【Live Report】矢野顕子&上妻宏光/二重奏~ピアノと三味線による日本文化の継承、NY公演を逆輸入の形で再現~
ピアニスト/シンガーソングライターの矢野顕子と、ソロ・デビュー15周年を迎えた三味線プレイヤー上妻宏光による公演が、5月30日ビルボードライブ東京にて行われた。
本公演は、2014年9月にニューヨークのジャパン・ソサエティーで行われ、矢野と上妻にとって初のコラボレーションとなった公演を逆輸入する形で再現された。個性あふれる二人の演奏は今回“日本文化の継承”を意識しており、民謡をベースにした曲が軸となった。
上妻は黒のスーツ、矢野は黒とシルバーのドレスで身を包み大きな歓声とともに登場。呼吸を合わせていくようなピアノと三味線で奏でる富山民謡の「こきりこ節」が始まると、序盤から「この二人でないと実現できないライブ」であることを感じさせられた。続いて青森民謡「弥三郎節」を披露した後、ステージ上に上妻が一人で残り「津軽じょんから節」の旧節と新節を比較しながら演奏すると、そのテクニックの素晴らしさに観客から感嘆の声が上がった。上妻は、三味線の特徴について“弦を叩くこと”と“即興で演奏すること”だと説明し、後者においてはジャズのようだと語った。続いて上妻と入れ替わるように、矢野が弾き語りで昨年リリースされた自身の曲「海のものでも 山のものでも」と、豪快なアレンジを加えた「いい日旅立ち」のカバーを披露。軽快なリズムで踊っているようなピアノと、誰よりも楽しそうに歌う“矢野顕子節”は観客の目と耳を存分に楽しませた。
再び二人でステージに立つと、互いにNY公演を振り返りつつ、今回の公演について上妻が「民謡を歌うことで日本中を旅しているようだ」と振り返り、今回のコラボレーションを通じて「日本語の響きと良さを伝えたい」と語った。続く、宮城民謡「斎太郎節」では観客も手拍子で参加。民謡独特の“手拍子のタメ”は「日本のグルーヴなんだ」と語る二人の言葉を、客席もともに体感させられた。そして上妻の曲に矢野が詞を付けたという「ソリチュード」では、互いの音が合わさることで曲の切なさがより色濃く表れていた。
アンコールを受け、津軽三味線を演奏する上妻と青森県出身の矢野は、MCに青森弁を交えつつ最後に青森民謡の「ねぶた祭り」を演奏。「ラッセーラー、ラッセーラー、ラッセーラッセーラッセーラー」とおなじみの掛け声で、会場全体を巻き込みピアノと三味線が共鳴し、観客との大合唱で幕を閉じた。楽器はもちろん、民謡や日本の文化の魅力に再度気付かされるような「伝統の継承」と呼ぶにふさわしいステージとなった。
Photo by 矢部志保
◎公演概要【矢野顕子&上妻宏光/二重奏】
日程:5月30日(土)
会場:ビルボードライブ東京
出演:矢野顕子(Piano, Vocal)
上妻宏光(津軽三味線)
セットリスト:
01. こきりこ節
02. 弥三郎節(やさぶろう節)
03. 津軽じょんから節 旧節(上妻宏光ソロ)
04. 津軽じょんから節 新節(上妻宏光ソロ)
05. 海のものでも 山のものでも(矢野顕子ソロ)
06. いい日旅立ち(矢野顕子ソロ)
07. 田原坂(たばるざか)
08. 斎太郎節(さいたろうぶし)
09. ソリチュード
EC. ふなまち唄
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