葛飾北斎の娘・お栄を凛々しく描いた『百日紅~Miss HOKUSAI~』原 恵一監督インタビュー
劇場版『クレヨンしんちゃん』シリーズ、『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』等、傑作アニメを次々と生み出す原 恵一監督。浮世絵師・お栄が父・葛飾北斎や仲間たちとともに自由闊達に生きる姿が江戸の四季をとおして描かれる、浮世エンターテインメント『百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~』が5月9日(土)より公開となります。
主人公お栄を演じる杏さんや北斎を演じる松重豊さんをはじめ日本を代表する超豪華キャスト&一流スタッフが集結、主題歌に椎名林檎と話題の本作。杉浦日向子さんによる原作を、美しい映像で活き活きと描いた傑作アニメーションです。
今回は原恵一監督にインタビュー。映画についてのこだわりなど色々とお話を伺ってきました。
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―本作拝見しまして、お栄という一人の女性の凛とした生き方、日本の四季の美しさに見とれてしまいました。この原作をアニメ化するきっかけはどんな事だったのでしょうか?
原 恵一監督:元々杉浦日向子さんの本が大好きで、常々アニメ化したいなあと思っていました。でも、本が素晴らしすぎるので、あの世界観をどうすれば映像に出来るだろうとも思っていて。そんな時に制作会社から『百日紅』を映画化しないか? とお話を頂いて実際に動き出しました。『百日紅』は杉浦さんの作品の中でも特に優れている作品なので色々と迷う事もありましたが。
―どの様な所を一番迷いましたか?
原 恵一監督:原作の中のどのエピソードを使い、どの様に物語を終わらせるかですね。「お猶」のエピソードがすごく好きだったので、そちらを映画の最後の方に使いました。
―お猶の話は切なくて美しくて、本当に泣いてしまいました……。映画の中で移り変わる四季もとても印象的でした。
原 恵一監督:そうですね。四季の描き方は意識した部分です。タイトルにもなっている百日紅の花はもちろん、自然や草木の美しさには注目していただきたいですね。
―また、劇中で登場する浮世絵の数々もリアルな筆遣いを感じるものでした。
原 恵一監督:作画のスタッフの中に、日本画を学んだ事がある人がいたので、色々とお願いをして。葛飾北斎という人物は誰もが知っている才能の持ち主ですから、浮世絵に迫力が無いと説得力が無いですよね。
―すごく迫力がありました。葛飾北斎は知っているのに娘のお栄がこういった人だったんだと、この映画で初めて知る人も多いと思います。私もそうです。
原 恵一監督:北斎と共に絵を描いて、物語の様に強く生きた女性だったとのことです。『百日紅』を映画化する時に、お栄さんは原作の漫画の絵よりも美人に描きたいなと思い、キャラクターデザインを。それで、美人なのだけど眉毛がちょっと太すぎる。そんな所で、お栄のちょっと不器用な生き方を表現しています。
―声優に挑戦した杏さんの声も素晴らしかったです。
原 恵一監督:映画作りに入った頃にちょうど『ごちそうさん』がやっていたので、毎日観ていて、杏さんがピッタリだなと思いました。また、杏さんは歴史好きですから、杉浦さんの作品もきっと読んでいるんじゃないかなと思いお願いしたら、やはりとても好きだそうで。声についてもイメージ通りでとても満足しています。他のキャラクターもお願いしたいと思った方に演じていただけたので、満足しています。
―映画の中でロックが流れますよね。江戸の街並にロックという意外な組み合わせがとてもハマっていました。
原 恵一監督:杉浦さんも作品を作る時にロックを聴いていたそうで、作品から強い力を感じるのもそういった事からなのかな、と考えたり。映画でも盛り上がりのシーン、重要なシーンでは大きな音でロックを鳴らしています。
―監督の杉浦さんへの尊敬が随所に感じられる演出ですね。
原 恵一監督:杉浦さんがご存命だったら聞きたかった事はたくさんあります。例えば、江戸の街並の中でこのお店は何屋なんですか? とか。杉浦さんはそういった細かな所まできちんと描写する方なので物語も丁寧で素晴らしいんですよね。完成した作品もぜひ観ていただいて、感想をお聞きしたかったなあと思います。
―『百日紅』、百日紅の花が咲く7月の前に楽しみたい、とても美しい作品だと思います。今日はどうもありがとうございました。
原恵一最新作『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』日本の四季を感じる映像美!
https://www.youtube.com/watch?v=LRLd5nVKfZA
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