文科省「性同一性障害」の対応例通知が現場に及ぼす影響
文部科学省が「性同一性障害」児童への対応例を通知
性同一性障害の児童に対して、文部科学省が学校での対応例を全国の教育委員会などに通知しました。基本的には障害を有する児童に対し、全面的かつ具体的に配慮を心がけるような内容ですが、今回の通知により現場である教育機関にはどのような影響があるのでしょうか。
まず、学校側としては具体例を示されたことで、児童への対応がスムーズになります。また、学校側で柔軟に対応することにより、児童や保護者が抱く学校に対する不信の解消、生徒が学校に通いにくい現状問題の解決にも繋がると考えられます。
通知があったからといってすぐに現状が改善されるわけではない
こうした文部科学省のような国家機関による通知は、学校側にとっても生徒・保護者側にとっても大きな後ろ盾となり、教育現場全体を巡り、良い影響をもたらすといえます。さらに、今回の通知では具体的な方法の実行命令ではなく、あくまで柔軟な対応を心がける指針であるところが評価できる点であり、心理的な影響からしても全体として負担の軽減に繋がる通知になるのではないでしょうか。
しかしながら、通知があったからといってすぐに現状が改善されるわけではありません。やはり、実際の教育現場では教員をはじめ他の児童生徒や保護者への対応や理解といった配慮も必要です。通知だけで全てが解決するわけではなく、まずは改善に向けての第一歩だと捉え、社会全体として性同一性障害に対する理解が進んでいくような形になれば望ましいでしょう。
性同一性障害への周囲の理解は進んでいる
ここで忘れてはいけないのが、実際現場で対応に追われるのは教職員だということです。ただでさえ多忙を極める通常業務に加え、さらなる負担を追わせることにならないように教職員に対する配慮や新たな対策も必要です。
性同一性障害への理解に関しては、いわゆる「オネエ」と呼ばれる人々が社会的に活躍しているという背景があってか、今ではその存在を広く認められ、受け入れられるようにもなりました。このように偏見を持たなければ性別や障害のあるなしに関わらず、一人の人間として接することができ、対応方法をなど難しく考えなくとも、自然に理解して受け入れられるようになるでしょう。
障害を抱える児童生徒本人の心の負担軽減が何よりの成果
しかし、児童のような小さい子どもにとって、「オネエ」の人々のように自分の性に対する違和感を簡単に受け入れることができず、苦しいものであるのはいうまでもありません。周りの理解や文部科学省の力強い後ろ盾があるということは、障害ゆえに孤立しがちな本人にとっては何より心強い支えになるのかもしれません。
今回、文部科学省の性同一性障害をめぐる学校対応例通知で何より大きい成果だと考えられるのが、障害を抱える児童生徒本人の心の負担の軽減ではないでしょうか。この通知をきっかけに、学校に通いやすい環境が整えられれば何よりです。また、快適な環境で教育を受けられるという学校本来のあるべき姿に向け、進んでいける取り組みになることを期待します。
(宮本 章太郎/心理カウンセラー)
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