【大人になっても読みたい児童文学】『エルマーのぼうけん』(作:ルース・スタイルス・ガネット 絵:ルース・クリスマン・ガネット)
幼い頃に読んだ絵本や物語を、ふと思い出してしまうことはありませんか。大人になってからも、心にひっかかっているあのシーンや、あのフレーズ。この記事では、そんな懐かしい児童文学作品をご紹介します。今回は、『エルマーのぼうけん』(作:ルース・スタイルス・ガネット 絵:ルース・クリスマン・ガネット 訳:渡辺茂男/福音館書店)です。
『エルマーのぼうけん』
主人公のエルマー・エレベーターは、ある日、年老いた野良猫に出会います。「空を飛んでみたい」と語ったエルマーに、猫は“どうぶつ島”で会った、かわいそうなりゅうの話をします。
“どうぶつ島”はジャングルが生い茂り、猛獣ばかりが住んでいる恐ろしい場所。島の真ん中には、大きな川が流れており、橋はかかっていません。だから、向こう岸に渡るのも、上流まで一周りして行かないといけないので、動物たちはとても不便に思っていました。そんなある日、島へ子どものりゅうが雲から落っこちてきます。りゅうは、羽を怪我したせいで、雲に帰ることができません。それを良いことに、動物たちは、りゅうの首に縄を付けて、川渡しの便利な道具として使うことにしたのです。かわいそうに思った猫は、そのりゅうに『いつかきっと助けてやる』と約束して、“どうぶつ島”を後にしました。
その話を聞いて、エルマーはりゅうを助けに行くことを決意します。果たして、エルマーは無事にりゅうを助け出すことが出来るのでしょうか……。
“エルマーのもっていったのものは、チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブいりはみがき、むしめがね六つ、さきのとがったよくきれるジャックナイフ一つ、くしとヘアブラシ、ちがったいろのリボン七本、『クランベリいき』とかいた大きなからのふくろ、きれいなきれをすこし、それからふねにのっているあいだのしょくりょうでした。”
(『エルマーのぼうけん』P.19から抜粋)
エルマーがリュックサックに詰め込んだのは、これでどうやって動物たちに向かって行くのだろうと、心配になるくらい平和的で、子どもにとって身近な存在のアイテムばかりです。しかし、エルマーは、これらのアイテムを余すことなく上手く使い、エルマー持ち前の勇気と知恵で、危機を乗り越えます。
例えば、黄色く汚れてしまったツノの色に悲しんでいるサイには、“はブラシとチューブいりはみがき”をあげて、夢中で磨いている間に逃げたり。他にも、ワニのしっぽに、“ももいろのぼうつきキャンデー”を“わゴム”で止めて、橋のようになったワニの背中を歩き、川を渡ったり……。アイテムの使われ方もユニークですが、登場する動物たちもどこか憎めない愛らしい性格が特徴です。
1963年の出版以来、幅広い世代の読者から愛され、国語の教科書にも掲載されている『エルマーのぼうけん』。冒険モノ特有のわくわくどきどき感を味わえるだけでなく、次々と困難を乗り越えるエルマーの賢さに感心したりして、続きが気になって、読み進めていくのが、とても楽しくなる1冊です。
ちなみに、エルマーのお話は、第2作『エルマーとりゅう』、第3作『エルマーと16匹のりゅう』が出版されています。今回、登場したりゅうとエルマーのその後のお話なので、続けて読むと、より楽しめること間違いなしです。
『エルマーのぼうけん』
作:ルース・スタイルス・ガネット
絵:ルース・クリスマン・ガネット
訳:渡辺茂男
出版社:福音館書店
定価:1200円
発行:1963年7月
参考:https://www.fukuinkan.co.jp/bookdetail.php?goods_id=831[リンク]
※画像は、株式会社 福音館書店様(http://www.fukuinkan.co.jp/[リンク])より引用しています。
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