルヲタだったんです。それぞれの推しているグループの運営方針が自分の価値観と合わなくなったり、不満があったりして、また地下に潜った(メジャーアイドルから地下アイドルに推しを変えたという意)というわけです。地下アイドルなんて山ほどありますから、たまたまその時のタイミングが合っただけで、現場を回す(ひとつの現場が終わると次の現場に移動すること)ヲタもいますよ。それもいいじゃないですか。」
今度は逆にヲタさんたちから「記者さんは、なぜこのグループを取材されたんですか?」という質問が投げかけられた。
おもちゃショーの取材時に偶然いたので、その縁で…という話をすると一同どよめきだった。
「え、あの記事書かれた記者さんだったのですか?あー、ありがとうございます!」
おもちゃショーレポートのごく一部だったのだが、あの記事はSNSで回りまわってヲタさんの大半が読んだとのこと。
ここにいるヲタさんたちは、記者が書いた記事の読者だという事になるのか。
この記事だって採用されるかどうかわかりませんよ。とけん制したのだが、それでも見てもらえるだけでありがたいと、運営のような喜びようだ。この感覚がドルヲタの素晴らしいところだろう。
続いて、「記者さんはあえて推しメンを選べと言われたら誰にしますか?」という質問が。
ほとんど話したこともなしい、そもそもよく知らないので写真でそれぞれのグループから一人を選択した。
「あぁ、彼女たち二人はどちらも入り口なので、記者さんは間違ってませんよ、正常です。」
と、お褒めの言葉を賜った。
2時間ほど、ヲタさんたちから話を聞いてお開きとなったわけだが、彼らはそれぞれ次の「現場」へ急いだり、帰路についたりしたようだ。
「どうせお金を使うなら楽しい方がいい、もっとあおってほしい」とまで言い切ったヲタさんたち。
それにどう応えるのか苦心する運営側。
未来の夢に向かって突き進むメンバーたち。
三者それぞれの目に映っているものはビジネスを超えた「信頼」なのかもしれない。
記者の目に映ったのは「そこにいる全員が一人残らず楽しそうにしている姿」だった。
※写真はすべて記者撮影
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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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